加藤嘉一「日本はケネディ新駐日大使を最大限に“逆利用”すべきです!」

週プレNEWS / 2013年10月21日 14時0分

「知名度抜群の女性」と「外交の素人」というふたつの顔を持った新駐日大使のケネディ氏。日本は彼女の着任をどう考えるべきでしょうか?

本稿執筆時点ではまだ議会本会議の承認を得ていませんが、キャロライン・ケネディ氏が女性初の米駐日大使として近く着任することがほぼ確実な情勢です。彼女は名門ケネディ家の一員で、故ジョン・F・ケネディ大統領の長女。米国民からの人気は抜群です。

ただ議会や専門筋では、本業が弁護士で、政治や外交に深く携わった経験のない彼女の手腕を疑問視する声も少なくありません。それでもオバマ大統領が彼女を選んだのは、2008年の大統領選の頃から支援を受け、集票を含め多大な貢献をもたらしたことへの“見返り人事”だという見方もあります。

日本側からも、“外交素人”を送り込まれることについて「なめられている」という声が上がっています。現職の米駐中国大使のゲイリー・フェイ・ロック氏は、ワシントン州知事や商務長官を歴任した政界の大物で、ケネディ氏との経験値の差は明らか。アメリカの対中重視を露骨に示す人事といえます。

しかし、日本はここで感情的になるのではなく、ケネディ氏という人物を研究し、戦略的な付き合い方を考えなくてはなりません。

この数ヵ月間、ケネディ氏は日本で滞りなく仕事を始められるよう、東アジア情勢に詳しい知識人からのヒアリングを重ねてきました。ぼくは「キャロラインは駐日大使として何をすべきか?」という議論に参加した際、3つの提案をしました。

まず、ケネディ氏のひとつの武器は「知名度抜群の女性」というソフトパワーです。これを生かし、日米関係のみならず、東アジアの繁栄と安定のために中国を意識した外交をするべきだ。そのひとつの象徴として、ミッシェル・オバマ氏、安倍昭恵(あきえ)氏、そして習近平(しゅうきんぺい)氏の夫人で国民的歌手だった彭麗媛(ほうれいえん)氏が一堂に会する「日米中ファーストレディ会談」の調整役をやってほしい。




現在の日中関係は1年前よりは落ち着きを見せつつも、依然として硬直状態が続き、突破口を見いだせない状況です。そこで女性というソフトパワーを生かし、「三者面談」をきっかけに国際世論に働きかける。議題はシビアなものでなくても構いません。自然災害対策や人権問題など、いくつかの切り口から日米中という枠組みで議論していけばいい。話の内容よりも「実現した」という形式的事実自体がインパクトを持つでしょう。

次に、ケネディ氏には日米青少年交流に尽力していただきたい。学術、文化、スポーツなど多分野で日米の若者を現場に行き来させる“生きた”交流を促進してほしいものです。

そして最後に、ケネディ氏の最大のアドバンテージは「オバマ大統領との関係」。彼女とオバマ氏の間には太いパイプがあり、直接電話で話す間柄なのです。彼女に日本側の意向を伝えることができれば、それがタイムロスなくオバマ大統領に伝わる可能性が高い。日本は彼女に対してどんどん“ボール”を投げるべきでしょう。

月に一度、ケネディ氏を囲む夕食会を開くのもいいでしょう。参加者は職業外交官ばかりでなく、日米中の枠組みで物事を考えられ、かつフレキシブルな考えを持った財界人、知識人が好ましい。ここでは政治のみならず、経済的、文化的、社会的な見地からも日本の姿勢や戦略を発信していく。その場でケネディ氏が高度な政治的判断を下せるとは思いませんが、「オバマ大統領の耳に入る」ことが重要なのです。

ケネディ氏側の言動にも注目です。オバマ大統領の肝いりで着任する彼女の動きを敏感に察知し、レスポンスしていく必要があるでしょう。

大事なことは、ケネディ氏を日本の国益に寄与するような形で“逆利用”すること。「なめられた」と憤るだけで何かが前進するというなら、その理由を逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学アジアセンターフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考えるプロジェクト「加藤嘉一中国研究会」も始動!

週プレNEWS

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング