加藤嘉一「『未来の選択肢』を示せなかった野党は大いに反省すべきです!」

週プレNEWS / 2013年8月19日 15時0分

史上3番目の低投票率に終わった7月の参院選。その理由を考えてみると、やはり問題は野党側の低調なパフォーマンスにあったと言わざるを得ません。

自民党が7月の参院選で予想どおり圧勝し、衆参のねじれ現象が解消されました。安倍政権が今後どのような舵取りをしていくのか、国内外で注目されています。

政権発足から半年余り、安倍首相は金融緩和政策に「アベノミクス」という耳ざわりのよい呼称をつけ、政権運営や参院選のアピール材料にしてきました。しかし、アベノミクスがまだまだ道半ばで、これからが真の勝負だということは安倍首相本人が最も知るところでしょう。

「円安・株高→経済復活」を強調するアベノミクスですが、円安自体が日本を復活させることはありません。輸出の比重が高い業種は収益が上がったかもしれませんが、多くの企業で給料が増えたという話は耳にしない。原材料やエネルギーを輸入に頼る分野はむしろ苦境に立たされている。2%のインフレターゲットを掲げていますが、物価が上がったという実感もそれほどない。

株高にしても、日本経済に対する国際的な信用ではなく、「これから上向きそうだ」という“期待感”が醸し出されているだけ。依然として株価が乱高下する不安定さを露呈しています。

自民党は、「円安・株高」を強調して参院選に勝った。ひとりの有権者として結果は受け止めますが、国民は「本来すべき議論をせぬまま現在に至っている」という共通認識を持っておく必要があるでしょう。

今後の日本経済に必要な鍵は3つに絞れるとぼくは考えます。

ひとつ目は、企業の国際競争力を高めること。企業が経営力を伸ばし、長期にわたって発展していけるような投資市場・商環境を国は整備しなければならない。

ふたつ目は、企業の競争力強化に不可欠な人材の育成です。特に強調しておきたいのが、日本のGDPに貢献するのは日本人ばかりではないということ。広く世界から有能な人材を戦略的に集めて育成することが、日本復活には不可欠になる。

3つ目が、しばしば議論の的になる財政再建です。安倍政権はこの秋に消費税増税を実行するかどうか判断するとのことですが、もし消費税を10%に上げたとして、日本の財政再建は可能でしょうか? 素人のぼくから見ても不可能です。野党はそれをわかっていながら、国会や選挙運動でその点を指摘することはほとんどありませんでした。

財源を確保するためには、本来なら増税より前に支出をカットすべきです。公務員改革、社会保障改革……テコ入れすべきところは山ほどある。政権与党はともかく、野党がなぜそれをもっと指摘しないのか。不透明な未来に対して選択肢が示されなかった―その結果が、52・61%という参院選の低投票率。この数字に責任を感じるべきは、自民党に圧力を与えられなかった野党のほうでしょう。

政党政治が機能するためには、「健全な与党」と「強大な野党」が共存し、かつバランスがとれている必要があります。

健全な与党の条件は「政策の一貫性」です。安倍首相いわく、自民党は一度決めたら一丸となって進んでいく伝統があるとのこと。次回の国政選挙は、何もトラブルが起こらなければ3年後の参院選(あるいは衆参ダブル選)になるでしょうから、小泉政権以来、久しぶりに長期政権が見られるかもしれない。米中から眺める限り、「政治の安定」は日本のクレジット強化につながると感じています。一有権者として、安倍首相がどう財政再建に取り組み、企業の国際競争力向上、人材育成のための制度設計をしていくのか注目します。

強大な野党に関しては説明の必要はないでしょう。強いライバルがいないまま、緊張感も競争もなく独走する与党の政治を見て何が面白いのか……逆に教えて!!

今週のひと言




『未来の選択肢』を示せなかった野党は




大いに反省すべきです!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考える「加藤嘉一中国研究会」がついに発足!

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