加藤嘉一「米中両国の間には、目に見えない“パイプ”が存在しています!」

週プレNEWS / 2014年4月28日 11時0分

ホワイトハウスをはじめ、アメリカの政治の中心地となっているワシントンD.C.。そこでは米中両国が水面下で緊密なコミュニケーションを日々、展開しています。

米オバマ大統領が訪日しましたが、今回は大統領の“本拠地”の話を書きます。今年1月、ぼくはワシントンD.C.を訪れ、政策関係者たちと米中関係の現状と展望をめぐって意見交換してきました。話し合い自体は有意義なものでしたが、同時に日本人として、ぼくは衝撃を受けました。

アメリカの首都ワシントンD.C.では、日米中の3ヵ国関係をめぐり、日本を除く米中2ヵ国間で、ダイナミックかつ緊密なコミュニケーションが取られていたのです。

中国大使館の職員と米ホワイトハウスや国務省の職員たちは、週末や休日も関係なく、携帯電話で頻繁に連絡を取り合っている。これは中国側の関係者にも直接確認した話です。

国と国のコミュニケーションというものを考えたとき、政策決定に関与できる人物同士の積極的交流は、緊急適応力や応用力に優れた重要なシステム。今や米中両国は、政治体制や価値観の相違を超越し、「互いの国で何か問題があれば、すぐに連絡がいく」ような戦略的関係を構築しつつあるわけです。

ワシントンD.C.で米中間の重要なパイプ役のひとつになっているのが、当地で中国系アメリカ人のリーダー的存在となっている大物ロビイストです。実際にぼくも会って話をしましたが、人を魅了する不思議な力を持つ人物でした。彼はオバマ氏が最初の大統領選に打って出た際、全米にわたり中国系アメリカ人の票を取りまとめた経緯があり、大統領本人とも面識があります。

彼のようなロビイストの力が生かされる場面は多々ある。例えば、オバマ大統領がダライ・ラマ14世と会うことになった場合、中国政府としては原則として承服することはできず、かといって無視するわけにもいかない。こういったときにロビイストが間に入り、アメリカ側の意図を事前に確認したり、それを中国大使館に伝えたりする。水面下で米中のホンネを伝達するブリッジになるわけです。それでも両国関係にある程度の緊張は生じるでしょうが、事前に調整ができているかどうかでダメージはまったく違います。




現在の米中関係は、政府どうしの公式なやりとりを見るだけで状況がつかめるほど単純ではありません。常にさまざまな思惑や臆測が飛び交い、時には机の上で罵り合いながら机の下では手を握り合うような場面もある。こうした状況になればなるほど、さまざまな外交案件に関して米中当局の間で立ち回り、認識ギャップを埋めるロビイストの役割が重要になります。

米中間にこのようなパイプが確立されたのは、そう遠い昔の話ではないはずです。まず、そこにチャンスのにおいを嗅ぎつけ、ポジションを確保した人物がいた。そして、その人物を米中両国の当局が柔軟に“活用”しているというだけのことです。

一方、残念ながらぼくが知る限り、日本とワシントンD.C.の米当局会、財界、メディア、知識人、留学生までも巻き込んだ全方位的なチャンネルは構築できていない。靖国問題を見てもわかるように、最近、日米間の問題意識や現状認識に微妙な――それでいて深刻な温度差が目立ってきているのも、このようなコミュニケーションチャンネルの欠如と無関係ではないでしょう。

日中関係も似たような状態です。数年前に北京で共産党関係者に聞いたところでは、党高官など政策決定に影響力のある人たちと平日、週末問わず適宜連絡を取ることができ、状況に応じて冷徹なまでに率直な議論ができる日本人外交官はいない、とのことでした。

日米中3ヵ国の情報戦の中で、日本だけが“蚊帳(かや)の外”になっている可能性は否定できません。この現実に危機感を覚えないというなら、その理由を逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学アジアセンターフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考えるプロジェクト「加藤嘉一中国研究会」も活動中!




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