生活保護法改定で、現役ケースワーカーがその落とし穴を告白!

週プレNEWS / 2014年7月9日 6時0分

生活保護制度を現場でサポートする「ケースワーカー」

受給者の自立を支援する彼らは1万6386人いて、150万以上の生活保護世帯を支えている(2012年時点)。

しかし、不正受給などが問題視されているこの制度に対しては、批判する人も増えている。そうした声を受けて、7月1日に「改正生活保護法」が施行され不正受給の罰則が強化されたばかり。

この変更について、誰よりも生活保護の実態を知る現場のケースワーカーたちはどう見ているのか? ケースワーカー歴6年のA氏はこう話す。

「今回、『改正生活保護法』が施行されて、不正受給の罰則が強化されましよね。私はこれで自治体がより不正受給を隠蔽(いんぺい)するのではと懸念しています」

なぜ、不正受給者ではなく、自治体側が隠すのか?

「不正受給が発覚した場合、今までもらっていたお金を返還しなければならないのですが、ほとんど徴収できずに焦げついているのが実情なんです。そしてもともと、生活保護費は4分の3を国、残りを各自治体が負担しているのですが、徴収できなかった場合はその損失をすべて自治体で賄(まかな)わなければならない。そうなると、『ならば、不正を見逃したほうがマシ』という自治体が出てくるはずです。さらに今回は、返還に加えて不正受給者に罰金も科せられるわけですが、これも焦げついたら、自治体の負担になるわけですよ」(A氏)

つまり、不正受給が発覚すると、自治体が自らの首を絞めてしまうため、ということだ。一方、ケースワーカー歴5年のB氏の見解はこうだ。

「確かに、そうした問題もあります。けど、今回の改正には銀行や官公庁に対して調査権限の拡大も盛り込まれたことで、不正受給が銀行への開示請求で発覚した話があるように、銀行や官公庁に収入や課税調査の回答が義務化されたのは大きい。これで、不正受給を試みる受給者自体は減ると思いますよ」

改正法では、新規申請者に収入と資産を示す書類の提出義務や親戚までの財産調査(扶養義務の拡大)があり、申請がしにくくなるという話もある。では、そもそもケースワーカーは、ひとりで何ケースくらい担当しているのか?

「1人の担当は、80ケース以内に収めると決められていますが、それで済んでいる自治体はほとんどないです」(B氏)

実際、ケースワーカー歴2年のC氏も、最初は規定の80ケースだったものの、新規の申請を受け付けていった結果、1年目で100ケースにまで増えたという。B氏の市でも、ケースワーカーがこの5年で倍の人数になったが、それでも追いついていないとのこと。

「ただ、人手や財政の負担が大きいから、これ以上受け入れにくくするという流れはおかしいですよね。生活保護水準を下回る生活をしている国民はまだまだいるのに、今回の法改正は申請のハードルを上げかねない。これだけは言っておきたいのですが、書類を見て問題がなければ、私たちが断ることは絶対にありません」(A氏)

「新規申請を厳しくするのではなく、困っている人を広くすくい上げて、自立を促すのが僕たちの仕事ですもんね」(C氏)

不正受給を厳しく取り締まるあまり、申請のハードルが上ってしまう……それで、本当に困っている人たちが救われなければ本末転倒だ。“最後のセーフティーネット”として、社会からこぼれた人々と逃げずに向き合う。その「覚悟」を持って対している現場のケースワーカーたちは、今回の改正が改悪とならぬよう訴えている。

(取材・文/頓所直人)

■週刊プレイボーイ29号「現役ケースワーカー座談会」より(本誌では、ケースワーカーの1日から職務の内容までを赤裸々トーク!)

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