終わらないリコール大問題、タカタ“殺人エアバック”は国内でも走っている?

週プレNEWS / 2014年12月25日 6時0分

命を守るはずのエアバッグが「凶器」になるという皮肉な事態を引き起こしている自動車用安全システム専門メーカー、タカタのエアバッグ問題

2008年、アメリカで最初に行なわれた大規模リコールから6年以上経た今も、根本的な事故原因は解明されておらず、たび重なるリコールにユーザーの不安は募る一方。日本国内を走るクルマに恐怖の“殺人エアバッグ”が搭載されている可能性はないのだろうか?

■暴発事故は数年前から廃車工場で多発?

エアバッグ作動時に「インフレーター」と呼ばれるガス発生装置が爆発し、飛び散った金属片によってアメリカやマレーシアなどで、これまでに5件(6件という説も)の死亡事故が発生した。アメリカ議会上院でも責任追及が始まるなど、ここにきてタカタのエアバッグ問題は深刻さを増している。

08年以降、タカタのエアバッグに関する全世界でのリコール対象車は1700万台を超え、今後、アメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)による強制リコールが全米で行なわれれば、その数は2000万台を超える見通しだという。

これと並行して、アメリカではリコール対象車の所有者や事故被害者が「エアバッグに問題があることを知りながら放置し、安全に関する重要な情報を隠していた」として、タカタとトヨタやホンダなどの自動車メーカーを相手取った集団代表訴訟が準備されており、賠償額は最大で20億ドル(約2300億円)に及ぶともいわれている。

だが、恐ろしいのは、これまである意味「対岸の火事」だと思っていたタカタのエアバッグ事故が、今や日本のユーザーにとっても人ごとではなくなってきたということだろう。

14年11月、岐阜県の廃車工場で廃車作業中にエアバッグの異常爆発が発生。この岐阜の事故を受けて、トヨタが国内と中国で合わせて約19万台、ホンダ、日産、三菱などのメーカーも国内で計26万台の「追加リコール」を発表した。




岐阜の工場で事故を起こしたのはタカタ製のエアバッグを搭載したトヨタの「WiLL サイファ」。この廃車工場では、このクルマがすでに公表されたタカタ製エアバッグのリコール対象車の型番リストに含まれていなかったことから、通常の手順でエアバッグの爆破処分をしようとした。ところが想定をはるかに超える爆発が起こってフロントガラスが大破、車内には多くの金属片が飛び散ったという。

自動車評論家のA氏によれば、「廃車業界では、もう何年も前から一部のクルマでエアバッグが異常爆発するってウワサだったらしいよ」という。

実際、前述の事故が起きた岐阜の工場でも、10年には日産の「キューブ」、12年8月にはホンダの「フィット」で同様の異常爆発が発生している。

さらに12年にはほかの廃車工場でも合計6件の暴発事故が発生しており、それがきっかけで13年4月には国内メーカー3社が合計300万台に及ぶ大規模リコールを行なった。だが、14年11月の岐阜で新たにエアバッグが暴発した車両は、このときの「リコール対象車リスト」に含まれていなかった…。

つまり、タカタも自動車メーカーもタカタ製エアバッグを装着した、どのクルマが安全で、どのクルマが危険なのか? その時点では把握できていなかった可能性があるのだ。

■事故原因が不明では何が危険かわからない

本誌が国内自動車メーカー大手7社にタカタ製エアバッグの装着比率を問い合わせたところ、多くのメーカーが「調達に関わる問題なので…」と正確な数字を答えてはくれなかったが、「現在、リコール対象となっている以外のクルマについては問題ありません」というのが各社に共通した認識だった。

だが、本当にそうだろうか。問題は肝心のタカタがいまだに事故の根本的な原因を把握できていないという点だ。

14年11月20日にタカタの清水博シニア・バイス・プレジデントとホンダノースアメリカの上級副社長による米上院での説明によれば、死亡事故の原因について「調査中」としつつ、現時点で考えられる可能性として使用年数、高温多湿な環境での継続使用、製造過程における問題の3つを挙げ、「ほぼすべての事故はプエルトリコや南フロリダなどの高温多湿地域で、6年以上を経過した車両で起きている」と主張。




全米でのリコールを求める米当局に対して「高温多湿な地域でのリコール対応に集中すべき」という立場を貫いている。「製造過程における問題」については、「ガス発生剤の加圧力不足、過度な吸湿が原因」との見方を示すものの根本的な原因については「解明に取り組んでおります」(タカタ広報部)として明らかにしていないのだ。

タカタは「04年頃からエアバッグの問題について把握していたのではないか」との米上院からの指摘に対し、問題を把握したのは05年と主張しているが、それが事実だとしても、すでに9年近い時間が経過していることになる。

それにもかかわらず、いまだに事故原因が「調査中」ということでは、エアバッグの供給を受けている自動車メーカーも含めて「危険な車両の特定」や抜本的な対策など不可能だろう。

「原因の調査はメーカーではやりません。基本的に回収したものをタカタに送ります。早く原因を究明してほしいという気持ちですが、そう簡単に原因はわからないと思います。製造過程の問題か、部品自体がいけないのか。設計がダメだとシャレにならない。すべてをリコールするにしても部品調達が大変で、部品ができるまでお客さんを待たせることになる。代車を何十万台も用意できるのか?っていう話になる」(某自動車メーカー・B氏)

もちろん、アメリカやマレーシアで起きた事故と日本の廃車工場で起きた暴発が「同じ原因」だとは限らないし、現時点で日本では通常のエアバッグ作動時に異常爆発によるケガや死亡事故は報告されていない。

だが、タカタが今後もこの問題に関する情報を積極的に明らかにせず、さみだれ式にリコール対象車が広がっていけばユーザーの不安は広がるばかり。「今、国内を走っているクルマは絶対に大丈夫です」なんて誰が言い切れるだろうか?

命を守るためのエアバッグに「殺される」なんて、それじゃあ死んでも死にきれない。タカタには一刻も早い原因究明、抜本的な対策、そして十分な情報開示をお願いしたいモノである。

(取材・文/川喜田 研)

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