過疎化する田舎の町が“葉っぱビジネス”で再生

週プレNEWS / 2013年10月31日 6時0分

横石知二社長。27歳のときにつまもの商品「彩」を開発。40歳で「株式会社いろどり」の取締役に

田舎、高齢化、元気がない……。四国・徳島の静かな山奥にあるこの町も以前はそんな感じだった。それが“理想の高齢化社会”として若者も引きつける町に! 元気の源は……なんと“葉っぱ”だった!

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料亭で出される料理などに添えられている、もみじや南天などの葉っぱ。これらは「つまもの」と呼ばれている。そんな葉っぱでビジネスを行なっているのが「株式会社いろどり」だ。なんと年間2億6000万円(!)もの売り上げを生み出しているというからビックリ。しかも働いているのは70代、80代のおばあちゃんたちばかり!

その謎を突き止めるべく徳島県にある「いろどり」の社長、横石知二(ともじ)さん(55歳)を直撃!

「私はもともと農作物を作るだけでなく経営などを指導する“営農指導員”として20歳のときに上勝(かみかつ)町の農協に就職したんです。その頃は林業や建設業、みかんやすだちなど柑橘類の生産が中心でした。それがここに来て数年たった頃、寒波でみかんが全滅しまして。それから野菜作りを始めたんですが、でも一年中できて、しかも女性もお年寄りもできるものはないかと考えるようになったんです」

そこで葉っぱビジネスを思いついたきっかけは?

「大阪で入ったおすし屋さんで、僕の横に女のコたちが座ってたんです。料理が運ばれてきたら、皿に添えられてたもみじを見て『きれいね~!』ってはしゃいでて。『なんでこんなもんが? こんなん上勝の山にいっぱいある……これはビジネスになるかもしれん』と。葉っぱなら軽いしね」

まさに横石さんが求めていた仕事が見つかったんですね。

「それで店の人に仕入れ先を聞いたら、料理人が自分で山へ行って採ってるというんで『これはいけるぞ!』と。でもそれを戻って話したら『葉っぱが金に変わるなんてタヌキかキツネのおとぎ話や』『そこらに落ちてるもんを拾うなんて貧しいもんのすること。プライドが許さん』と誰も賛成してくれない(苦笑)。そのときに『この人たちに欠けてるのは誇りと自信だ』と。逆に、それさえ取り戻せれば落ちてる葉っぱでも宝物に見えるはずやと」

そこでまず一緒にやっていく人を見つけるのが大変だった?

「それでも4人のおばあちゃんが一緒にやってくれることになったんですが、最初は採ってもらった葉っぱを市場に出しても全然売れんで(苦笑)。1パック5円とか10円の値段しかつかず赤字でした。後から知るんやけど、つまものっていうのはもっと洗練されてないとだめだった。そんなこと知らないから自然のままがいいと思って形も大きさもバラバラのまま詰めて販売してたんです。

料理人さんには『現場も知らん人間がこんな商売するな』って怒鳴られて。でも料亭なんか行ったことなかったからね。知りたいけどお金がない。裏から入って教えてもらおうとしたけど、また殴られたり(苦笑)。困り果ててたら僕の絶対諦めない性格を知ってる妻が『あんた、家にお金入れんでもいいから通いなさい』と。いや、泣きましたね」




なんて立派な女房ですか!

「それからお客さんとして料亭やホテルに365日休みなしに何千軒と取り憑かれたように回りました。翌年から栽培もするようになって、求められるものがわかるようになったらどんどん売れてきて。1パック100円、200円と値段も上がったんです。最初4人で売り上げ100万円ほどだったのが、2年後には44人で売り上げも1000万円上がってました。成功するようになれば、みんなついてきてね」

ほぼ10倍の売り上げ?

「でもそれから何年かして、経済的な理由で農協を辞めようと思い辞表を出したんです。そうしたら、おばあちゃんたちが嘆願書を集めてくれて。『見捨てないでください』って書かれた手紙まで渡されてね。うれしかったですよ。その後いろいろあって、葉っぱビジネス『いろどり』を本格的に始めることになったわけです」

そんな横石さんが会社をやっていくのに大事にしていることは?

