識者が提言「首都高速はここを改善すればもっと進化する!」

週プレNEWS / 2014年4月22日 6時0分

外環は均一料金のため、わずかな距離でも500円取られるのが痛い。ここを首都高にできれば、料金は安くなるし、より効率的なネットワークができる

中央環状品川線、横浜環状北線/北西線の完成で、そのネットワークがほぼ完成する首都高速。しかし、ハードができても首都高には渋滞、料金体系などまだまだ問題がある。そこで深澤誠人氏、鈴木ケンイチ氏がソフト(運用)面での改善ポイントを徹底討論。首都高さん、ぜひ検討してみてください!

■渋谷線の火災であらためてわかった首都高の重要性

―今日は「今、首都高がどんな問題を抱えているか」「どんな施策があれば、首都高がより役立つ道路」になるか、理想像を語っていただければと思います。

鈴木 まずは、3月に発生した3号渋谷線の火災から、かな。報道では原因は高架下の工事現場での塗料への引火ってことだけど、それがあれだけの大火災になってしまい、鎮火後も構造物の強度を検査しなくちゃいけない事態になったってことは、問題だよね。

深澤 そうそう、最終的には当局および首都高自身による検証を待たなければならないけど、あそこまで火事が大きくなったのは、出火現場近くに何か燃えるものがあった可能性があると思う。工事箇所の落下物対策のネットは防炎のはずだし、いったい何が燃えたのやら。それも含めて危機管理について見直してほしいかな。

鈴木 火災の現場は、都心環状線と東名高速道路を結ぶ首都高でも屈指の交通集中点。週末のうちに復旧し、月曜日にはほぼ平常に戻ったのが、不幸中の幸いだった。

深澤 当日、たまたま仕事で渋谷にいたんだけど、ピタッと止まって動かなくなった。首都高だけじゃなくて、消火活動などで下を走る国道246号も通行止めになっちゃったから。246号に並行する駒沢通りや目黒通りも大渋滞して、それに交差する明治通り、山手通りにも渋滞の連鎖が広がって……。あらためて首都高の「すごさ」がわかったね。

―もし月曜日以降も通行止めが続いたら、どうなっていたんでしょうか?

深澤 千葉方面から都心を抜けて3号線から東名に入っていたトラックは、湾岸線経由で保土ヶ谷バイパス、横浜町田ICを経由して東名に入るルートを選んだんじゃないかな。そうなると、普段から渋滞が頻発している保土ヶ谷バイパスは動かなくなる。

鈴木 2008年に5号池袋線で起きたタンクローリーの火災事故では、3ヵ月にわたり通行止めになり、周辺の交通に大きな影響が出た。今回、同じような期間、通行止めになっていたら、影響はもっと大きくなっていたはずだね。ただ原因の所在はさておき、昼夜休日関係なく対応にあたってくれた首都高の職員の方、工事関係者にはお疲れさまと言いたい。

深澤 やはり、首都高を補完する圏央道、外環道の全通が待ち遠しいですね。

■空いてる路線は値下げ、乗り継ぎの外環は無料に!

―さて、その首都高は、12年1月から距離別料金を導入しました。それぞれ別料金となっていた東京線、神奈川線、埼玉線を一体化する大きな改革でしたが。

深澤 やっぱり、ETCの利用率向上が、距離別料金導入を後押ししたんでしょう。首都高の資料によると、ETCの利用率は、13年3月時点で91・3%ですから……。

鈴木 埼玉線から神奈川線まで通して乗ると、料金圏制では1700円かかっていた。それが900円だから、大きいよね。

深澤 その半面、東京都内を横断するような使い方では値上げになりました。例えば高島平から空港中央だと、これまでの700円が900円にとか。

―さらに、4月の消費増税で、10円単位の“刻み”が出てきましたよね。

鈴木 増税による値上げだから仕方ないけど、現金の人には面倒になるよね。でも、ETCも、単に現金より安いだけじゃなくて、ETCならではの料金の運用ってできないかなって思う。例えば中央環状線の内回りって、けっこうな確率で3号渋谷線と合流する大橋JCTが渋滞してるじゃない。そういう場合、富ヶ谷でいったん流出して、下りなら池尻から、上りなら渋谷から再流入したほうが早いということも多いんだけど、料金の二重払いはしたくないからそのままってドライバーは多いはずだよね。

深澤 今回の3号渋谷線の火災のときは、乗り直したクルマについては二重課金されないって運用を行ないました。システム的にできるのであれば、ちゃんと活用してほしいと思います。

―渋滞区間でいったんクルマが流出することで、一般道の交通量が多くなるという恐れはないでしょうか?

