沖縄県知事選直前対談 白井聡×赤坂真理「沖縄こそがあるべき日本の姿。怒りを忘れた本土は国として死んでいる!」(PART1)

週プレNEWS / 2014年11月12日 6時0分

『永年敗戦論』の白井聡氏と『東京プリズン』の赤坂真理氏。「沖縄は特殊なのではなく、日本の本質的な姿」という共通の見解を持つ

辺野古への基地移設問題を争点とし、11月16日に投開票が行なわれる沖縄県知事選。結果次第では今後の日米関係にも影響が出かねない大事な選挙だが、注目すべきはそれだけではない。

この選挙には戦後の日本が抱える問題が凝縮されているのだ。それは何か。戦後日本を考える上で必読の書、『永続敗戦論』の著者で政治学者の白井聡氏と、『東京プリズン』を書いた作家の赤坂真理氏が語り合った。

* * *

―白井さんの『永続敗戦論』、赤坂さんの小説『東京プリズン』はともにベストセラーとなりましたが、おふたりともそこで「日本の戦後」、特に日米関係を再検証しています。おふたりは「沖縄」の存在をどんなふうに感じられていたのでしょう?

白井 沖縄が置かれている苦境とか歴史は、知識としては知っていましたが、「日本にとって沖縄問題とはなんなのか」は『永続敗戦論』を書いている過程でわかってきました。「沖縄は気の毒だ」「本土の人間として申し訳ない」という言葉をよく聞きますが、気の毒だとか申し訳ないというのは結局「他人の苦しみ」でしかない。でも、実はそうじゃない。沖縄の姿は、われわれ日本人が置かれている状況が濃縮されて極端な形で出ているのだ、ということがあの本を書きながらわかってきたんです。

―赤坂さんは中学時代にアメリカに留学され、日米両国の違いに戸惑うなかで、日本の近現代史を見詰め直す経験をした。そのことが『東京プリズン』につながったそうですが、その執筆中、沖縄の存在については意識しましたか?

赤坂 沖縄は、具体的に運動などに関わったことはないのですが、歴史や祭祀に常に関心があり、『太陽の涙』(岩波CoffeeBooks)という作品に取り入れたことがあります。沖縄らしき架空の群島(のさらに離島)が、本島や国の政府やさらに上位の大国間の思惑の中で翻弄(ほんろう)され、ついには「夢の」核融合炉を建設され、しかも大国のエネルギー奴隷になる……という話です。それが土地の神話仕立てで、美しい絵(大島梢さん)とともに描かれています。

3・11の3年前くらいに書かれたので、自分で「予言的?」とかも思ったのですが、今になるまで、怖いくらいに(笑)話題になっていません。

また、「極値には本質が宿る」とも信じていたので、「沖縄は特殊なのではなく日本の本質的な姿だろう」とは感じていました。

だから白井さんが『永続敗戦論』で書かれていたように、本土では「終戦」という言葉にすり替えられ見えないようにされている日本の「敗戦」が、沖縄では米軍基地問題という目に見える形で永続しているというのは、すごく共感できましたね。

白井 先日、あるシンポジウムに呼ばれて沖縄に行ったのですが、そこで印象的だったのは、沖縄のどこを回っても「基地との共存」みたいなスローガンを見かけることはないんですね。これは原発立地自治体との大きな違いだと思います。

原発立地自治体ではいまだに原発問題が選挙争点にすらならない。これは異様なことだと思いますが、彼らの世界観のなかではそれが普通になっている。

―先日の福島県知事選挙でも「原発問題」は争点にならなかったし、鹿児島の川内(せんだい)原発も地元自治体が再稼働を受け入れる意向を示しましたね。

白井 この違いがどこから出ているのかと考えると、僕は「自尊心」の問題だと思うんですよ。

原発と米軍基地を単純には比較できないけれど、どちらも「迷惑施設」であることに変わりはない。つまり、原発立地自治体も、米軍基地を抱える沖縄も都会の平和と繁栄を支えるために「犠牲」にされているという現実がある。要は差別的構造があるわけですが、「自分たちは差別されている」と認めるのはキツイし自尊心を傷つけられる。

そこで原発立地自治体はどういう選択をしたかというと、「自分たちは差別なんかされていない。都会とは別の形で日本の繁栄に貢献しているんだ」という「物語」をつくった。

自分たちが一方的に犠牲になっているわけじゃない。原発があることをもっと前向きにとらえようという「共存」の物語を選び、それが「抱擁」にまでいってしまった感じですよね。

赤坂 戦後の日本が「敗北を抱きしめて」(*)無意識にアメリカへの従属を受け入れてきたみたいに、原発との共存は「原発を抱きしめて」なんだ……。それ、とてもよくわかる気がする。

*アメリカの占領軍兵士ジョン・ダワーが敗戦後の日本人の苦難の歩みを描いてピュリッツァー賞を受賞したノンフィクション作品のタイトル

白井 一方、沖縄は何が違うかというと、とにかく絶対に基地を抱きしめなかったし、「経済的に依存しようがなんであろうが、共存なんて絶対言わない」という一線を守り続けてきた。それが今回、僕が沖縄に行って感じた一番強い印象ですね。

―つまり、沖縄は基地問題という「差別」を通じて、ずっと「敗戦」を直視し続けてきたからこそ、「敗戦」を見ないフリして歩んできた本土とは違って本質が見えているのだと?

白井 そうですね。だから基地受け入れをやってきた沖縄の保守の人たちも、決して「共存」とは言わなかった。

「基地を引き受けることで自分たちが日本の安全保障の礎(いしずえ)となり、それはアジア全体の平和に貢献している」という理屈というか、「物語」だってつくろうと思えばつくれるわけです。

現に本土の人間、特に日米安保村の連中というのは、そういった理屈を一生懸命つくって垂れ流している。しかし、沖縄の人は仮に基地容認派であっても、こんな理屈は受け入れない。

赤坂 原発と違って「自分たちが進んで基地を引き受けてやった」みたいなごまかしはしていないということね。自分が自分に語り聞かせる物語って、かなりヤバイものがあるって、これに限らず思います。本質が変質していく。

●白井聡(しらい・さとし)




1977年生まれ、東京都出身。早稲田大学、一橋大学大学院、日本学術振興会特別研究員等を経て、現在、文化学園大学助教。『永続敗戦論』(太田出版)は今年の石橋湛山賞を受賞した。今年は『日本劣化論』(笠井潔氏と共著、ちくま新書)を発表

●赤坂真理(あかさか・まり)




1964年生まれ、東京都出身。2012年に発表した小説『東京プリズン』(河出書房新社)で自身のアメリカ留学体験をもとにして戦後の日米関係を考察したことで話題に。今年は『愛と暴力の戦後とその後』(講談社現代新書)でより幅広く戦後史を考察した

●PART2は11月15日にアップの予定です。

●全文は発売中の週刊プレイボーイ47号「沖縄県知事選直前対談 白井聡×赤坂真理」でご覧いただけます。

(取材・文/川喜田 研 撮影/本田雄士)

 

 

 

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