加藤嘉一「中国の権力闘争の現状は、10月の『四中全会』の結果に表れます!」

週プレNEWS / 2014年9月29日 11時0分

中国共産党内部の権力闘争は複雑怪奇。この夏には、過去に例のない大物の“落馬”が注目を集めました。この政治事件は、いったい何を意味するのでしょうか?

中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席が主導する「反腐敗運動」は、汚職撲滅という表向きの目的以上に、中国共産党内の権力闘争という意味合いが強いといえる。その動きがこの夏、ひとつのピークを迎えました。7月末、元中国共産党中央政治局常務委員の周永康(しゅうえいこう)氏が“落馬”(汚職などのスキャンダルをきっかけに失脚し、中央規律委員会から調査を受けること)したのです。

政治局常務委員を経験した大物の“落馬”は、前例のない衝撃的なニュースとして世界各地で報じられました。多くのメディアは「これで権力闘争もひと区切り」という見方をしていたようですが、ぼくの予測では、習主席が本当の意味で苦しみ、もがくのはこれからです。

今回の一件の背景にあるのは、苛烈(かれつ)な世代闘争です。習主席の後ろ盾となっているのは、父親の故・習仲勲(しゅうちゅうくん)氏とともに中国共産党の黎明(れいめい)期を支えた第1、第2世代の元老たち。一方、“落馬”した周氏の背後にいるのは、中国が市場経済に傾倒していくなかで這(は)い上がってきた第3世代の江沢民(こうたくみん)・元国家主席や、その側近である第4世代の曾慶紅(そけいこう)・元国家副主席です。

元老たちは、政治的権力を駆使して経済的な果実を得るような役人をよしとしない。腐敗が横行した第3、第4世代を許すことができない。今回の一件には、元老たちの命を受けた第5世代の習主席が、第3、第4世代にメスを入れたという側面を見いだすことができます。

これで政治局常務委員は“聖域”ではなくなった。習主席は、これからさらなる大物に対し、同じように鉈(なた)を振るうべく動くのか。権力闘争の過程で、刃が自分に返ってくる可能性も否定できません。

そのリスクを負ってまで習主席が周氏を“落馬”させた理由は、元老たちの意向以外にもいくつか推測できる。巨大な勢力を誇る江元主席グループの存在を脅威に感じた現指導部が、周氏を失脚させることでその力を弱めようとした、という見方。また、かつて周氏は元重慶(じゅうけい)市トップの薄熙来(はくきらい)氏(すでに失脚)と組んで“習近平降ろし”を画策していたとの情報もあり、そのケジメをつけさせたという見方もできます。

ともあれ現指導部は、周氏が“落馬”した直後に、第18期中央委員会第四回全体会議(四中全会)を10月に開催することを発表しました。四中全会は党の重要問題を議論・採択する会議で、発表された概要には、「法による国家統治の全面的推進に重要な問題を検討する」と記されています。

指導部としては、周氏の“落馬”を「法治主義」の議論を進めるための第一歩にしたいのでしょう。そもそも、どんな立場の人間でも公平に処罰する法治主義が機能していれば、反腐敗運動などと銘打ってキャンペーンを展開する必要はない。周氏の一件を契機に、こうしたシステムを構築しなければならない――というロジックです。国民の政治不信を和らげ、さまざまな改革を実行していく上で、法による支配という問題は避けて通れません。

もちろん、実際に法治主義という制度がどこまで根づき、機能するかについては疑いを持つ人が多い。ぼく個人も、これまでの中国の歴史を鑑(かんが)みるにつけ、その点に関しては悲観的にならざるを得ません。

ただ、権力闘争という意味でいえば、四中全会は習主席にとってひとつの正念場です。ここで法治主義の問題が深く議論されるなら、それは習主席が真の意味で権力を掌握したことを意味する。逆に、法治主義というテーマが骨抜きにされ、社会主義や毛沢東(もうたくとう)思想などイデオロギーの議論に終始してしまった場合は、習主席が反対勢力の逆襲に遭ったと推測できます。これだけ重要なイベントに無関心でいられるというなら、その理由を逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。ハーバード大学フェローを経て、現在はジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員。『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(集英社)など著書多数。中国のいまと未来を考える「加藤嘉一中国研究会」が活動中!




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