深澤 確かにその懸念はあるでしょう。でも渋滞は、交通容量をわずかに超えただけで発生するんです。その増えた分を、余裕のある一般道が受け持つのであれば、全体で見て交通の流れは最適化されると思いますよ。

鈴木 あと、交通量の少ない路線や時間帯は通行料金を下げるとか、初乗りを値下げして一般道の渋滞を減らす特定区間を増やすとか、柔軟な運用にも首都高には取り組んでほしいですね。そういった工夫をすれば、料金を下げつつ、売り上げや利益を増やすことは可能だと思う。

深澤 サービス業だったら、お客さんの少ない時間帯は料金を下げて集客するのが当たり前。それができてないよね。あと、二輪の料金もなんとかしてほしい。普通車と同じというのは、やっぱり割高。通行量も全体の0.7%で、二輪料金の軽減が収支に大きな影響を与えるとも思えないですし。

鈴木 やっぱり、ビジネス視点が欠けているよね。一般道の渋滞対策で新しい道路を造ったり、交差点を改良したりするのは時間もお金もかかる。でも首都高っていうすでにあるインフラを効率利用して、首都高も収益が上がる、一般道も渋滞が減るという結果が出せるのであれば、ぜひとも最初は「社会実験」でもいいから、トライすべきでしょう。

深澤 そういう意味では、やはり外環道を首都高のバイパスとしてきちんと活用してもらうため、首都高との乗り継ぎ割引はぜひ実施してほしいですね。いや、実際、乗り継ぎ利用なら無料でもいいと思います。

鈴木 そうだね~。でも外環そのものが均一料金制を採用している以上、どうなんだろう? 首都圏の交通網を考える上では、そのへんの改革も必要になってくるだろうね。

■この危険箇所の改善と、ここに新路線建設を望む

―首都高は、特に初めて走るドライバーから、怖い、走りにくいという声が聞かれます。安全対策はどうでしょう?

鈴木 もともとスペースのない所にムリヤリ造っているからねえ。当たり前だけど、後になって開通した路線ほど、その傾向が強い。中央環状線の山手トンネルの新宿付近も、地下鉄をはじめさまざまな既存構造物が埋まってて、それを縫うようにトンネルが走っているんだから。

深澤 大橋JCTも、よくあんなもの造ったよねって思います。

鈴木 下り坂で下りていくにつれてカーブのRがきつくなるんだから、それで事故が起きないほうがおかしいよね。

深澤 でも東京人ってそんなコンディションに自分を慣らしていくのがうまい(笑)。こんなの、ほかの国だったら、もっと事故続発だと思いますよ。

鈴木 そうだね。首都高速も、例えばJCTとかの合流部分の車線を何度も引き直して改善しているし。日本人はまじめだよ。

―だけど、どうしても危ないって所、ありますよね?

深澤 やっぱりブラインドコーナーが怖い。曲がった途端に渋滞とか。

鈴木 で、その対策が「急カーブ」と「スピード落とせ」の看板だけとか(苦笑)。もっと「どうすれば事故が防げるか」を考えてほしいよね。

深澤 ボクたちクルマ関連の仕事をしている人間は、例えばトンネル内で先方の渋滞状況を、白い壁面に反射するブレーキランプで察知したりするわけじゃないですか。そうした「先読み」のスキルを、首都高自身も積極的に啓蒙してほしいですよね。

鈴木 あと、都心環状線外回りと八重洲線が合流する「神田橋JCT」のように、合流側の加速車線がほとんどなく、合流する側が本線通行車両の減速を期待しなきゃいけないところもある。知らずに本線を走っていたら、危ないよね。そうした本当に危険なポイントについての周知が必要だよ。

―さて、そろそろ誌面もなくなってきましたが、最後に新路線など、今後の首都高への期待についてお話しいただけますか。

深澤 計画はあるけど、まだ具体化していない路線のうち、1号上野線と中央環状線との間は、早期につないでほしい。

鈴木 あと2号目黒線の延伸も。今回の3号渋谷線の事故でもわかったけど、やはり都心と東名をつなぐ重責を3号渋谷線だけに担わせるのは、リスク高すぎ。2号目黒線、第3京浜を使って東名にアクセスする代替路が必要だよ。

深澤 4号新宿線と5号池袋線との間の空白地帯もなんとかしてもらわないと。関越を上ってきたクルマが練馬ICで降りて、その先があまりにもプアですから。

鈴木 首都高はあちこちで長いこと工事してたけど、それがレインボーブリッジとか、山手トンネルとか、ちゃんと形になっている。今後の新設路線にしても、早期に手をつければ、いつかは完成するはず。もちろん工事費用をどう捻出するのかって問題はあるけど、誤解を恐れずに言えば、もう償還制度なんて棚上げして、ずっと料金を取り続け、それを必要な路線の新設、既存路線の補修に充てるような発想の転換も必要じゃないかな。

深澤 3号渋谷線の事故で、首都高がいかに重要な交通インフラか再認識された今が、そうした見直しを検討する絶好の時期かもしれませんね。

鈴木 やっぱり東京だけでなく、首都圏、そして日本の経済発展に、首都高の果たす役割は大きいと思う。改革を恐れず、大胆に取り組んでほしいね。

(取材・文/植村祐介 鈴木ケンイチ 深澤誠人 撮影/五十嵐和博)

■深澤誠人(ふかざわ・まさと)




二輪業界、四輪業界のどちらにも顔を出すドライバー&ライダー/ライター。技術系のインタビュー取材からウエア、パーツの企画・開発・PR業務まで幅広くこなす

■鈴木ケンイチ(すずき・けんいち)




日本自動車ジャーナリスト協会会員。自動車専門誌やビジネス誌をはじめインターネット媒体などで取材・執筆活動を行なう。開発者インタビューなど技術系取材を得意とする

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