加藤嘉一「日本は『オバマ後のアメリカ』を意識して戦略を立てる必要があります!」

週プレNEWS / 2014年7月21日 11時0分

初の黒人大統領の誕生に全米、いや世界が沸いた2008年の就任劇から6年。オバマ大統領は、日本人が考える以上に微妙な立場に立たされています。

「まだ2年もあるのか……」

先日、ハーバード大学の教授たちが内輪で開いた会合に参加したときに飛び交っていた言葉です。

何が「まだ2年もある」のかというと、オバマ大統領の任期です。長年、民主党を支持してきたリベラルな知識人たちにすら、オバマ政権はすでに「見限られている」ように見える。彼らの言葉には、米大統領選の投票権を持たないぼくでさえ、いろいろと考えさせられました。

各種の調査を見ても、オバマ大統領の求心力は低下の一途をたどっている。米キニピアック大学が行なった世論調査では、「第2次世界大戦後で最悪の大統領」にオバマ大統領が選ばれました。現職ゆえ最も人々の目が厳しいことは間違いないにせよ、大統領就任時の盛り上がりを思えば衝撃的な調査結果です。

特に外交政策に対する不支持が多いのは、おそらくイラク情勢の不安定化も一因でしょう。イスラム教スンニ派の過激組織ISISが勢力を拡大しているイラクに対し、オバマ大統領は静観するでもなく本気でコミットするでもなく、300人の軍事顧問団を派遣するという中途半端な政策をとっています。

オバマ政権の中東政策を読み解く上で、重要なことは以下の3点です。

(1)アラブ中東は依然としてアメリカ国民の関心の中心である。




(2)一方、アラブ中東問題のみならず、ウクライナ問題や中国の台頭といった国際情勢に対応できるだけの財政的余裕や人的キャパシティは、今のアメリカにはない。




(3)イラク問題で共和党のブッシュ政権が失敗した前例がある。もしオバマ政権が軍事行動を選択した場合、確たる成果を挙げられなければ「結局、米軍を送り込む必要はなかったじゃないか」という批判を浴びるのは必至。民主党の今後のためにも、ここは差別化を図りたい。

(2) に関して、財政の問題は各所で指摘されているため、ここでは人的キャパシティについて補足します。ハーバード大学のあるアジア専門家によれば、今のホワイ トハウスには、「日中関係」や「アジア太平洋問題」を的確に処理できる“ライトパーソン”(適任者)がいないそうです。「日本のことに詳しい人物」や「対中政策のスペシャリスト」はいるけれど、この地域について包括的な知識を有し、戦略を立て、オバマ大統領やケリー国務長官に的確に提言できる人間がいない、と。アラブ中東問題にしても、似たような状況に陥っている可能性があります。

このような状況下では、アメリカの国際的な影響力低下は今後も避けられない。一般国民だけでなく、有識者たちでさえ「オバマは終わった」と感じるのも無理はありません。

2008年にオバマ大統領が就任したとき、ぼくは中国の言論市場で次のようなことを発信しました。

「初の黒人大統領になった時点で、彼の役割は終わった。だから彼に多くを期待してはいけない。彼が優れている点は、イメージも含めたルックス、スピーチ力、キャンペーン力の3点。以上である」

政治家としての経験が浅く、政策を推し進める突破力はないが、人々を魅了するスピーチ&キャンペーン力は目を見張るものがある。オバマ大統領とはそういう人物です。

残り2年、オバマ大統領はおそらく経済再建や「オバマケア」と呼ばれる医療保険制度改革に注力する。外交面は“最低限の仕事”にとどめ、大きな動きは起きないと思われます。

詳細は後日書こうと思いますが、仮に16年の次期大統領選挙でヒラリー・クリントン氏が当選すれば、アメリカの対アジア政策は多かれ少なかれ調整を迫られる でしょう。日本はこの点を踏まえ、中長期的な視点に立って対米戦略を構築する必要があります。先行きを見極めずに国益を確保できるというなら、その理由を逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラ ムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国 を離れ渡米。現在はハーバード大学アジアセンターフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、 ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考えるプロジェクト「加藤嘉一中国研究会」も活動中!




http://katoyoshikazu.com/china-study-group/

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