松屋「プレミアム牛めし」で“脱・安売りバトル”の火蓋が切られた!

週プレNEWS / 2014年7月31日 6時0分

専門の七味まで用意された松屋の「プレミアム牛めし」。厚みの増した肉は食べ応えがあり、確かにウマくなった……気がする

牛丼チェーンの松屋が、7月22日から全国約970店舗のうち首都圏中心の286店舗で「プレミアム牛めし」の販売を始めた。

従来、同チェーンの「牛めし」は冷凍肉を使用していたのだが、新商品ではうま味と柔らかさに勝るチルド(低温冷蔵)肉へと変更。そして材料を煮込むタレも新たに開発した。値段は牛めしが290円(並盛。以下同様)だったのに対し、なんと大幅90円アップの380円。将来的にはチェーン全店で、牛めしからプレミアム牛めしへの完全切り替えを行なう予定だ。

しかし、松屋は4月の消費増税時、以前の280円から290円へと値上げしたばかり。それから4ヵ月弱で、あえて看板商品の再値上げとリニューアルに踏み切った意図は、どこにあるのだろう?

フードアナリストの重盛高雄氏が解説してくれた。

「松屋と同じく、業界2位の吉野家も4月に牛丼の値上げを行ない、20円アップの300円としました。同時に『史上最高』の味になったというフレコミで、リニューアルを行なったのです。ところが、吉野家ファンの多くから『前よりおいしくなっていない』との不満が上がっていて、4月以降の同社の売り上げは低迷しています。吉野家でさえそのような状況ですから、値上げしながら以前と同じ商品を提供していた松屋の業績も、芳(かんば)しくはありませんでした」

一方、消費増税時に3強の中で唯一、10円の値下げを敢行し、270円とした業界トップのすき家(ゼンショー)はといえば……。

「牛丼一杯当たりの利幅が下がる分は、これまで以上に客が来店してくれることでカバーできるという皮算用だったのですが、見込みほど数字が伸びず、やはり苦戦中です」(重盛氏)

こうした各社の苦境のなか、松屋はライバルたちの現状も把握した上で、あるキーワードにたどりついたのである。

「それが『プレミアム』です。景気回復基調のなか、今の消費者は商品の内容に納得できれば、それに見合う対価を支払ってくれます。松屋はこの消費マインドに目をつけ、さらには吉野家の失敗も教訓にして、思い切った金額の値上げを行なう代わりに、はっきりと味の進化を感じられる商品へと改良することで、顧客をつかもうと考えたのでしょう」(重盛氏)

さらに、値上げによって収益がアップすれば、業界全体が直面している問題の解消にもつながる。

「今、牛丼チェーンの店舗はどこも人手不足。しかし、業績が上がれば従業員の賃金に充てる原資も増やせるので、より高い時給を設定できます。優秀な人材を確保するには、しかるべき好待遇が必要ですからね」(重盛氏)

だからこそ松屋のチャレンジに対しては、ライバルたちも注目せざるを得ない。

「これまで牛丼3強は安売り競争に陥(おちい)り、互いの体力を削り合ってきました。しかし会社、消費者、従業員のすべてがハッピーになれる今回の松屋の戦略がもし成功すれば、他社も一気に右へ倣(なら)えとなるでしょうね」(重盛氏)

そうなれば、値上げ&商品のグレードアップという流れは、牛丼業界以外にも波及しそうだ。

「このところコンビニに客を取られている、低価格帯の外食チェーンが同様の手を打ってくるかも。いくらコンビニの商品が手頃な値段だとはいえ、店内スペースやオフィスなどで飲食するのは味気ないものです。そこでファミレスやコーヒーショップ系のチェーンが、落ち着いて過ごせる空間を持っている強みを打ち出し、同時にフードやドリンクを刷新してくるかもしれませんよ」(重盛氏)

各店それぞれの工夫を凝らした食が楽しめる時代になるのなら、多少の値上げぐらいは大歓迎?

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