サッカー記者のブラジル訪問記「遠い、高い、悪い。でも、また行きたいのがブラジル」

週プレNEWS / 2013年8月1日 6時0分

リオのコルコバードの丘に立つ、高さ約30mのキリスト像。ブラジル最大の観光名所ともいわれる

サッカーのコンフェデレーションズ杯取材のため、初めてブラジルを訪れることになった本誌記者。来年のブラジルW杯、はたまた2016年のリオデジャネイロ五輪に行こうと思っている読者もいるだろうが、気軽に行こうとすると、思わぬ“洗礼”が待っているかも?

まずはこれを読んで、しっかり予習しておこう。

■ブラジルにはスタバがない?

遠い。約3週間のブラジル取材から帰国して、強く感じたのはその日本からの距離だ。

筆者にとって通算47ヵ国目の訪問となったサッカー王国は、日本から見ると地球のほぼ真裏にあたる。今回は中東・カタールのドーハを経由して行ったわけだが、成田-ドーハ-サンパウロ間のフライト時間だけでも計25時間ほど。トランジットを含めれば自宅からホテルまで1日半も要した。

特にキツかったのが、ドーハからサンパウロまでの14時間強のフライト。ルートマップを確認して気づいたが、アフリカ大陸を横断しているのだから無理もない。

日本とブラジルの時差(12時間)も、30代後半の“老体”にはこたえた。体は疲れているのに、不思議と毎日早朝4時頃には目が覚め、昼過ぎに強い睡魔に襲われることの繰り返し。長時間のフライトで体内時計は完全に破壊され、ようやく調子が戻った頃には、帰国する日が迫っていた。

ブラジル国内の移動も大変だった。国土は日本の約23倍と広大。今回の滞在では、サンパウロやリオデジャネイロなど計7都市を回ったものの、移動はすべて空路。取材者泣かせだったのは、サンパウロとリオを除く地方都市間に直行便が少なかったため、ダイレクトで飛べないことも多かったこと。また、ブラジルで飛行機に乗る際の注意点をひとつ挙げるなら、まず搭乗券に書いてある出発ゲートは変わると思ったほうがいい(それも直前に!)。

今回の旅では国内線だけでも10フライトは乗ったが、まず予定どおりのゲートで出たことはなく、乗り遅れそうになったのは一度や二度じゃなかった。なお、ブラジルは街中で英語がなかなか通じないといわれているが、実際は街中どころか、空港のアナウンスだってもっぱらポルトガル語だった。

高い。正直、ブラジルの物価がこれほど高いとは思っていなかった。どれほどかと言われれば、商品によってバラツキはあるものの、おおむね日本と変わらない。それなのに、法定の最低賃金が678レアル(約2万8500円)ということには驚く。

毎年、イギリスの経済誌が発表する「Big Mac index」(マクドナルドの「ビッグマック」1個の価格からみる仮想的な通貨レート)では日本の3・51ドルに対し、ブラジルは5・64ドル。実際にマクドナルドで一番安い「ハンバーガー」は4レアル(約180円)だった。

また、ブラジルに行けば、誰もが訪れるであろうリオデジャネイロで治安の比較的いい地区(コパカバーナやイパネマ)に泊まろうと思えば、普通のホテルでも一泊1万5000円は出さないと、探すのは困難。

外食にしても、定番である肉とご飯に豆の煮込みがかかったようなプレートであれば1000円前後で食べられるが、シュラスコ(串焼きの肉料理)やエビなどのシーフードを食べようと思えば、少なくとも5000円前後は出す覚悟が必要だ。

ただし、コーヒーは別。ちょっとしたカフェなら3レアル(約135円)程度でおいしいものが飲めるので、スターバックスなどは見かけなかった。やはり、コーヒーがおいしい国にスターバックスは定着しないようだ。

■大変だったけど、もう一度訪れたい

悪い。治安への不安はやはり拭えない。リオなどの大都市を中心に、近年はファベーラ(スラム街)の制圧に政府が力を入れたことで、行き場を失った犯罪グループが市街地に出没し、殺人などの凶悪事件は減りつつも、かえって強盗は増えているという話もある。「ブラジルでは、強盗は万引き感覚」とは現地で出会った日本人の言葉だが、それほどまでに日常化しているのかもしれない。

コンフェデ杯期間中は、各地でデモが発生し、日本が初戦を戦った首都ブラジリアでは、筆者も催涙弾の餌食となった。ブラジルではどこに危険が転がっているかわからない。

また、レシフェやサルバドールなどの北東部では、にぎやかな海岸通りから一本脇道に入るだけで辺りの様子が一変することがある。何しろ、今回の旅で筆者が一番肝を冷やした瞬間といえば、深夜のサルバドールでスタジアムからホテルに帰るなか、タクシーが人けのない場所で急に停車した瞬間だった。結局は運転手が道に迷っただけの話なのだが、筆者の心臓はバクバクと鳴りっぱなし。あの瞬間、仮におもちゃの拳銃で脅されたとしても、所持金をすべて差し出していただろう。

リオの繁華街を思い出すと、地元の人や外国人観光客を含め、手ぶらで軽装の人がほとんどだった。それが何よりブラジルの安全な歩き方を示してくれていたのかもしれない。

遠い。高い。悪い。そう書いてきたので、ブラジルは最低な国のように思うかもしれない。

でも、「もう一度行きたいか」と聞かれれば、「また行きたい」と答えてしまう魅力がブラジルにはある。

地理、経済、治安、とにかくすべてに落差があるのがブラジルで、その奥深さに惹かれるのだ。

治安が悪いといっても、危険な場所に出向かなければリスクは最小限に抑えられるし、親日派が多いことでも知られるとおり、ブラジル人は親切だ。タクシーの運転手も評判ほど悪くなく、小遣い稼ぎに少し遠回りするやからがたまにいる程度。フルーツは(日本では高価なマンゴーだって)そこらじゅうにあるスタンドでフレッシュジュースにしてくれるし(しかも安い!)、セルベージャ(ビール)はどこの店でもキンキンに冷えている。

リオの中心部にはラパという地区があり、そこにはライブハウスが軒を連ね、週末には大勢の人で盛り上がりを見せている。ボサノバやサンバなどを聴きながら飲むカイピリーニャ(カクテル)は最高で、何よりブラジルっぽいラテンの空気が感じられる。世界遺産・イグアスの滝でずぶ濡れになるのもいいが、ラパでひと晩を過ごすのも悪くない。これも立派なブラジル文化だし、とにかくブラジルは奥が深いのだと思った。

(取材・文/栗原正夫 撮影/岸本勉)

■週刊プレイボーイ32号「行けなくても楽しめる!! ブラジルの歩き方」より

週プレNEWS

トピックスRSS

ランキング