加藤嘉一「日本は『本当の意味でのガラパゴス化』を進めるべきです」

週プレNEWS / 2013年6月3日 15時0分

チャールズ・ダーウィンによる「進化論」に大きな影響を与えたガラパゴス諸島。そこには日本という国家の将来を考える上で、生々しいヒントが転がっていました。

近年、日本産業界の“ガラパゴス化”が問題視されています。ガラケー(“ガラパゴスケータイ”の略)に代表されるように、日本市場で独自に進化した製品が世界基準とかけ離れてしまい、グローバル市場から取り残されてしまうのではないか、という懸念です。

日本でいうガラパゴス化とは、「国際化や自由化の対極に位置する内向き状態」というニュアンスを含んでいるわけです。

日本はどんな道を進むべきか。このテーマを常に考えるぼくは先日、実際にガラパゴス諸島に行ってきました。ガラパゴス化というのは比喩にすぎない、わざわざ行って何がわかるのか、という意見もあるでしょうが、物事の本質を知るためには自らの足を使うのがぼくのスタイル。真実は現場にしかない。

南米大陸から西に約900km、赤道直下の太平洋上に浮かぶエクアドル領ガラパゴス諸島。ゾウガメやイグアナがあちこちを闊歩し、独自の生態系を間近に感じられる土地です。

サンタ・クルス島の東端にあるチャールズ・ダーウィン研究所には世界中から研究者が集まり、地球上でもまれなこの生態系を保護し、人間社会と共存させていくためにはどうすればいいのか、日々研究・実験しています。研究所のスタッフに話を聞いてみると、単に自然任せで放っておくのではなく、孵化の手助けや養殖、そして人間側においても移民の流入制限など、戦略的に人の手を入れ、マネジメントすることが大事とのことでした。

同研究所に限らず、ガラパゴス諸島に住む人々は笑顔が絶えず、前向きで、豊かな印象を受けました。多くの方は観光業に従事しており、スペイン語圏でありながら英語も流暢に話すし、環境に対する意識も高い。どこのカフェに入ってもWi‐Fiが利用できる。公の場における英語とWi‐Fiの普及率は明らかに東京以上です。




素晴らしい環境に身を置きながら、ぼくは“ガラパゴス化”について日夜、思索に耽(ふけ)りました。

日本でガラパゴス化という言葉が指すのは「グローバル競争力に欠ける内向き市場」です。実際のガラパゴスにも確かに独自の生態系が存在してはいますが、「独自=内向き」ではないとぼくは感じた。人々はオープンマインドで、世界中からの来訪者を笑顔で受け入れながら、一方では移民に関する将来的なビジョンを語る。自然と共存し、幸せに生きる術を身につけようと努力していた。ガラパゴスを訪れる観光客は、ヒトの豊かさ、自然の美しさ、生態系の神秘に触れ、感動し、それぞれの故郷へと帰っていく。「ユニークさ」こそがガラパゴスを真に魅力的な空間にしている。

これこそ日本が進むべき道ではないでしょうか。ぼくはあえて提言したい。日本は「本当の意味でのガラパゴス化」を進めるべきです!

外の世界に身を置きながら、日本は特殊な国だといつも感じています。長い鎖国時代があり、戦争では欧米列強に勝ったこともあれば、負けたこともある。民主国家でありながら世界でも類を見ない天皇制を守り、平和憲法を持ち、世界第3位の経済大国でもある。国民の民度や社会インフラは世界一だとぼくは断言できる。日本そのものが独自の進化を遂げた国なのです。

この独自性を未来志向で生かせれば、日本は今後、社会形態という面でロールモデルになれる可能性があるのではないか。

ガラパゴスの独自の生態系は、19世紀にダーウィンの「進化論」に強い影響を与えました。現代のガラパゴスには、自然界のみならず人間社会の「進化」に関しても多くのヒントが転がっている気がしてなりません。自らの独自性を生かさずして、日本が進化する方法があるというなら逆に教えて!!

●今週のひと言




今こそ愛する祖国に言いたい。




日本よ、“ガラパゴス化”せよ!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。本連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した最新刊『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が大好評発売中!

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