日本が“普通の国”になることとは、自衛官が犠牲者にも加害者にもなるということ

週プレNEWS / 2014年6月10日 6時0分

1945年に制定された国連憲章の51条では、加盟するすべての国に対して、自衛する権利としての「個別的自衛権」と「集団的自衛権」を認めている。

ところが日本は、「集団的自衛権」を行使することができない。それは、戦争放棄を規定した憲法9条があるため、自衛隊の海外派遣はできず、集団的自衛権は有していても行使できないという憲法解釈を続けてきたからだ。

つまり日本は、国際的に見たら“普通の国”ではないということになる。

これに対し、「日本も普通の国として、自国の領土と国民を守るために抑止力を強化し、国際貢献ができるようになるべきだ。そのためには集団的自衛権の行使容認が必要だ」というのが、安倍政権や憲法解釈変更の必要性を指摘する報告書をとりまとめた有識者会議「安保法制懇」の主張である。

では、日本が“普通の国”になれば、いったい何が変わるのか。その具体例として、日本と親密な同盟国、アメリカが21世紀に入ってから起こしたふたつの紛争、アフガニスタン攻撃とイラク攻撃から見てみよう。

「アフガニスタン攻撃とイラク攻撃はいずれも、『テロとの戦い』を掲げるアメリカの個別的自衛権行使を名目として行なわれた争いです。このふたつの紛争にはアメリカ以外にも、多くの国々が集団的自衛権の行使という形で派兵し、多数の死傷者が出ています」

そう語るのは、慶應義塾大学経済学部の延近充(のぶちか・みつる)教授だ。

延近教授がまとめたふたつの紛争における死者数を見てみよう。2001年以来、今なお続くアフガニスタン紛争では、今年4月の時点で49ヵ国が多国籍軍に参加。死者数はアメリカの2321人を筆頭にイギリス453人、カナダ158人、フランス86人、ドイツ54人……と続き、29ヵ国の兵士3448人の命が失われている。

一方、2003年に始まったイラク攻撃では武力行使に反対したフランス、ドイツなどが参戦しなかったが、アメリカ軍が撤退した2011年12月までの総死者数は、アメリカ4486人、イギリス179人、イタリア33人……と続き、フィジーなど、「えっ、こんな国も派兵していたの?」と、驚くような国も含めて23ヵ国、4804人もの死者が出ている。

延近教授が続ける。

「忘れてはいけないのが、このふたつの紛争によっておびただしい数の民間人が犠牲になっているということです。

例えばアフガニスタン紛争の場合、2007年以降に紛争の犠牲となった民間人の死者は、国連が確認している数だけでも1万7000人以上。そのうち3600人以上がアメリカ軍・NATO軍を中心とする国際治安支援部隊のタリバン掃討のための空爆や夜間の軍事作戦によるものです。こうした紛争で『多国籍軍』に参加する場合、自国の兵士が『犠牲者』になるだけでなく、『加害者』にもなり得るという現実をしっかりと直視する必要があるのです」

集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更は、国民ひとりひとりに突きつけられた命題なのだ。

(取材/川喜田 研)

■週刊プレイボーイ25号「集団的自衛権で“自衛官はこれだけ死ぬ”かもしれない!!」より

「アフガニスタン攻撃での各国兵士の死者数と派遣人数」




http://wpb.shueisha.co.jp/2014/06/10/31380/images/1

※死者数は2014年4月末時点。派遣人数は同年4月1日時点で、合計はその他の国も含む。なお、ピーク時の派遣人数の合計は約16万5000人。アメリカ国防総省、ISAF(国際治安支援部隊)、通信社、新聞社のデータや報道をもとに延近教授が集計し、作成

「イラク攻撃での各国兵士の死者数と派遣人数」




http://wpb.shueisha.co.jp/2014/06/10/31380/images/2

※死者数は2003年3月の攻撃開始から2011年12月のアメリカ軍撤退まで。派遣人数の合計はその他の国も含む各国の最大派遣人数の合計。アメリカ国防総省、通信社、新聞社のデータや報道をもとに延近教授が集計し、作成

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