往年の人気漫画『まいっちんぐマチコ先生』再ブーム 寛容な昭和性表現への懐古か

しらべぇ / 2018年10月14日 19時0分

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 昭和に人気を博した漫画&アニメ『まいっちんぐマチコ先生』が近年、実写映画化・舞台化され、漫画のネット版も発刊。再ブームが起きている。

■『マチコ先生』とは

『まいっちんぐマチコ先生』は、漫画家えびはら武司氏による日本の漫画作品、およびそれを原作としたテレビアニメ。 私立あらま学園の女性教師、麻衣マチコとその生徒達が繰り広げるギャグ漫画。

毎回のようにマチコ先生のパンチラ・シーンや乳房が出るなど性的描写が奔放で、一部PTAによる「抗議する会」もできたことは有名だ。

いたずら男子生徒がスカートはめくるわ、胸はタッチするわ、入浴は覗くわ、公衆の面前で全裸にしてしまうわ……なのだが、どんなにひどい目に遭ってもマチコは「いや~ん、まいっちんぐ!」と独特のポーズをとる。「いや~ん、まいっちんぐ!」は流行にもなった。

1980年から学習研究社の少年漫画誌『少年チャレンジ』で連載がスタート。アニメは1981年10月から放映スタート。1980年代前半にテレビアニメを中心に人気を博した。

■90年代後半から人気復活

1990年代後半からかつてのファンを中心にリバイバルブームとなり、単行本の再版のみならず新作も発表され、さらにはDVDドラマ、実写化もされ、ブームは今も続いている。

2000年代に公開上映・発売された映画・DVDは以下の通り。

・2003年3月 ビデオ『実写版まいっちんぐマチコ先生』発売

・同年9月 ビデオ『実写版まいっちんぐマチコ先生 Let’s 臨海学校』発売

・2004年10月 映画『実写版まいっちんぐマチコ先生 THE MOVIE 〜OH!コスプレ大作戦〜』公開上映

・2005年9月 実写映画『まいっちんぐマチコ!ビギンズ』公開上映

・2006年2月 実写映画『まいっちんぐマチコ先生 東大お受験大作戦!!』公開上映

・2007年2月 DVD『実写版まいっちんぐマチコ先生 Go! Go! 家庭訪問!!』発売

・2008年8月 DVD『実写版まいっちんぐマチコ先生 ビバ! モモカちゃん!!』発売

・2009年9月 DVD『実写版まいっちんぐマチコ先生 無敵のおっぱい番長 タイマン勝負で、まいっちんぐ♪』発売

・同年2月 総集篇DVD「実写版まいっちんぐマチコ先生 ベストヒット! パレード!!」発売

1980年初期の作品がかくも長く作品にされているのは、支持されている証だろう。

■「10年後」を描いた映画も公開

マイッチングまちこ先生(©ニュースサイトしらべぇ)

ブームに押され、原作のえびはら武司氏の画業45周年を記念して公開されたのが映画「初恋スケッチ~まいっちんぐマチコ先生~」だ。今年9月8日から渋谷HAMAXシネマにて一週間、公開・上映され、全日満員御礼となった。

設定は生徒たちが学校を卒業した10年後。マチコ先生役は今作が映画初主演となるグラドルの大澤玲美で、元理科教師は女優の華村あすかが演じた。初日舞台挨拶には出演者の他、神村友征監督や原作のえびはら武司氏も登壇。

大澤は、「今回はオーディションで決まったのですが、ずっと家で願っていたので、決まったときはとにかくうれしかったですね。そして、こんなにたくさんの人に作品を見てもらえたことが本当に幸せです」と喜びを語り、「まいっちんぐポーズは鏡の前で何度も練習しました」と述べた。

華村は、「私は今19歳、10代の私が先生役を務めるのがすごく違和感で、ケンタ(元生徒。38歳)と過ごす時間が多かったのですが、私が先生目線で話すのがちょっと…」と違和感を吐露。

