メキシコ“最凶”麻薬組織「ロス・セタス」のリーダー逮捕で抗争が激化する

週プレNEWS / 2013年8月1日 14時0分

7月15日、メキシコ当局は、麻薬組織「ロス・セタス」のリーダー、ミゲル・アンヘル・トレビーニョ(40歳)を逮捕した。

このロス・セタスは、いくつもの麻薬組織が激しい勢力争いを続けるメキシコで、近年、東部を中心に勢力を急拡大していた組織。アメリカ国務省もトレビーニョに最高500万ドルの懸賞金をかけており、今回メキシコ当局は海兵隊を動員し、アメリカとの国境付近で彼の逮捕に成功した。

メキシコ、アメリカ両国がそこまで恐れるロス・セタスとは、いったいどんな組織なのか。実は、もともと別の麻薬組織「ゴルフォ」の軍事部隊であり、2010年に独立。創設メンバーは、「人殺し養成所」と批判されてきた米陸軍の軍人訓練学校「スクール・オブ・ジ・アメリカズ」で特殊訓練を受けた軍事エリートで、内部に専属の軍、盗聴・諜報部を抱えている一大組織なのだ。

元米陸軍大尉で、メキシコとの国境地域で対麻薬組織の任務に参加した経験を持つ飯柴智亮(いいしば・ともあき)氏は、メキシコの麻薬組織について次のように語る。

「特殊部隊のノウハウを持つメキシコ麻薬組織の軍事レベルはかなり高い。人員選抜は効率的に行なわれているでしょうし、アフガンやイラクで使用され、米軍に大きな被害を与えたIED(即席爆発装置)の戦術も使われています。銃器にしても、アメリカの一般市場に出回っている最新のセミオート高性能銃などを在米メキシコ人を通じて密輸している。時代によって背景が違うので単純比較はできませんが、私兵的な組織としては史上最大の勢力と言っていいかもしれません」

なかでも、ロス・セタスが特に目をつけられていた理由は、その残虐性だ。過去2年間、現地で“麻薬戦争”の実態を取材してきたジャーナリストの工藤律子氏はこう語る。

「見せしめにするべき相手――敵対組織のメンバーや軍・警察関係者、内部の裏切り者やその家族までも容赦なく殺し、その遺体や生首を公の場にさらす。セタスが支配する地域の住民は、歩道橋からつるされた遺体や道に置かれた生首などを日常生活の中で目撃しています」

ロス・セタスは“犯行声明”として遺体に「Z」(Zetas)の文字を彫ることが多く、しばしばインターネット上にも見せしめとして殺害時の画像や動画を公開している。

今回、リーダーが逮捕されたことで、メキシコの麻薬抗争は沈静化するのだろうか。答えはNOだ。昨年10月にもメキシコ軍はロス・セタスの前リーダーを射殺している。だが、すぐに武装グループが遺体を奪還し、組織が勢いを失うことはなかった。むしろ、アメリカのメディアなどは「内部抗争、他組織との抗争が激化」する可能性を指摘している。

陽気なイメージの裏で、麻薬組織の抗争が決して終わらない国、それがメキシコなのだ。

(取材/世良光弘、小峯隆生)

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