日本全土が、アップルの下請け工場になっている

週プレNEWS / 2013年8月6日 12時0分

「すでに首までどっぷりと漬かり、アップルなしでは生きていけないメーカーも出てきている」と指摘する後藤直義氏

アップルが、ライバル関係にあるはずのシャープやソニーなどを従属的な取引相手へと追い込んでいくさまをリアルに描いた『アップル帝国の正体』は、現代日本の“ものづくり”がどれだけ苦境に置かれているかを知るために、必読の一冊だ。この渾身のレポートを、森川潤氏と手がけた後藤直義氏(ともに『週刊ダイヤモンド』記者)に話を聞いた。

―アップルをテーマに取り上げようと思ったきっかけは?

「家電メーカーを担当する経済記者として日本の大手メーカーの最先端工場を回っていたときに、ふと気づいたんです。どの工場もフル稼働に近いのに、なぜか関係者は浮かない顔をしている、と。そして『何を作っているのですか?』という質問には言葉を濁すばかり。その裏側を探るうちに、どうやらこれらのメーカーはアップルに納める部品を生産していることがわかったんです」

―なぜ、浮かない顔をしていたのでしょう?

「アップルは2012年度、売り上げ12・3兆円で純利益3兆円超という、途方もない利益率を誇る会社です。その利益の源泉は、下請けを利益が出るか出ないかギリギリのところに追い込む、地球規模の絞り上げシステムを構築しているところにありました。例えば、シャープの亀山工場(三重県)には、台湾、韓国などの専門知識を持つディスプレイ技術者が“現場監督”として送り込まれ、生産ラインを監視しています。つまり日本メーカーは、原価から生産コストまで丸裸にされ、取引価格を決められている。そのため工場がフル稼働しても、利益につながらないのです」

―なぜそうした事実が、これまで明るみに出てこなかったのでしょうか?

「アップルは、こうした取引の条件として、厳しいNDA(秘密保持契約)の取り交わしを条件とします。その契約を破ってアップルとの取引を口外すると、個人として15億円とも20億円ともいわれる巨額の違約金を支払わなければならないそうです。それが、関係者が口を閉ざしている最大の原因ですね」

―そんな状況で、よくここまで取材できましたね。

「もう、大変でしたよ。日本全国に散らばる最先端工場を調べ上げて取材を開始したんですが、電話で話を聞こうにも、『アップル』という言葉を出した途端にガチャン! ですよ。なので、遠回しに、『え~、そちらでは最先端スマホの部品とか手がけてらっしゃいますか?』などと聞くわけです(笑)」




―でも、そうした取材で、日本のメーカーの“植民地化”が明らかになっていったわけですね。

「アップルの部品を手がけている工場を地図に書き込んでいくうちに、愕然としましたね。日本全土がアップルの巨大な下請け工場になっていることが明らかになったのです。しかも、アップルが取引をやめると言ったら、工場が完全に止まってしまうほどの依存度です」

―アップルの生産システムに組み込まれてしまった日本企業は、今後どうなるのでしょう?

「たぶん彼らも最初は他社に納める製品と同じようにアップルの部品を手がけるつもりだったのでしょう。でもすでに首までどっぷりと漬かり、アップルなしでは生きていけないところも出てきています。彼らはアップルの製品が売れ続けることを祈るしかないのでしょう。ただジョブス亡き今、アップルがこれからも成長を続けていけるかどうか。それはボクにもわかりません」

(構成/植村祐介 撮影/有高唯之)

●後藤直義(ごとう・なおよし)




『週刊ダイヤモンド』記者。1981年生まれ、東京都出身。青山学院大学文学部卒業後、毎日新聞社入社。2010年より週刊ダイヤモンド編集部に。家電メーカーなど電機業界を担当。著書に電子書籍『ヤメソニーに訊け!!』(ダイヤモンド社)

『アップル帝国の正体』




文藝春秋 1365円




iPod、iPhoneなど、大ヒット商品を次々と世に送り出し、世界を席巻したアップル。本書では、その躍進の陰で支配されていく日本企業の実態や、知られざるアップル型経営の裏側に迫る。徹底的な秘密主義によってベールに包まれる巨大企業の正体が明らかに









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