えびはら氏は、「きちんとまとまっていて、すごくびっくりしました。いい作品をありがとうございます」と語った。

観客のひとりは、「漫画に比べたらエロは抑え気味ですが、お約束のパンチラシーンがあり、大澤さんのパンツが見えて興奮してしまいました(笑)」と告白。

別の観客は「10年後の設定というのは新鮮で、新境地を拓くもの。マチコ先生を原作にしたいろいろな形の作品ができていくと思うと今後が楽しみです」という。

■舞台化で人気グラドルも出演

映画だけではない。ブームに乗って、2017年から築地ブディストホールで舞台化も実現した。初回は『舞台版まいっちんぐマチコ先生〜臨海学校で人魚伝説!そんな事ってアリエル?の巻〜』。

飛ぶ鳥を落とす勢いの人気グラドル・青山ひかるがマチコ先生役を演じ、雑誌やテレビに引っ張りだこのグラドル・柳瀬早紀も出演した。

8月17〜20日に昼と夕に行われた舞台は連日満席に。 2018年では同じオールで5月3日から6日まで上演で、私も鑑賞した。マチコ役は人気グラドル片岡沙耶が演じ、前年に続いて、柳瀬早紀も出演。 内容はじつに示唆深いものであった。

■タイムスリップするストーリー

マイッチングまちこ先生(©ニュースサイトしらべぇ)

上演が始まるのだが、なぜか幕は降りたまま。まずはあらま学園のヘンタイ教師・山形国男が登場する。そこに、あらま学園のマチコ先生にエッチないたずらをするケン太、タマ夫、金三の三人組が客席通路から出てきて、みんなで主役マチコ先生の登場を待つ。

観客も交えて「マチコ先生」と叫ぶと幕が開いて、お待ちかねの片岡沙耶さんが演じるマチコ先生が出てくる。舞台では新入生歓迎会が開催されようとしている。しかし新入生として現れたのは表情のない不思議ちゃん系の少女が一人だけ。

企画したケン太たちを「胸を張っていいこと」とマチコ先生が励ますと、ケン太たちは「ボイン、タ~ッチ」といってマチコ先生の胸を触り、マチコ先生は「いやーん、まいっちんぐ」と例の所作をする。

すると、舞台では下から風が吹きスカートがなびき、会場はわく。 やがて謎のおばさん科学者と自称助手が登場。じつは新入生である不思議ちゃんの少女はタイムマシンにもなるロボットだった。

挙句にマチコ先生と生徒たち、山形先生にコケダルマ校長、愛知教頭らが諸共1980年のあらま学園にタイムスリップしてしまうのだった。そこで過去の自分たちや若かりし頃の自分たちの母親と会う……というSFな展開となっていく。

■約40年の変化が明らかに

タイムスリップ先となる1980年は、前述の原作漫画の連載が始まった年である。私が生まれた年だ。

この演劇はセクシーなドタバタコメディでもあるが、1980年と2018年とを比較することによって、何が喪われたのか、何が進んだのか…ということを追うテーマになっている。

1980年代のアイテムとして出てくるのは、スカートの裾が長い不良三人組、聖子ちゃんカット風の女子、女子生徒の髪形や服装。懐かしいと感じた方も多かっただろう。

さて、芝居のストーリーだが、最後は「すけべパワー」によって現代に戻ってくるというもの。友情や連帯あり、節度と抑制のきいた性表現であり、軽妙な会話ありで、観ていて飽きることはなかった。そして、この38年間の変化についても考えさせるものであった。

■行きすぎた性表現規制へのアンチテーゼか

マイッチングまちこ先生(©ニュースサイトしらべぇ)

「昭和のWikipedia」と評され、昭和文化に詳しいゲイレポーターにして昭和研究史家の酒井佑人さんはマチコ先生の懐古ブームを次のように分析する。

「昭和は性的表現に寛容な時代でした。ゴールデンタイムであっても、女性のバストやパンツが映し出され、深夜放送は大人の放送がたくさんあった。子供の頃に、親が寝ている時間帯に起き、音を絞って深夜番組を見て、オカズにしていた男子も多いでしょう。

