日本のメディアが知らない、プーチン、ウクライナ軍事介入の真実とは?

週プレNEWS / 2014年3月11日 16時0分

ウクライナの首都キエフで、親欧米派市民による「革命」が起こった。しかし直後、同国南部のクリミア自治共和国に、プーチン率いるロシア軍が介入。

余談を許さないウクライナ情勢は、今後どうなるのか? 欧米vsロシアの新たな冷戦が始まるのか? あるいは内戦が勃発するのか?

『プーチン最後の聖戦』『日本自立のためのプーチン最強講義』(集英社インターナショル刊)の著者で、欧米の情報ばかりに頼る日本メディアとは一線を画し、「東側」の視点からも世界を見続けるモスクワ在住の国際関係アナリスト、北野幸伯(きたの・よしのり)氏に、今後のウクライナ状勢について緊急インタビューした。

■クリミアの革命は、平和な民主革命ではなかった?

――ソチ・オリンピックが成功裏に終わったばかりというのに、なんでまた、プーチンは、新たな東西対立の火種になる「ウクライナ軍事介入」を決断したのでしょう?

「国際的評判を犠牲にしても、軍事介入しなければならない“絶対的”な理由があったからです」

――その理由とは?

「二つあります。

ひとつは、軍事介入を行なったクリミア自治共和国(以下、クリミア)は、人口約200万人のうち60%がロシア人だからです。そして、彼らは、『首都キエフから民族主義者がやってきて、ロシア系住民を虐待、虐殺するのでは?』と恐れているからです。

実際、今回の革命を主導したのは、親欧米の“民主主義者”だけではありません。“右派セクター”という武装民族主義集団があり、地方自治体の建物などを武力占拠しました。そして、ロシア系住民を虐待した例も報告されています。興味があれば、YouTubeに飛んで『right sector Ukraine』で検索してみてください。“平和な民主革命”というイメージが一変すると思います。

ともあれ、クリミアのロシア人は、“民族主義者の襲来”を恐れている。『同胞の安全と生命を守れ!』というのが、ロシア軍事介入の理由です。実際、ロシアの国民のほとんどが、この大義名分と介入を支持しています。

もうひとつ、クリミアには、ウクライナから許可を得て、ロシア黒海艦隊が駐留していることです。

ロシアとウクライナの協定では、2042年まで駐留できることになっている。しかし、親欧米の新政権は、ロシアが黙っていれば、黒海艦隊を追い出すでしょう。そして、その後には必ず米海軍がやってきます。これはロシアの安全保障上、最高レベルの脅威なので、放置できなかったのです」

――しかし、主権国家の市民革命に対する今回のプーチンの軍事介入は、冷戦時代のソ連を彷彿させる、あまりに強硬なやり方では?

「プーチンは、市民革命とはとらえていません。3月4日に開かれた記者会見で、彼は何と言ったか。

『西側のパートナーが、ウクライナでこれ(革命)をやるのは、はじめてではない』(プーチン)

ご存知のようにウクライナでは、04年にも革命(いわゆる、オレンジ革命)が起きました。プーチンは、『これも欧米の仕業だ!』と非難したのです。

『アメリカのどこかの研究室の職員たちが、ネズミに実験しているような印象を受ける』。つまり、『革命を起こしたのはアメリカで、ウクライナはその実験ネズミだ』と言ったのです。

『彼らは、自分たちのしでかしていることを理解していない。なんのために“革命”をしなければならなかったのか、誰か説明ができるか?』と言い、『100%アメリカがやった』と断言しています」

■日本がロシアとの関係を壊せない3つの理由

――では、プーチンが、クリミアにあえて軍隊を送った真の目的とは?

