アメリカが今、プルトニウム返還を日本に執拗に迫るワケ

週プレNEWS / 2014年2月10日 10時0分

「日本にはそんな危険なシロモノが!」「もうすでに核兵器を保有しているかもしれない!」

そんな調子で、中国や韓国のネットユーザーと一部メディアが騒いでいる。

理由は1月26日、米オバマ政権が日本政府に対し、冷戦時代にアメリカなどが“研究用”として日本に提供した、約300kgの核物質、プルトニウムの返還を求めていることが明らかになったからだ。

そのプルトニウムは、茨城県東海村の高速炉臨界実験装置で使う核燃料用の約300kg。高濃度で軍事転用にも適していて、単純計算で核兵器40~50発分程度に相当するといわれる。

このニュースに最も敏感に反応したのは中国。現地メディアのなかには「日本がプルトニウムを持つことは経済上の理由が見当たらず、意図が疑わしい」と大きく報じたものもあった。

近著に『日中「再」逆転』(講談社)があり、日中関係に詳しいジャーナリストの近藤大介氏が、中国側の反応について語る。

「要は、中国がアジアにおける軍事的優位性を保っていくために、日本が軍事転用可能なプルトニウムを持っていることは非常に都合が悪いのです。だから、(先日の)東京都知事選についても、中国政府は『どの候補が当選すると、日本の核兵器開発が進む可能性があるのか』といった注目の仕方をしていました。当然、田母神俊雄氏が最も警戒されていましたね」

とはいえ、「核兵器? 警戒しすぎ!」というのが大半の日本人の感覚だろう。

軍事ジャーナリストの世良光弘氏も苦笑する。

「アメリカが返還を求める高濃度プルトニウムなど、確かに、現在の日本には核兵器を製造できる“材料”はそろっています。しかし、核実験施設の建設も必要になりますし、極めて現実味の薄い話」




だとすれば、なぜアメリカはこのタイミングで、プルトニウムを返せと言ってきたのか?

元読売新聞ワシントン特派員で、アメリカ在住のジャーナリスト、高濱賛(たかはま・たとう)氏に聞いた。

「核廃絶を訴え、2009年にノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領は、テロ防止の観点から兵器転用可能な核物質量の最小化を提唱してきました。そして、日本に限らず、冷戦時代に同盟国に提供してきた高濃縮ウランなどの回収を推進してきた経緯があります」

なるほど。つまり、アメリカは核物質をテロリストに狙われる可能性を排除したいってこと? それなら、まあ納得できるかも。実際、「各国のプルトニウム保有量」を見ても、主要7ヵ国のうち、ドイツとともに核兵器を持たない日本には、核兵器5000発分にも相当する約44tものプルトニウムがあるわけだし。




だが、高濱氏はこう続ける。

「ただ、今回の場合、テロ防止というのは建前で、日本から核武装という外交カードの可能性を奪っておきたいというのがアメリカの本音だと見ています」

核武装? 中国はともかく、同盟国のアメリカでもそんな話になっているってこと?

「それだけ、日本の“右傾化”に対する視線が厳しくなっているということです。慰安婦問題、歴史認識の変更・修正、靖国参拝、憲法改正など、安倍政権の対応はこれまでの政権とは一線を画すもので、中韓のみならず、アメリカ側にとっても“扱いづらい”という認識です」(高濱氏)

約300kgのプルトニウム返還要求について、当初、日本側は「高速炉の研究に必要」と突っぱねていたものの、度重なるアメリカの要求に折れ、昨年から日米間の協議が本格化しているという。

強気の安倍首相も、今回は大局的な判断をせざるを得ない?

(取材協力/中村ゆうき)

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