加藤嘉一「日中首脳会談の実現には、まだまだ高い壁があります!」

週プレNEWS / 2014年9月22日 11時0分

「これ以上、関係を悪化させたくない」。これは日中両国首脳の共通意見だと思いますが、だからといってすぐ首脳会談が実現するほど事は単純ではありません。

ここ最近、日本のメディアでは、「11月に中国・北京で開催予定のAPEC[エイペック](アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議で、安倍晋三首相と習近平(しゅうきんぺい)国家主席の就任以来初となる日中首脳会談が実現するのではないか」というトーンの観測記事が目立ちます。

根拠に挙げられているのは、「7月下旬に親中派である自民党大物OBの福田康夫元首相が訪中し、習主席と“極秘会談”を行なって日中首脳会談への地ならしをした」こと、「8月9日にASEAN[アセアン](東南アジア諸国連合)関連の会議が開かれていたミャンマーで、日本の岸田文雄(ふみお)外相と中国の王毅(おうき)外交部長が会談を行なった」ことなどのようです。

しかし、ぼくの考えでは、こうした観測は楽観的すぎると言わざるを得ません。

日本では「日中外相会談」と呼ばれているミャンマーでの出来事は、中国では各メディアが「第三国における中日外相の非公式な接触」という表現に統一して報道していました。中国側の認識は、「日本側と正式な外相会談を開催するにはまだ時期尚早」だったということです。

中国政府関係者によれば、そもそもこの「接触」が実現した理由は、「中国の“古い友人”である福田氏がわざわざ足を運んでくれたことに対する見返り」とのこと。逆に言えば、福田氏の訪中の“手土産”はミャンマーでの外相同士の非公式接触にすぎず、APECに合わせた「日中首脳会談への地ならし」ができたかどうかはまったく別問題ということのようです。

また、日本メディアの中には「習主席は、元共産党中央政治局常務委員の周永康(しゅうえいこう)氏を汚職問題で“落馬”させたことで権力を固め、いよいよ対日外交に着手する」との見方もあるようです。しかし、実際にはその逆に、むしろこれから党内権力闘争が激化していくとぼくは見ています(次号で詳しく書く予定です)。そんな微妙なタイミングで、習主席が安倍首相と簡単に会うとはとうてい思えません。

習主席の脳裏には、前政権の失敗という“教訓”があります。

2010年5月31日、温家宝(おんかほう)首相が訪日して鳩山由紀夫(ゆきお)首相と会談した。しかし温氏の離日の翌日、あろうことか鳩山氏は電撃辞任を表明してしまった。温氏からすれば、会談で日中の将来を展望したのに、いきなりハシゴを外されたも同然です。

そして2012年9月9日、ロシアで行なわれたAPECにおいて、胡錦濤(こきんとう)国家主席と野田佳彦(よしひこ)首相が15分ほど立ち話をする機会があり、胡氏は野田氏に「日本は事の重大さを認識してもらいたい」と、尖閣(せんかく)諸島国有化問題についてクギを刺した。比較的日本に好意的だった胡氏は、「こちらの立場も配慮してくれ」という意味を込めたのでしょう。

ところが翌日、帰国した野田氏は尖閣諸島国有化の閣議決定を断行。その結果、顔に泥を塗られた胡氏は中国国内で「日本に対して弱腰だ」などと猛烈な批判を受けることとなり、国家として反日政策・プロパガンダを強力に推し進めるしかなくなりました。

習主席に近い共産党関係者は、「日本の政治家は信用できず、現段階で“対日リスク”を取ることはできないだろう」と言っていました。例えば、11月のAPECの際に日中首脳会談が行なわれ、その直後の年末に安倍首相が昨年同様、靖国神社に参拝したとしたら? 激化する権力闘争のなか、習主席は一気にピンチに陥ってしまうでしょう。

現状を冷静に分析すれば、APECでは「非公式な接触」か、「握手プラス立ち話」程度にとどまる可能性が高い。外交には相手がいるという基本的事実を忘れ、日本側の事情にしか関心を持たず、情報分析もせずに騒ぎ立てることになんの意味があるのか……逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。ハーバード大学フェローを経て、現在はジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員。『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(集英社)など著書多数。中国のいまと未来を考える「加藤嘉一中国研究会」が活動中!




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