人生一度きりだから死に殉ずる…世界中の若者が「IS(イスラム国)」に惹かれる巧妙なロジックとは?

週プレNEWS / 2014年9月29日 6時0分

支配地域のイラクやシリアのみならず、欧米各国からも多くの若者たちがメンバーとして参加しているイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(以下、IS)。

ISに参加している欧米人の多くは、白人社会で暮らしていたムスリムの移民2世、3世の若者たちだ。そしてそれが、各国の治安当局が特に危惧する問題となっている。

現在、アメリカを中心とする「欧米世界」と、シリアからイラクにかけて広大な地域を支配するISとの戦いは、ここにきて“次の段階”に突入している。中東地域に滞在するアメリカ人やイギリス人を人質として拘束、その斬首(ざんしゅ)映像を公開するなどして欧米を挑発するISに対し、アメリカは8月上旬からイラク領内での空爆を継続。そして9月22日、ついにISの本拠地があるシリア領内でも空爆を開始した。

アメリカのオバマ大統領は対ISの軍事作戦について、「広範な有志連合」によるものと強調。それに対し、ISはインターネットを通じて「敵対する連合に加わった国々の市民は、民間人だろうが軍人だろうが、アラーの名の下に殺せ」と呼びかけている。

各地のイスラム過激組織は、ISの呼びかけに応じて(あるいは、この機に乗じて)行動を開始。アルジェリアではフランス人観光客が殺害され、フィリピンでも4月から拘束されているドイツ人夫婦の殺害予告という事態が発生した。

しかも、ISには欧米のパスポートを持つメンバーが多い。その数は約3000人といわれ、彼らがテロ目的で中東から“帰国”する可能性が指摘されている。

9月18日、オーストラリア連邦警察は、テロ計画容疑でIS関係者とみられる15人をシドニーやブリスベーンなど同国の各地で拘束。彼らが中東から戻ってきたのか、自国でISと連携し活動していたのか、両者が交じっていたのか、その点は公表されていないが、IS本部から「誰でもいいから殺して、映像を公開しろ」という指示を受けていたという。

また23日には、ISの旗を所持していたとして事情聴取を受ける予定だった18歳のアフガニスタン系オーストラリア人男性が、警官ふたりをナイフで刺して当局から射殺された。

彼らはなぜ、ISの思想に共鳴するのか? 国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏は次のように語る。




「差別、格差、貧困。いろいろな理由で現状に不満を持ち、絶望を感じる若者たちには信じられる大人がいないんですよ。

例えば、アラブ系の親を持つイギリスの若者が、家族でイスラエルによるガザ空爆のニュースを見る。親は『イスラエルはひどい』と言いながら、自分は何もせず、そのイスラエルを支持するイギリスの社会で、白人からの差別にも甘んじて生きている。大人の妥協は汚い、どこまで卑屈なんだ、と。そういう多感な時期の若者に、ISははっきりと“滑走路”を示すんです。おまえには居場所がある、とにかくここから飛べ、と。

ISがネットで流している殺害映像は、見た者に圧倒的なショックを与えます。自分の常識を超えている。じゃあ、なぜこんなひどいことをするのかとネットで調べまくったら、イスラエルによる空爆で殺された子供の映像が出てきた。イスラエルのバックにはアメリカがいる。イスラエルに殺された子供に罪はないけど、少なくともISには欧米人を殺す理由がある。そうか、これが真実なんだ!

……こんなふうに、点と点がどんどんつながっていく。もちろん現実の世界はもっともっと複雑ですが、ロジックの飛躍がどんどん起きていく。

もう少し引いた視点から見ると、ISは近代国家に代わるアイデンティティを再構築しているともいえます。近代国家は、自らが生んだ資本主義とグローバリズムによって弱体化しつつある。それに対し、ISには憲法などなく、流動的で、戦略だけがある。信仰に反する者は皆殺し。信仰があれば、民族も出身も関係なく平等。少なくとも外からはそう見える。

ISのプロパガンダ戦略は相当練られています。斬首映像にしても、ライティング、複数のカメラによるアングルチェンジ、処刑役のセリフなど、どうやれば“響く”のか熟知している。一方で、自分たちの日常生活を“ゆるい感じ”の映像で紹介したりもする。

面倒見のよさそうなお兄ちゃんが、『ここに来たら、あとはなんとかするから』と語りかける。SNSで気軽に質問に答えつつ、『YOLO(You only live once.人生一度きりだから楽しもう)』という流行ワードをもじって、『YODO(You only die once.一度しか死ねないんだ、さあ殉教しよう)』と呼びかける。そうして揺れる若者を、欧米各国で生まれ育った原理主義者がモスクでたきつけるケースが多いようです」

こうして中東に集まった“純粋な若者”が、現地で軍事訓練を受け、“悪の欧米帝国”と戦う戦士になるのだ。

迷える先進国の若者が次々とシンパシーを感じてその身を殉じていく……日本人も対岸の火事と笑っていられるだろうか?

(取材/小峯隆生)

■週刊プレイボーイ41号「各国当局がマジで最警戒 自宅警備テロリストHGTはキミかもしれない……!?」より

 

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