「クリミアをロシアに編入することです。3月16日にクリミアで住民投票が実施される予定ですが、ロシア系住民が多数なのでロシアに編入される可能性は高い。

そして、クリミアがロシアの一部になれば、当然、黒海艦隊も安泰になります。

黒海艦隊が駐留しているのは、実はクリミアではなく、隣のセヴァストポリ市です。しかし、同市はクリミア自治共和国に編入されることが決まっているので、ここもロシアの一部になる可能性が高いのです」

――欧米は、今回のロシアの軍事介入にどう対抗するでしょうか?

「米軍やNATO軍がロシア軍と戦う可能性は低いでしょう。NATOには、『加盟国が攻撃された時は、共同で戦う』という規定があるからです。しかし、ウクライナはまだNATO加盟国ではないので、欧米がロシアと戦う法的根拠はありません。欧米は当面、経済制裁で対抗するしかないでしょう。

しかし困るのは、ウクライナ新政権です。自国領クリミアが、住民投票でロシアに編入されてしまう。これを黙認すれば、ウクライナ国民は激怒するでしょう。再びクーデターが起き、過激な民族主義者が政権を奪う可能性も出てきます。そのとき、米軍・NATO軍の支援なしに単独で戦っても、圧倒的な軍事力のロシア軍に勝てるはずがありません。新政権は、『戦わなくても地獄』『戦っても地獄』という、きわめて厳しい立場に立たされるでしょう」

――では、日本は国際的にどういう立場を取るべきでしょうか?

「全然関係ない話に聞こえるかもしれませんが、日本が現在抱える最大の問題は、中国です。具体的には、『中国は、日本と戦争になっても尖閣を奪う強い意志を示していること』です。

産経新聞2月23日付は、ダボス会議で中国の代表が、『多くの中国人は、尖閣諸島への侵攻で軍事的な優位を見せつけ、島を完全に支配できると信じている』『日米の軍事的対処で事態が大きな戦争につながっても、さほどひどいこととは思わない』と発言。他国を仰天させた、と報じています。

今は日中戦争前夜、という視点からみると、日本にとって最も重要なのは、もちろん軍事同盟国アメリカとの関係です。仮に日中戦争が起きても、日米対中国であれば圧勝できるからです。

しかし、安倍内閣はここ一年で、日米関係をかなり悪化させてしまいました。では、アメリカのロシア制裁を、諸手を挙げて支持すればいいのかというと、そう単純ではありません。日本にとって、ロシアも重要な国だからです。

ひとつは、北方領土問題。もうひとつは、エネルギー。原発停止で、電気料気の高騰、貿易赤字の恒常化などが問題になっていますが、ロシアは、日本に液化天然ガスを安く売る意向を示しています。

しかし、最重要なのは、これも中国がらみです。日中戦争が起こった時、ロシアは最低でも中立でいてもらわなければなりません。中ロが一体化して日本を攻撃すれば、アメリカは日本を支えきれなくなるかもしれない。もしアメリカが日本を助けなければ、完全敗北は間違いありません。

というわけで、日本は、アメリカとロシア、両国となんとか仲良くしなければならないのです。具体的には、上の“ロシアとの関係を壊せない3つの理由”をアメリカに説明し、対ロ制裁には加わらない。しかし、ウクライナ問題がひと段落したら、アメリカの求める集団的自衛権行使にむけた政策を進め、日米関係修復に全力を注ぐべきです。

ともあれ、日本政府は、今は日中戦争前夜であることを肝に銘じ、何か行動する際には、『これは、日米、日ロ関係を改善するか? 悪化させるか?』と熟考しなければなりません。軽率な言動はくれぐれも慎むべきです」

“ウクライナ危機”の歴史的、政治的背景と、その背後に隠された真実は、氏の前著『プーチン最後の聖戦』に、また世界における日本の立ち位置と、この先、米・ロ・中(・韓)にどう対処しなければならないかは、最新刊『日本自立のためのプーチン最強講義』に実にわかりやすく載っているのでぜひ一読をおすすめする。

また、これらの最新情報は、北野氏が主宰するメルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」(http://www.mag2.com/m/0000012950.html)でもくわしく説明されているので、こちらもぜひ参照してほしい。

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