日本の流通網が崩壊? 過酷勤務による深刻な“トラックドライバー2015年問題”で年末にも大混乱!

週プレNEWS / 2014年10月30日 6時0分

ここ数年、物流業界内で不安とともに語られてきたフレーズがある。“トラックドライバー2015年問題”だ。

出典は、国土交通省が2008年に出した、物流業界の労働力確保対策に関する試算。それによると、「2015年にトラックドライバーが全国で14万人不足する」とある。現在、トラックドライバーの人口は84万人で、ピークである06年の92万人と比較すると、この8年で8万人減っている。

実際、人材不足の状況はどうなっているのだろうか。全日本トラック協会の広報担当者が解説する。

「私ども全日本トラック協会が今年行なった運送業者への調査では、56.8%が『労働力不足を実感している』と答えました」

国交省の試算ほどではないにせよ、トラックドライバー不足は進行しているようだ。物流コンサルタントとして、運送業界の現場を見ている田村隆一郎氏がこう話す。

「人手不足は深刻で、商品が相手先に届かない未着や、遅配が起きています。今年2月、3月の消費増税前の駆け込み需要で物流量が増えたときに、商品を運ぼうにもトラックが足りないという事態が頻発しました。2015年問題は、すでに起きていると言ってもいい」

人手が足りなければ補填すればいいように思えるのだが、食品物流を専門に扱う、茨城乳配の吉川国之副社長が暗い表情で語る。

「人員を増やそうにも、トラックドライバーの給料がどんどん下がっていて、長時間の過酷な仕事を安い給料でやるくらいならほかにいくらでも働く場所はあると、担い手が集まらなくなってしまったのです」

トラックドライバーの所得額は全産業平均より53万円も低いが、労働時間は516時間も長い(厚労省「平成25年賃金構造基本統計調査」より)。これでは人が集まらないのも当然だろう。

中央自動車道のあるサービスエリアで休憩していた長距離トラックのドライバー(50代)も、昔ほど稼げないとボヤく。

「今から20年くらい前は、それこそ東名高速を130キロで走って、前のトラックとの車間距離もほとんどとらずに何時間も運転しっぱなしだった。危ないし、神経を使うから疲れたよ。でも、その分いっぱい走れたから金を稼げた。でも今はそうはいかない。うちの会社も50歳以上のおじさんばっかりだよ……」

40代の長距離トラックドライバーもうなずく。

「みんな建設業界に移ってる。アッチのほうが給料も全然いいし、夜はちゃんと寝れるしね」

物流業界はこれまで徹底したコストダウンを図ってきたが、シワ寄せのほとんどがドライバーの賃金に降りかかってきた。賃金が下がった原因を見ていくと、物流業界がたどってきた厳しい現実が見えてくる。

前出の全日本トラック協会・広報担当者が解説する。

「小泉政権の規制緩和で、物流業界にも新規参入が起こり、需給バランスが取れていた約4万社から6万2000社にまで増加しました。しかし物流量は変わりませんから結果的にパイを取り合って価格勝負が激しくなった。運賃を安くしようと各社、人件費を削ったわけです」

さらにここ数年、業界を圧迫するのが輸送コストの高騰だ。

「まず燃料代の高騰。10年前は1リットル当たり80円程度だった軽油が、現在は120円。10年で1.5倍です。車両の購入価格も、資材の高騰や安全基準を満たす装備の取り付け義務などで高くなっています。そしてアベノミクス以降、高速道路の深夜割引が大幅に縮減されました。こうした輸送コストの増加分を運賃に換算すると、首都圏の4t車が一日稼働した場合、08年に比べて運賃は平均で約4000円高くなります」(前出・吉川氏)

これだけ輸送コストがかさめば、運賃をアップするのが自然なはずだが―。

「実質運賃は1円も上がっていません。運送業は荷主との相対取引で運賃を決めていますから荷主が納得しないと運賃は上げられない。荷主は物流コストを低く抑えたいので運賃値上げは受け入れ難い。要するに、末端の運送業者が泣く泣くコストの増加分を吸収するしかないんです。そこには当然、人件費のカットも含まれる。その結果、トラック運転手の給料は下がり続けたのです」(前出・吉川氏)

さらに追い打ちをかけるのが、労働時間規定の厳罰化だ。前出の全日本トラック協会の広報担当者が話す。

「一昨年、関越道で起きた高速バスの事故を受け、今年の1月から国交省が物流事業に対しても労働時間の規定に違反した場合の厳しい罰則を設けました」

規定はかなり細かく定められており、一日の拘束時間は原則13時間、連続運転時間は4時間以内などとされている。これに違反した場合、事業者は営業停止などの処分を受ける。

これまで長時間、長距離の走行をドライバーに強いる“企業努力”でしのいできたが、その道も断たれてしまったわけだ。

「厳罰化でコストがさらにかかります。例えば、北海道で水揚げされた生サンマを関西へ届けるのに、以前なら3日で可能だったのが4日かかるという事態が起きています。それを解消するには、ふたり体制にするなど結果的に人件費が余計にかかってしまう。もはや限界と、荷物の受け入れを断る業者も出てきています」(前出・田村氏)

さらに前出の吉川氏は、こんな暗い見通しも示す。

「年末年始の需要増大で未着や遅配は必ず起きます。人がいないのでトラックが動かせない。年末にはトイレットペーパーや食品、雑貨類、大掃除の掃除用具なども特需になりますから、小売りはセールをかけますが運べるトラックがないので商品が不足する可能性があります」

そうしたなか、9月に業界大手の日通が運賃の一斉値上げを発表した。どん詰まりと思われた最中でのニュース。業界はこの動きをどう受け止めたのか?  前出の田村氏が語る。

「取引先との価格交渉の材料にはなるでしょう。しかし大手の日通と違い、中小業者は契約打ち切りを恐れ、すぐに値上げを切り出すのは難しいところもある。厳しい戦いは続きます」

今年も残り2カ月。2015年問題の打開策は、いまだ見いだせないままだ。

(取材・文/頓所直人)

■発売中の週刊プレイボーイ45号「今そこにある“ドミノ値上げ”同時多発クライシス」より(本誌では、4連発で超ハイコストクリスマスなど他の危機も大検証!)

週プレNEWS

トピックスRSS

ランキング