掲示板で「痴漢して」……なりすましと実行犯、どっちが悪い?

週プレNEWS / 2013年6月27日 9時0分

今年4月30日、JR和歌山線の車内で女性(当時23歳)に痴漢をはたらいた元介護士の男(26歳)が逮捕された。

普通なら、これで一件落着というところだが、男は罪を認めるどころか、「被害女性とは合意の上で痴漢をした」と妙なことを言い出したのだ。“合意”を結んだとするのはインターネット上の痴漢プレイ愛好家交流掲示板。被害女性の「痴漢してほしい」との書き込みを男が見つけ、女性の座席位置や服装などを確認した上で、痴漢に及んだというのだ。

しかし、当の女性は「サイトを利用したことはない」と合意そのものを否定。実際に女性の携帯電話やパソコンから同掲示板へのアクセス履歴もなかった。ここで、被害女性に“なりすまし”て掲示板に書き込んだ犯人がいる可能性が出てきたのだ。

そして、5月中旬に大阪国税局の男性職員(49歳)が「自分が(被害女性のフリをして)書き込みをした」と出頭してきた。現在、強制わいせつの教唆(そそのかしの意)の疑いなどで男性職員の供述の裏づけを進めており、元介護士の男も5月21日に処分保留で釈放。両者とも和歌山地検の処分を待っている状態だ。

合意したと思い込み、女性に痴漢をした“実行犯”と、女性のフリをしてウソの書き込みをした“なりすまし犯”。いずれも罪深いことには変わりないが、法律の観点からはどちらの罪が重いのだろうか?

日本大学法学部名誉教授の板倉宏(ひろし)氏はこう見る。

「やはり“実行犯”のほうが罪深い。女性になりすました犯人がいたからといって、事実、痴漢をしたのは彼なんですから」

一方、リンク総合法律事務所の紀藤正樹(きとう・まさき)弁護士は反対の意見だ。

「すでに釈放されている実行犯はこのまま嫌疑不十分で不起訴になると思います。問題は“故意”に犯行を行なったのはどちらかということです。女性と合意していると思い込んで痴漢していたなら“過失”です。逆になりすまし犯は、『痴漢をさせたい』という自らの目的で実行犯を利用したと考えられるため“故意”と判断できます。迷惑防止条例違反か強制わいせつ罪に問われる可能性がありますね」

痴漢プレイ愛好家サイトが“震源”となった今回の事件について、ITジャーナリストの三上洋(よう)氏はこう語る。

「ネット上でのイヤがらせが、現実に影響してしまったという意味でとても恐ろしい事件です。なりすまし犯と被害者に直接的な接点がないようですし、実行犯に痴漢させることで得る利益も特にはない。結局、私たちは、誰だかわからない人間からいわれのないウソの情報を流されるリスクを常に背負っているわけです。未然に防ぐ方法もないし、厄介ですね」

これといったなりすまし対策がない以上、今後さらなる被害者が出る可能性も否定できないと三上氏は見る。

実際、痴漢プレイ掲示板を利用して、合意の上で4名に痴漢されたという女子大生のプリンちゃん(仮名)もこう証言する。

「事件の報道があってから書き込み件数が激増してます。以前は一日5、6件程度の書き込み数だったのに、事件後は、数分で自分の書き込みが2ページ目になるほど。ついこの前までは本当の愛好家だけが集まる場所だったのに崩れてきているのかも」

事件後の掲示板の書き込みを見ると、「待ち合わせしたにもかかわらずすっぽかされた」というなりすまし被害ともとれる声も。

「事件のせいで、なりすましが増えたり、警察が規制してきたりしたらイヤ。冷やかしの書き込みは本当にやめてほしい」(プリンちゃん)

いずれにしても、なりすまし事件に対策がないのであれば、当面は掲示板には手を出さないほうがいいだろう。まさに、触らぬ神に祟りなし、だ。

(取材・文/コバタカヒト)

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