安倍政権の言う「日本の改憲手続きは他国より厳しすぎる」は本当か?

週プレNEWS / 2013年6月18日 9時0分

憲法改正の発議要件を「衆参両院で3分の2以上の賛成が必要」と定めた憲法96条の改正をめぐり、異論が噴出している。6月14日には憲法学者らが東京・上智大学で改正に反対するシンポジウムを開催。主催者の予想を2倍も上回る1200人が集まった。

そもそも、安倍政権は「各国の憲法と比べ日本の憲法改正手続きが厳しすぎるから、一度も改正できなかった」と主張することで96条改正を進めようとしているが、これは本当なのか?

弁護士で「法学館憲法研究所」の所長を務める伊藤真(まこと)氏が解説する。

「日本以上に憲法改正の手続きが厳しい国は少なくありません。例えば、アメリカでは発議は『連邦議会の上下院の3分の2』と、ほぼ日本と同じですが、承認の手続きに『州議会の4分の3以上の賛成』が要求されます。これは国民投票の過半数を求める日本国憲法よりも厳格な条件です。ところが、そのアメリカは戦後に6回も憲法を修正しています」

確かに各国の憲法を調べてみると、日本だけが突出して憲法改正が難しいというわけではないようだ。

ドイツは国民投票はないものの、両院の3分の2以上の賛成だし、韓国は一院制の3分の2の賛成に加え、国民投票で総有権者の過半数の賛成が必要だ。スペインにいたっては全面改正の場合、議会両院の3分の2の議決→その議会の解散と総選挙→さらに議会両院の3分の2の議決→国民投票と、その厳格さは日本の比ではない。

「そのスペインでさえ、2011年に2回目の改正が実現しています。日本がこれまで一度も憲法改正をしてこなかったのは、国民が今の憲法を改正する必要を感じなかったからと考えるべきなのです」(前出・伊藤氏)

もし、安倍政権の主張を受け入れたとして、96条の3分の2ルールを2分の1に改正すると、その後の日本はどうなってしまうのだろう?

テレビ朝日コメンテーターの川村晃司氏はこう危惧する。

「発議のルールを2分の1に下げてしまえば、極端な話、政権交代のたびに改憲騒動が起きかねません。そのなかには、国民の権利を侵害する悪い改憲もあり得るでしょう。一度改正した憲法の条項を再修正して元に戻そうという動きも考えられます。これでは憲法改正が乱発され、政治や社会が混乱することになるのではと心配しています」

そもそも“3分の2”は「多数決、特に過半数による国の決定は間違いを起こす可能性がある」という民主主義が歴史から編み出した知恵だ。ナポレオンやヒトラーも国民の多数の支持を受けた。しかし、ナポレオン帝政やナチスドイツは専制を振るい、政治的少数者や民族・人種的マイノリティを弾圧してしまった。

「それだけに、特に人権に関わるような大切な条項は国会の過半数を獲得した政権与党だけでなく、少数の野党も賛同できるような形、すなわち総議員の3分の2以上が賛成するくらいの熟議を積み重ねた上で、国民に発議すべきなのです。96条が課す3分の2という高いハードルには、権力の濫用を防ぎ、少数派の人権を守るという立憲主義の精神が込められています」(前出・伊藤氏)

国家から国民の人権を守るために考案された“3分の2”というルール。それを意地でも改正しようしている安倍首相が「96条改正は国民のため」と口にしても、言葉どおり鵜呑みにするわけにはいかない。

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