マチコ先生のエッチなシーンを見て、性欲に目覚めた男性だって多い。しかし、今はコンプライアンスの時代。地上波は深夜であっても女性の裸を拝めることがなく、昭和を知る者にとっては、ある種のもの哀しさを覚えるのは当然。

少年誌も当然です。エッチな漫画は一掃され、萌え系エッチの作品であっても乳首を描写できない。エッチ全快のマチコ先生が今も支持されるのは、コンプライアンスにがんじがらめにされた現在のテレビや漫画誌へのアンチテーゼであり、性表現が寛容だった昭和へのノスタルジーです」

■「#MeToo」運動は行き過ぎ

ハリウッド界で始まったセクシャルハラスメント告発運動「#MeToo」との関連を社会哲学に詳しく、政治的メッセージを発信する「才女グラドル」として知られるMasaminだ。

「『まいっちんぐマチコ先生』はセクシュアル・ハラスメントの拡大解釈や『#MeToo』ムーヴメントの暴走が社会問題になっている今日、まさに、それらの壁を溶かす『希望』と『福音』の重奏として観ることができる傑作です。

セクハラはもともと特定の地位や権力を利用して女性に性的関係を迫ったり、性的いやがらせをするもの。フランスで90年代にできた刑法としての『セクハラ禁止法』はこれら地位利用型セクハラを罰するもので、地位を利用して性的関係を迫ること自体が罪とされた。

『#MeToo』も本来は、映画プロデューサーという絶対的権力を得た者が、女優に対して性的関係や性的嫌がらせをしたものであって、これは地位利用型セクハラであって、社会通念上、到底、許されるものではない。

ところがどうしたことか、『#MeToo』追及は暴走し始め、女性の裸やセクシーな姿を描いた芸術にまで標的を定め、攻撃していっている。レースクイーンは廃止に追い込まれる方向になった。

これは、セクハラとは何の関係もなく、守旧フェミニズムによる『女性の性の商品化』批判の復活・焼き直しであり、表現の自由を著しく狭めるものです。

アメリカでは2000年代に女性フェミニスト法学者による『ディフェンディング・ポルノグラフィー』(ポット出版が邦訳を刊行)が上梓され、『性の商品化』批判フェミニズムは理論上、完全に論破されたのです。

もしも、レースクイーンが女性だけだから性の非対称性で許せないというのであれば、ガチガチムキムキ男子の『レースキング』を共演させればいいのであり、女性にとっても、あるいはゲイにとっても、目の保養になるでしょうから、そちらのほうが健全です。

性的表現を許さない動きは、かつてはマッカーシズムに顕著に見られ、欧州では米国流の性的ピューリタニズムとして軽蔑の目を向けられてきた。

そんな社会状況がある中で、『まいっちんぐマチコ先生』が現代に復活したことはたいへんに意義深いものがあります。『これくらいのスケベは許容可能だよね』という風潮になることを願っています」

■カーマニアには「マチコファン」多数

最後に『マチコ先生』について語るのは、先天的なろう者でトランセクシャル女性の芽衣子さんだ。その経験をもとに、全国で手話やろう者、LGBTへの理解・啓発を促進する講演を行っている。

芽衣子さんはタレントの佐藤かよさんを模した痛車(佐藤かよ公認)の所有者で、カーママニアのイベントがあれば、遠くは秋田県まで首都圏から参加するほどの車狂である。

「日本唯一のオールジャンルカスタムカー情報誌『カスタムcar』2016年10月号はマチコ先生が表紙を飾り、特別付録として、まいっちんぐマチコ先生特別描き下しステッカーという超豪華版付録が付いてきました。

70年代から80年代の車を所有するカーマニアはほぼみんな貼っていますよ。カーマニアにはなぜか、マチコ先生ファンが多い(笑)。じつは私も持っていますが貼っていません。希少レアなのでコレクションとして飾ってあります」

11月10日からは東京・R’sアートコートにて「ミュージカル・まいっちんぐマチコ先生~画業45周年だよマンガ道~」が上演される。漫画からアニメ、映画、芝居、ミュージカル。『マチコ先生』の快進撃は今後も続きそうだ。


(取材・文/しらべぇ編集部・及川健二

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