「バカになったか、日本人?」橋本治が自民大勝とゾウリムシみたいな日本人をぶった斬り!

週プレNEWS / 2014年12月26日 6時0分

最新刊「バカになったか、日本人」を発売した橋本治

説明できない総理大臣、進まない復興と原発再稼働や集団的自衛権の議論、強引な解散・総選挙…。

最新刊『バカになったか、日本人』で、ここ数年の日本の「なんかヘンだな」に斬り込んだ、橋本治。まともな議論ができなくなった日本人の姿をあぶり出した著者が語る“自民大勝”と日本の未来―。

―衆院選の結果はどう受け止められましたか?

橋本 まあ最初からわかってたことだし、マスコミがね、そうやって「自民圧勝」「自公3分の2で大勝」とかって煽(あお)るわけだけど、自民党は前回より2議席減らしてるわけでしょ。そこはもうちょっと大声で言っていいんじゃないかと思いますね。

―沖縄では、4選挙区すべてで自民党が惨敗しましたしね。

橋本 まあ、比例で復活当選しちゃったけど、沖縄が「ノー」を上げたってことは、今後もっと安倍政権ってひどくなるだろうから、そういう声がほかの地方でも上がってくるんじゃないかなぁと思うんですけどね。

―とはいえ、投票率は過去最低をまた更新しました。当然、若者の投票率も低いですし。

橋本 若い男なんて、自分の趣味と快楽のことしか考えてないしねぇ。香港の学生が選挙前に送ってきたメッセージが象徴的ですよ。「日本は自由に投票できる権利があるんだから、それを無にしないでください」って。

―当事者意識がないと。

橋本 それがねぇ、恐ろしいことに今は当事者意識うんぬんをいえる状況でもないみたいなんだよねぇ。今朝見てた番組が“なぜ若者の投票率は低いのか”っていうテーマだったわけ。それで街の声として若い娘が「投票の仕方がよくわからない」って真顔で答えてたんだけど、「投票券を持って投票所に行って、候補者と政党の名前を書き込んで箱に入れるんだ」って、そこから教えなきゃいけないのかってね。でも、何も考えてないのは若者だけじゃないです。

―というのは?

橋本 アベノミクスが地方に恩恵を及ぼしていないっていうのは、地方にいる人はみんな言うわけ。でも、地方で自民党がダダ負けしたかといったらそんなことはない。じゃあ地方で自民党に投票したお年寄りは、いつか自分にもアベノミクスのお金が回ってくるって信じて、神社にさい銭を入れるような気持ちで一票入れたと思う?

―それはないと思いますが。

橋本 じゃあなんで入れたと?

―お年寄りは現時点である程度の年金ももらえてるし、大きな変革は望まないってことで自民に一票入れたとか…。

橋本 そういう考え方をするのはマスコミ人種の欠点です。じいさんばあさんは、そういうことすら考えないからじいさんばあさんをやってられるんだよ。

―じゃあ何を考えて投票を?

橋本 だから、何を考えて、じゃないのよ。この地域は自民を代々応援してきて、「みんなで入れましょう」って決まってるから入れたっていうだけの話。それ以外考えられないじゃん。そういう人たちに「政策の違いを見極めて投票しろ」なんて言ってもムダですよ。生命保険会社を決めるときのほうがよっぽど見極めようとするでしょ。

―……。

橋本 だって、そもそも今回の選挙って争点がないんだもん。争点ないのに、アベノミクスが唯一の争点であるように言ってさ。それって、本当の争点を隠してるようなもんでしょ?

―原発の再稼働、憲法改正、集団的自衛権…本来はいろいろあったはずですよね。

橋本 でも、そこで「集団的自衛権の行使はイエスかノーか?」「特定秘密保護法のどこが問題か?」なんて話を持ち出そうもんなら、普通の人はわかんないから、それを承知した上で、「今回はアベノミクス信任の選挙です」っていう嘘の争点をぶち上げたわけ。

―なるほど。

橋本 だから問題なのは、「争点がないのに、自分の都合のいいように『アベノミクス信任が争点です』って言ってる人を信任していいんですか?」っていう争点の立て方なり議論があってしかるべきなんだけど、それができなくなってることなんです。

「アベノミクス信任の選挙です」って設定されたら、みんなその設定自体を疑うことをしないで、簡単にそれに乗っかっちゃって感情的になって紛糾しておしまい。日本人って、議論の仕方もそうだけど、何が議論の前提になっているかっていうのもわからなくなってるんです。

―どうしてそんな状況に……。

橋本 それはもう、日本人が戦後70年きちんとものを考えることをしないで、じわじわとバカになってきたっていうことじゃないですか。そもそも日本人って、終戦まで政治や民主主義っていうものにまともに関わってないんです。

だから、いきなり戦後を迎えて「政治と関われ」って言われても困るんだけど、「わからない」っていうのを認めたくないから「わからない」の上に「わかってるつもり」を塗り重ねてぐちゃぐちゃになっちゃってる。それがさらにここ数年で加速度的に進んだっていうのはあるんじゃないですか。

―そのキッカケというのは?

橋本 “お笑いブーム”の後に“おバカブーム”っていうのがやってきたときですね。まず“お笑いブーム”で「人はバカなほうが面白い」っていう土壌が作られて、それを見た素人が「じゃあ自分たちもバカでいいんだ」って勘違いした。その結果、バラエティ番組でおバカタレントがもてはやされて、日本人の中に「バカでもいいや」「バカでも萎縮する必要はない」っていう知能の空白状態が作り出されちゃったんだよね。

―「わからない」ことに対して開き直るようになってしまったっていうことですよね。

橋本 だからもう残された道っていうのは、その「わかんない」っていうのを認めるところから始めるしかない。「わかんない」って思うことが出てきたらその「わかんない」って思うことをどう考えたら自分の頭で理解できるかっていうことを徹底的に深めるんですよ。希望を捨てる前に反省しましょうって、そういうことなんですけどね。

―なるほど。

橋本 最初の話に戻るんだけど、自民党が2議席減らしたことや沖縄で自民が大敗したことっていうのは、理屈抜きで「おかしいものはおかしいですよね?」って、まだ辛うじて言えるだけの底力は残ってるのかなって思うんです。

日本人って半分ゾウリムシみたいな生き物だから、とことん追いつめられると動くし、とことん追いつめられない限り動かない。今がそのときなんじゃないかと思いますがね。






『バカになったか、日本人』橋本治(集英社)/「原発再稼働の是非と“はじめに結論ありき”な議論」「集団的自衛権の意味がイマイチよくわからない理由」「憲法改正の議論には“無関心”でいるほうがいい!?」など、震災以降の日本のゴタゴタに斬り込んだ、最新時評・エッセイ集。価格は本体1400 円+税

■橋本治




1948年生まれ、東京都出身。77年に小説『桃尻娘』でデビュー。以降、小説、評論・エッセイ、戯曲、古典の現代語訳など、縦横無尽な創作活動を行なう。近著に『結婚』『失われた近代を求めて』など

(撮影/五十嵐和博)

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