アギーレジャパンへのオシムの言葉(2)「今はとにかく指揮官を信じることだ」

週プレNEWS / 2014年10月18日 6時0分

アギーレ新監督の下、2018年ロシアW杯に向け新たな歩みを進めるサッカー日本代表。監督就任後4試合目となるブラジル戦は0-4と完敗に終わってしまったが、10年以上にわたって日本のサッカーに関わり、世界のサッカーシーンにも精通する名将オシムの目に、その姿はどう映っているのか。ジャーナリストの木村元彦による直撃インタビュー、第2回!

■アギーレは今後も若手を抜擢する

―アギーレを選んだ日本サッカー協会の判断についてはどう思いますか? 日本代表の監督就任時に「日本サッカーを日本化する」と言ったあなたの時代からの継続性を感じることはできますか?

オシム どんな新しい経験でもつながっていくし、それはよいことだ。

これまでもアギーレはサッカー選手として、そして監督としてオーソリティ(権威)を持っていたし、メキシコの代表チームとサッカー協会に対して、とても強い存在だった。

その彼が日本に来た。本田、香川、長友などがチームの中心を担い、これからさらに若い選手が選ばれていくだろうが、そこに規律あるプレーを求めるのにはよい人材だ。

例えば、若くて才能を持っている選手が出てきたとしよう。周囲は期待を込めてもてはやし、「おまえはうまいから自由に、自分のしたいようにプレーしろ」ということではいけない。今のサッカーは、うまい選手ほどチームのために走り、献身を厭(いと)わない姿勢が求められる。特に、自分の国のドレス(代表ユニフォーム)を着ることに対してはそうする義務がある。

君もわかっていると思うが、代表監督が代わるということは、下の世代も含めて、その国のサッカー選手の行動に大きな変化をもたらすことになる。この変化が進化になることが重要だ。もちろん、ネガティブな変化もたまにあるだろうが(笑)。

今はとにかく指揮官を信じることだ。ブラジルW杯前後に私が日本メディアから受けた、日本代表に関するインタビューの印象は、私にザッケローニ批判をしてほしいのだなと感じる内容のものがほとんどだった。最初は万事うまくいくと監督を天の上まで持ち上げておいて、最後は手のひらを返して見捨てる。そして、失敗のすべてを監督のせいにする。それではいけない。




―代表の監督はそうして任期ごとに追われ、また新生・日本代表がぶち上げられる(苦笑)。アギーレはまだ就任して日が浅く、メディアとの関係は甘い“ハネムーン”の時期ですが、選手の世代交代も含めて、アギーレがこれからやろうとしていることをどのように見ていますか?

初戦のウルグアイ戦(9月5日)は0-2で負けましたが、無名のDF坂井達弥やFW皆川佑介らを初招集し、先発させました。思い出したのは、シュワーボ(オシムの愛称)が日本代表監督に就任して迎えた最初の試合(06年8月のトリニダード・トバゴ戦。2-0で勝利)。やはり栗原勇蔵や中村直志、鈴木啓太、山瀬功治など多くの若い選手を初招集し、起用しました。

当時と共通しているのは、W杯の惨敗直後の就任だったということ。Jリーグに刺激を与えるという意味もあったと思いますが、この意図を推察するとどうでしょう?

オシム 先を見据える上で、若い選手を呼んでいくということは重要なのだ。アギーレに限らず、代表監督は意図を持って若い選手を採用している。どういう意図かというと、長い間チームを同じメンバーによって機能させるということだけではなく、チームが若ければ若いほどその監督のビジョンを実現させやすいからだ。

例を挙げると、ブラジルW杯で優勝したドイツだ。ドイツはブラジルW杯に行くにあたり、チームを非常に若くした。若い選手は当然ながらモチベーションが高く、彼らは年上の選手よりも素直に監督の指導に耳を傾ける。(監督の)ヨアヒム・レーヴは自分のビジョンに合わせたプレーを、選手にさせることに成功したというわけだ。

アルゼンチンとのファイナルで決勝点を挙げたMFゲッツエは22歳。MFミュラー(当時24歳)もMFクロース(24歳)も成熟したポリバレントな(複数の役割をこなせる)選手だが、実はまだ若い。彼らも能力だけでなく、代表チームの規律のために努力したから栄光をつかんだ。成功するために才能はとても重要だが、今のサッカー選手にはその上でたくさんの努力が求められる。

その点、アギーレは、これまでのメンバー選考からもわかるように、おそらくJリーグでの若い才能に注目して、今後も抜擢(ばってき)していくことだろう。




―所属クラブで定位置を確保できていない無名選手の抜擢には異論もありますが、それについてはどう思いますか?

オシム そのことについて語るなら、マルセロ・ビエルサ(現マルセイユ監督)がチリ代表監督時代(07~11年)にやったことがユニークだ。

彼はチリのサッカー協会と契約を結ぶ際、A代表の選手選考において全権をもらうとともに、次世代の選手の育成や選出にも関与できるという条件を求めた。

ビエルサは攻撃的で運動量を重視する自分のサッカーをするのに適した選手を選び、アグレッシブで将来性のあるチームをつくった。メディアの批判に対しても頑として譲らず、信念を貫き、南アW杯では62年大会以降、W杯での勝利がなかったチリをベスト16に導いた。

今、世界を見回すとクオリティが高いのは皆、ビエルサの影響を受けたチリの選手たちだ。もしアギーレが似たような軌跡をたどれば、きっと似たような成功を成し遂げるだろう。

*明日配信予定の第3回に続く!

●イビツァ・オシム




1941年生まれ。90 年イタリアW杯で監督としてユーゴスラビア(当時)代表をベスト8に導く。2006年から日本代表を率いるが、07年秋に脳梗塞で倒れて辞任。11年4月からボスニア・ヘルツェゴビナサッカー協会・正常化委員長として同国のW杯初出場実現に尽力した

■週刊プレイボーイ43号「アギーレジャパンへのオシムの言葉」より

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