“放送中止騒動”の日テレ『明日、ママがいない』に開高賞作家も異議あり!

週プレNEWS / 2014年1月27日 10時0分

1月15日から日本テレビ系で始まったドラマ『明日、ママがいない』での描写をめぐり、大きな波紋が広がっている。

問題となっているのは、例えば次のようなシーンだ。

・親が育てられない乳児を受け入れる、いわゆる「赤ちゃんポスト」に預けられた過去を持つ子供が、グループホーム(児童養護施設の一形態)の仲間から「ポスト」というあだ名で呼ばれている。

・ホームの施設長が日常的に子供たちを威圧したり、体罰を加えたりする。食事の際には「泣け。おまえたちはペットショップの犬と同じだ。ペットの幸せは飼い主(里親)で決まる。庇護(ひご)欲をそそるように泣け。泣いたやつから食っていい」と、泣きマネを強要する。

こうした内容に対し、全国で唯一、赤ちゃんポストを設置している熊本市の慈恵病院は「養護施設の子供や職員への誤解、偏見を与える」と、日本テレビに放送中止を申し入れた。また、全国児童養護施設協議会も、実情を踏まえた内容への変更を求める抗議文を同局に送付している。

だが、日本テレビ側は「(ドラマでは)子供たちを愛する思いも真摯に描いていく。ぜひ最後までご覧いただきたい」といった趣旨の説明を病院側に行ない、一般に向けても同様のコメントを出したのみ。つまり、現時点ではドラマの放送中止、あるいは変更を受け入れる意向はないようなのだ。

児童養護施設の現実とあまりにもかけ離れ、一刻も早い放送中止や内容変更が妥当なドラマなのか? あるいはすべての回を放送した上で、視聴者に最終的な評価や判断を委ねるべきなのか? 施設の現状に詳しい第三者に、初回放送の内容を踏まえての意見を聞いてみた。

被虐待児童の内面と、そうした子供を受け入れ、育てる施設を克明に描いた『誕生日を知らない女の子 虐待―その後の子どもたち』(小社刊)で、昨年度の開高健(かいこう・たけし)ノンフィクション賞を受賞したライターの黒川祥子(しょうこ)氏が語る。

「ドラマの作り手が児童養護施設の現場をきちんと取材していないことは、明らかだと思います。施設長が体罰や暴力で子供たちを支配していることなども論外なのですが、そもそもグループホームとはドラマの設定のような、里親が見つかるまでの『一時預かり所』ではありません。家庭に近い環境で生活することで傷ついた子供の心を癒やし、愛情をもって育てていく場所なのです」

さらに、東京都内で児童養護施設を運営している社会福祉法人勤務のA氏はこう指摘する。

「部屋割りにしても、実際には個室かふたり部屋なのに、ドラマでは4人が同じ部屋で寝起きしている。また、グループホームではきめ細かく子供たちをケアするため、通常は2名の常勤職員に加えて、さらに2名の非常勤職員がいるのですが、その姿が見えない。シナリオを都合よく展開させるためなのでしょうが、あり得ないことが多すぎますね」

ただ、一方で今後のストーリー展開に期待を抱かせる部分もないわけではない。

「知り合いの児童養護施設出身者に初回の感想を尋ねてみると、『子供たちの描かれ方がリアルだ』と評価する子もいたんです。もし、作り手の側に、施設で生きる子供の苦しみ、葛藤といった内面に切り込んでいこうという意図があり、その部分が今後きちんと描かれるのであれば、引き続き放送する意義はあるのではないでしょうか」(前出・黒川氏)

ただし、それには条件がある。

「登場人物があまりに非現実的な状況に置かれている点は、やはり改めないと。登場人物の心の動きや言葉に説得力を持たせるためにも、基本事実を押さえた設定にしてもらいたいんです」(黒川氏)

ドラマの制作者たちは、この声をどう受け止めるのか。

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