Tehuの「残念ながら、アイドルヲタです。」第8回:なぜAKB48の運営はファンを「困惑」させるのか?

週プレNEWS / 2013年11月22日 12時0分

Tehuの中で、「アイドルとファンの関係」を考えるきっかけになった、昨年8月のAKBグループ再組閣

僕のアイドル現場デビューとなったAKB48初の東京ドーム公演(2012年8月24日)の最後に待っていたのは、新しい組閣人事の発表。メンバーの移動やチーム「4」の消滅が通告されたのです。

それまで楽しくライブを見ていたファンのほとんどは、この予想外すぎるサプライズによって一転、大きなショックを抱えたまま会場を後にすることになりました。もちろん、僕もその一人だったことは言うまでもありません……。

このとき、僕のなかにはある大きな疑念が湧いていました。それは「アイドルって、ファンに夢と希望を与えるための存在ではなかったのか?」というものです。この日の新組閣によって「夢と希望」を与えられたファンは、会場内のどこを探してもいませんでした。普通に考えれば、アイドルグループとしてはマイナス影響のはずです。

アイドルは僕たちに「芸能界」という華やかな世界を身近に感じさせてくれます。厳しい世界で若くして夢に邁進する姿に、ファンは明日を生きる元気をもらう。これが基本の構図といって間違いないでしょう。

ですが、それならば余計に、なぜファンを「困惑」させるようなことをするのか?

もしかしたら、アイドルとファンの関係って、僕らが思い描いているものとは逆なのかもしれません。アイドルがファンに夢を与えるのではなく、ファンが気に入った女の子を応援し、それが目に見える人気となって、女の子のさらなる輝きにつながる。つまり、「夢と希望」を与えているのは、僕たちファンのひとりひとりと考えたほうが、しっくり来るような気がします。

だからこそ、応援することに“やりがい”を感じるヲタさんがいる。もっと言えば、ヲタさんは応援したくなるアイドルをいち早く探して、彼女たちの夢をCDの購入や握手会などでバックアップし、そこに生きがいを感じる――。そう考えてみると、この関係はまるで企業と株主、いや、「ベンチャー企業と投資家」という比喩が近いと思います。

ベンチャー企業と投資家の例を検討してみましょう。

ベンチャー企業はその将来性を魅力的にプレゼンすることで、投資家の支持を得ます。投資家のほうは、企業の期待度を考え、投資額を決めます。将来が魅力的に見えれば見えるほど、その金額は膨れ上がっていきます。そうやって世に出た後も期待度が下がらなければ、増資というさらなる支援を受けることだって珍しくありません。

どんどんベンチャー企業が成長し、お金が集まってくるようになれば、次のステップに進みます。企業は当初の計画を超えて、さらなる成長のために新しいことにチャレンジしようとするのです。それは賛否両論ある新機能の追加であったり、別事業への進出だったりしますね。

ですが、投資家は自分のこれまでの投資額が無駄になって欲しくないので(リターンがないとまずいので)、企業に冒険ではなく、安定的な成長を求めるケースが多いです(なかには冒険を積極的に促す投資家もいますが、やはり少数派でしょう)。

ここでベンチャー企業側は岐路に立たされます。投資家の意向に沿って安定的な計画を立てるのか。それとも、失敗する可能性もあるが、より大化けするために、チャレンジに踏み出すのか。

僕にはこの流れが、アイドル業界にも適応できると思うのです。上の文章の単語を置き換えてみると……。

アイドルはその将来性を魅力的にプレゼンすることで、ファンの支持を得ますファンのほうは、アイドルの期待度を考え、応援への入れ込み方を決めます。将来が魅力的に見えれば見えるほど、その応援には熱が入っていきます。そうやって世に出た後も期待度が下がらなければ、親衛隊の結成というさらなる支援を受けることだって珍しくありません。

どんどんアイドルが成長し、応援が集まってくるようになれば、次のステップに進みます。アイドルは当初のイメージを超えて、さらなる成長のために新しいことにチャレンジしようとするのです。それは賛否両論あるメンバーの入れ替えだったり、バラエティへの進出だったりしますね。

ですが、ファンは自分のこれまでの応援が無駄になって欲しくないので(人気がなくなって引退されては困るので)、アイドルに冒険ではなく、自分が好きになったときの姿を求めるケースが多いです(なかには冒険を積極的に促すファンもいますが、やはり少数派でしょう)。

ここでアイドルは岐路に立たされます。ファンの意向に沿ってデビュー時の印象のままでいくのか。それとも、失敗する可能性もあるが、より大化けするために、新たなチャレンジに踏み出すのか。>





比喩としてはなかなかいい感じです! だとすれば、ここでアイドルの運営側が考えなければならないのは、投資をしてくれた人(=ファン)に対するリターンをいかにして最大化するか、という問題です。

アイドル本人がファンからの応援に応えるのは当然とはいえ、どうすれば“最大化”になるのか? ベンチャー企業であれば株主配当金を支払えばいいのですが、アイドルがファンにお金を払うわけにはいきません(笑)。できることは、ファンと共有できる“感動体験”の提供でしょう。

例えば、「挫折からの成功」とか「リベンジ」といった物語は、トントン拍子で出世した人よりも感動的で、印象が良い気がしませんか? それこそ、テレビ番組の『金スマ』のように、成功者の過去のマイナス部分にフォーカスすることで、「この人も頑張ってきたんだなあ」と一般的な好感度が上がるし、ファンも「本当に大変だったよね(泣)」と感動が“最大化”されるのです。

もしかしてAKB運営はここまで見通したうえで、ファンには理不尽にも思える組閣人事を行っているのかも!?

しかし、こうして果敢にチャレンジしていく姿勢には、常にリスクがつきまといます。まさにベンチャー企業と同じですね。一歩間違えれば、真っ逆さまに転落するかもしれないのに、あえて試みる。AKBグループの成長ぶりと照らし合わせると、とっても面白いです。

さて次週は、実際に存在する有名なスタートアップ起業の例と照らし合わせながら、もっと奥深く人気アイドル運営の戦略の真意を見ていきたいと思います。

<今週のアイドルエトセトラ>



今週のアイドル業界は大人しかった印象があります。なので、少し前のネタを。AKB48のドラフト会議が行なわれましたね。そのドラフトで決定した新メンバーのなかに、「美少女好き」を過去にTwitterで公言していた人がいると聞きました(編集部注:チームAの田北香世子さん)。以前更新していたブログやTwitterでもAKBガチオタっぷりを披露しており、ファン目線で風紀の乱れや男性問題に対する厳しい批判を展開していたとか。今後、そんな「新たな清純派」がどう化けて行くのか気になります!

(撮影/佐賀章広)

■Tehu(てふ)



1995年神戸市生まれ。灘高校3年生。デジタルクリエーターとして多くのプロジェクトに参加するほか、講演や執筆など多岐にわたって活動している。著書に『スーパーIT高校生“Tehu”と考える 創造力のつくり方』(Google日本法人元名誉会長の村上憲郎氏との共著)がある。



オフィシャルウェブサイト:http://tehu.me/



Twitterアカウント:@tehutehuapple

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