加藤嘉一「中国・習主席が権力を集中させるのは『前例なき改革』の難しさゆえです!」

週プレNEWS / 2014年3月31日 15時0分

日本ではあまり注目されることのない中国の内政事情。習近平政権は、なぜ大きな波紋を呼ぶような“粛清”を断行する必要があるのでしょうか?

中国の国会に当たる全国人民代表大会が閉幕し、習近平(しゅうきんぺい)政権が正式に発足してから1年が経過しました。順調に政権を運営しているように見えますが、実は共産党内外の各方面では不満が蓄積しています。

この1年間、内政面で目立った動きは「反腐敗闘争」と、それに付随した「粛清」。党幹部を含め相当な人数が処分を受け、日本でいえば副大臣クラスの政治家も20人以上“落馬”(中国では政治的失脚をこう表現します)。近年、このクラスの政治家を多数落馬させたリーダーは習主席以外にいません。

中国では最近、かつて中央政治局常務委員を務めた大物の周永康(しゅうえいこう)氏が汚職問題で処分されるかどうかに注目が集まっています。常務委員以上の役職経験者はどれだけ汚職・腐敗があってもアンタッチャブルという中国政界の“暗黙の了解”にまで切り込むかどうか―。結果はどうあれ、こういった話題が出ること自体、習主席が既得権に激しくメスを入れていることの証(あかし)です。

ターゲットは政治家だけにとどまりません。共産党体制に反対する言論人の粛清が相次ぎ、中国最大の“性の都”と呼ばれる広東省東莞(とうかん)の歓楽街も、6000人の公安部員の投入で一斉摘発された。「贅沢は悪」という風潮ができ、高級レストランは次々と閉店を余儀なくされ、政治家に対する春節(中国の正月)の贈り物も禁止になりました。

こうした動きは、共産党の権力と威信を高め、経済改革の先にある「政治改革」を実現させるための布石なのだろうとぼくは見ています。人民の批判対象となる汚職を追放し、権力基盤を固めない限り、改革という大仕事はとうてい完遂できない。そう考えているわけです。




ただ、それにしても習政権のやり方は非常に強硬で、あらゆる方面で不満が爆発しつつある。ぼくから見ても、いささか性急でやりすぎだと感じる部分は少なくありません。

党内には、現在の習主席をこう表現する人間もいます。

「今や彼の権力は鄧小平(とうしょうへい)以上。もはや毛沢東(もうたくとう)に肉薄する勢いだ」

政府・党・軍のトップである習主席は、改革を深化させるための「改革小組」(「小組」はワーキンググループを指す)、サイバーセキュリティーと軍事国防政策を扱う「指導小組」、国内外の安全保障政策を取り仕切る「中央国家安全委員会」のトップも兼任。さらに、反腐敗闘争を担当する「中央規律検査委員会」でも、腹心である王岐山(おうきざん)をトップに据えて党内高級官僚の取り締まりを指揮している。確かに、すべての権力が習主席の下に集中していると言っても過言ではありません。

ただ、習主席は思想面でいえば、かつての毛沢東路線には反対の立場です。ぼくの分析では、習主席は「毛沢東的な権威主義」をもって、「鄧小平的な開放路線の改革」を断行しようとしている。そのことが外から見えにくいがゆえに、あらゆる臆測を呼び、反発すら招いてしまっているように感じます。

実のところ、習主席には路線を継承すべき先人がいません。現在の中国は世界第2位の経済大国でありながら、経済成長や社会の安定にかげりが見える。それでも共産党一党支配という“大前提”を堅持しつつ、経済的にも政治的にもアメリカという超大国をキャッチアップしなければならない。過去の方法論が通用するはずもありません。

なぞるべき前例がないという点では、初の黒人大統領であるアメリカのオバマ大統領も似た境遇にある。現在の米中関係が平穏なのは、「自身の政策が理解されず、孤立している」という共通の思いが両リーダーにあるからなのかもしれません。いつの世も指導者は孤独なもの。誤解や臆測を招かない「リーダーの決断」が存在するというなら、逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学アジアセンターフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考えるプロジェクト「加藤嘉一中国研究会」も始動!




http://katoyoshikazu.com/china-study-group/

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