加藤嘉一「日本は『外交のできる人間(カード)』をもっと増やす必要があります!」

週プレNEWS / 2013年7月22日 14時0分

安倍内閣が発足して約半年。アベノミクスばかりが取り上げられがちですが、今回は外交面を見てみます。現時点での課題はどこにあるのでしょうか?

7月21日に参議院選挙が行なわれました。今回の選挙には、昨年末に発足した自民党・安倍内閣に対する有権者の“中間採点”という意味合いも含まれています。経済の流動化を促したアベノミクスは多くの国民から高い評価を受けているようですが、外交面はどうでしょう。

民主党政権時代からの懸案である尖閣諸島をめぐる中国とのやりとり、日米首脳会談など、約半年の間にも動きがありました。ぼくの採点は「65点」。手放しでの高評価というわけでもなく、落第点でもない。普通に合格というラインです。

安全保障問題を得意分野と公言している安倍首相は就任後、積極的にトップ外交を行ないました。アメリカやG8諸国のほかにも、中東ではサウジアラビア、UAE、トルコ。東欧ではポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー。

何より際立つのがインドネシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、シンガポール、マレーシア、インド、モンゴルといったアジア諸国です。これにロシアも加えたラインアップは、“対中国包囲網”のイメージを抱かせる。特に中国と関係の深いミャンマーに対しては、5000億円もの債務放棄などの支援体制を約束しました。この動きには中国も焦ったようで、ミャンマーへ楊潔チ(ようけつち)外交担当国務委員を送り込み、「伝統的関係の維持を」とクギを刺すことを余儀なくされました。

安倍首相の“積極外交”は、中国の外交専門家たちも「よくやっている」と、一定の評価をしていました。一方、日米首脳会談についてはあまり関心がなかったようで、安倍首相の訪米という事実さえ、彼らはきちんと認識していませんでした。

中国に限らず、国際社会において日米関係の動向はあまり話題になっていません。オバマ大統領と習近平(しゅうきんぺい)国家主席の初顔合わせとなった6月の米中首脳対談が、世界中でセンセーショナルに報道されたのとは対照的です。発信力の改善は日本外交のひとつの課題だと思います。




民主党政権時代に尖閣諸島国有化をめぐるやりとりで悪化した日中関係も、目に見えた進展はありませんでした。日中新リーダー同時誕生は関係改善の契機になるかと期待も抱かせましたが、両国外交当局間で調整がまとまらないようです。ただ、安倍首相が習主席と尖閣問題を含めて積極的に意見交換したいと表明しているのは素晴らしいと思いますし、中国に対しても“健全な圧力”をかけていくべきです。

以上のような理由で、ぼくは「65点」をつけました。

米中から安倍内閣の外交を俯瞰(ふかん)してきましたが、最大の問題点は、外交をやる人間が実質的に安倍首相ひとりしかいないことです。例えば中国には習主席のほかに李克強(りこくきょう)首相がいて、どちらが外遊をしても相手国は「トップが来た」と認識する。アメリカにしても、国務長官の外遊は「トップ外交」に限りなく近い扱いをされ、そういうイメージを世界中に植えつけます。

日本にも外務大臣というポストがありますが、失礼を承知で言わせていただければ、現職の岸田文雄外相の名前を知っている人は、日本人ですら多くないのではないでしょうか。そういう方に、外交で影響力を行使しろというのは無理な話です。

これは岸田外相個人の問題というより、システム上の問題だとぼくは考えます。そこで提案です。日本は世界に向けて、高らかにこう宣言すればいい。

「総理、副総理、官房長官、外務大臣、防衛大臣。この5人が日本外交の責任者である」

このフォーメーションを国内外に能動的に知らしめることができれば、日本国の“外交カード”は増えます。多極的な交渉が必要な時代、手持ちのカードを増やさなくていいというなら、その理由を逆に教えて!!

今週のひと言




日本は『外交のできる人間(カード)』を




もっと増やす必要があります!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。著書に『逆転思考激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など多数。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)が絶賛発売中!

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