加藤嘉一「ようやく注目され始めた『ハラール』をもっと日本社会に広めましょう!」

週プレNEWS / 2014年12月16日 16時20分

世界の全人口の2割以上を占めるイスラム教徒。彼らを日本の新たな“お客さん”とするために、ハラールの存在を多くの日本人に知ってもらいたい。

日本政府観光局の調べによると、昨年訪日した外国人の数は約1000万人。それに対し、今年は10月までに1100万人を超え、日本への観光客が確実に増えています。観光業の強化は、日本経済にとって重要な課題といえます。

そこで、ぼくが最近気になっているのが「ハラール食品」です。

ハラールとは、ムスリム(イスラム教徒)が守るべきイスラム法において合法とされるものや行為を指す言葉です。例えば、ムスリムは宗教上、豚肉を食べたりアルコール類を飲むことが禁じられており、豚以外の肉も、戒律(かいりつ)に沿った方法で加工されたものしか口にできない。非イスラム圏を旅するムスリムは、食事面で非常に苦労すると聞きます。

そういった人々のために、「これは食べても大丈夫」と証明されているものがハラール食品です。最近は日本でも新たなビジネスチャンスとして注目されており、11月26、27日には日本で初となる「ジャパンハラールエキスポ」が千葉の幕張メッセで開催されました。

ムスリムというと、イスラム国など紛争やテロ関連ニュースのインパクトが強いアラブ中東地域を思い浮かべ、物々しいイメージを持っている方が多いでしょう。しかし、実際にぼくが現地を訪れて接した多くの人々は優しく、アメリカへの反発こそ少なからずあるようでしたが、日本に対してネガティブなイメージを持っているわけではない。むしろ親日的な人が多い印象です。

また、イスラム教を信仰する人々が住んでいるのはアラブ中東ばかりではない。というより、実は世界のムスリム人口の半分以上はアジア・太平洋地域に集中しているのです。例えば東南アジアでは、シンガポールやマレーシア、ブルネイ、タイ。世界第4位の人口(2億4700万人)を誇るインドネシアに至っては、その8割以上がムスリムです。当然、これらの国にはハラールが広く浸透しており、例えばぼくが以前訪れたマレーシアの港湾都市マラッカにも、「当店はハラール認定です」という看板を掲げる飲食店が多くありました。

東南アジアの国々は経済発展のさなかにあり、日本への旅行者も年々増えている。彼ら、彼女らがもっと安心して訪日できるようにするためにも、ハラール食品を使用したレストランの普及や、礼拝ができる場所の設置などインフラ面の設備を早急にやるべきでしょう。

思い返してみれば、ぼくは北京大学在学中、無意識にハラール食品(中国では「清真料理」といいます)を食べていました。ウイグル族の人々は多くがムスリムで、彼らの経営するレストランに週2、3回通っていたのです。

特徴は、まずヘルシーなこと。脂っこい一般的な中国料理と比べシンプルで、日本の女性も気に入ると思います。そして安全性の高さ。戒律に沿った厳しい管理がなされており、レストラン内は清潔でした。価格的にはやや割高ですが、今でも北京に行けば食べに行きます。

日本でハラールの知名度を上げることは、「異なる文化を持つ人々の存在」を日本人が意識することにつながります。残念ながら今の日本は、国際社会から「多様性をよしとしない国」と見られている。同じ文化や生活様式を持つ人とのコミュニケーションは楽かもしれませんが、それでは街づくりや産業面などでイノベーションが起こりにくい。多様性を重んじ、受け入れる努力を社会全体がもっと行なうべきです。

ハラールを通じて異なる民族・文化を尊重し、観光客を誘致し、かつ日本人の新たなマインドセットをつくる。21世紀の国際社会で生きるための最低限のマナーであり、かつ有効な国家戦略だと思います。それでも「違う文化など無視していい」というなら、その理由を逆に教えて!!

●加藤嘉一(KATO YOSHIKAZU)




日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。ハーバード大学フェローを経て、現在はジョンスホプキンス大学高等国際関係大学院客員研究員。最新刊は『たった独りの外交録 中国・アメリカの狭間で、日本人として生きる』(晶文社)。中国のいまと未来を考える「加藤嘉一中国研究会」が活動中!




http://katoyoshikazu.com/china-study-group/

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