「舞台をつくってあげることですね。そこで『あんたじゃないとできん』と言って『ほかの誰でもない、私だからやらせてもらってる』って自信を持ってもらうこと。誰でも代わりがいて進んでいくような大会社に利益では勝てないかもしれない。だから『ほかでもない私だけができること』と思って働いてもらうことが大切やと思うんです。そもそも高齢者は知識があり経験があり、人間力があって負けず嫌い、コツコツ粘り強いんですから!」

女性やおばあちゃんたちが生き生きと生活できるようになったのは、そういう輝ける舞台をつくってくれた存在あってこそだ。

「それと『あの人には負けたくない』って競争してもらうことによってさらにものすごい力を発揮できる。ほんと田舎の人間はプライドとか見栄が大事なんで(苦笑)。それをけしかけて、いわば僕が“プレイボーイ”になって口説き落とすのも大事な仕事。パソコンを導入するときは『そんなんできん』と言うのを納得するまで教えたり。マウスより使いやすいだろうと導入した『トラックボール』っていう球体をくるくる回すやつなんか、おばあちゃんの手の上に僕の手を重ねて『こうやって使うんよ』って教えたら、みんな喜んで喜んで。『また教えて~』って。ね、プレイボーイでしょ(笑)」

今では年間1000万円を売り上げるおばあちゃんもいるというが、彼女たちの『自分にしかできない』という自信とやる気がこのビジネスの原動力なのだ。

■負けてたまるか!(笑)ってパソコンと睨めっこしよるよ

というわけで、そんなおばあちゃんにも直撃だ。西蔭幸代さん(76歳)は葉っぱビジネスに携わって18年、ていうか若々しすぎ!

どんなきっかけで「いろどり」を始めることになったんですか?

「最初は、先に始めてた近所の人が誘ってくれたんやけど。半信半疑やったんです。で、初めて観賞用にうちの庭で咲いてたあじさいをひとつトレーに詰めて出してみたらそれが1000円で売れて」

ひとつ1000円? 高い!

「間違ってるんじゃないかと思ったけど、10パック出したら1万円になったんよ。主人もびっくりしとったけど、私が『いろどり』をできるように苗を買ってきてくれて植えて育ててくれて。主人が製造課長で私が販売課長。今は病気で入院しとるからオールひとりでやって社長なの(笑)。うふふふ」

あ、なんか色っぽい……(照)。ま、葉っぱで夫婦の絆も深まったと。でも最初はFAXに始まってパソコンの導入など戸惑いはありませんでしたか? 今ではタブレットも使われてるとか。

「できんって思ったけど、人がやってやれんことはないなと思って。毎朝5時半に起きて、畑に行ったりいろんなことして、9時になったらパソコン睨みつけて注文の確認をします。携帯とタブレットも使って3つでしてますよ。FacebooKもやってる」

……スゴい、敏腕ビジネスマンみたい! 注文を取るのも早い者勝ちなんですよね?

「そう。だからあっという間に10秒もしたら終わる。ジャンボっていって、大皿用の大きい南天とかもみじはひとり1点までって決まってるけど、それ以外はフリーでどんどん早いもの勝ちで注文を取れるんでノロノロできんのよ」

じゃあ「今日は絶対○パック取るぞー!」みたいな気持ちに?

「ほらなるわよ(笑)。負けてたまるかー!って」

そんな西蔭さんの元気の源はインターンシップでやって来る若者たちのパワーだそう。この日も一緒にインターン生の佐藤光彦さん(22歳)が、ちょうどすだちの収穫を行なった後だった。

「この土地に縁はなかったんですけど、たまたま読んだ本に上勝町のことが書かれてて。それで興味を持って調べたら『いろどり』が出てきたんです。『インターン生募集中』って書かれてて、メールするとすぐに『この日に来てください』って。受け入れ態勢がしっかりしてるなって思いました」

そんな若者は最近多いそうで、後継者づくりに力を入れているとのこと。お年寄りだけでなく新たに若者も活躍できる場が広がりそうで、まさに「いろどりが日本を変えますよ!」(横石さん)

(取材・文・撮影/樫田秀樹 short cut[岡本温子、山本絵理])

●いろどり




株式会社いろどりは、徳島県勝浦郡上勝町にある。料理に添えるつまものなどの販売を中心に観光案内や経営コンサルタントまで行なう。特におばあちゃんたちによって支えられる「葉っぱビジネス」は多くの人の共感を呼び、なんと昨年には映画化も!

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