【コラム】鼻血騒動から半年、『美味しんぼ』を読み返す…「唯食論」に感動

しらべぇ / 2014年10月10日 17時0分

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「俺はいま、最高に感動している」。『巨人の星』の星飛雄馬風にそう叫んでしまった。何に感動しているかというと、料理漫画『美味しんぼ』である。そう、今年の春に鼻血問題で大炎上した、あの漫画だ。

ぶっちゃけ、私は、幼い頃観たアニメ作品と、初期の単行本くらいしか読んだことがなかった。アニメ作品は、フード左翼漫画とも呼ばれる原作に比べるとだいぶ毒抜きされていたし、初期はまだフード左翼度低めだった。

この本を近所の区立図書館で読むのが、私のマイブームなのだ。順番に読まず、気になる巻をチェックするようにしている。かなり前の初期の話も、最近の海原雄山と山岡士郎の親子が和解した後も、それぞれ面白い。いや、「面白い」というよりも、「面白がっている」という言い方の方がフィットする。漫画でありフィクションなのだが(もちろん、論拠はあるが)、シュールすぎるのだ。

この料理に異常に熱い親子、そして新聞社の社員たち、どうよ。いかにも朝日新聞風の「究極のメニュー」の東西新聞社、いかにも読売新聞風の「至高のメニュー」の帝都新聞社なのだが、新聞なら報道で勝負しろと言いたくなるわけだ。社主までがグルメに狂っているのだ。

後半では、部数低下により企画打ち切りか、みたいなシーンもあったりするのだが、危機感なさすぎだろと言わざるを得ない。新聞社なら、権力を監視し、社会に問題提起する報道をしてもらいたいのだが、料理に対して熱すぎないか、この人たち。

また後半は、食の安全や、日本の食文化に関する問題提起など、硬派なテーマで勝負しているのだが、それでも食についてひたすら議論を続けるというのは贅沢そのものであり、牧歌的であるとも言える。

その極みとも言えるのが、初期の話だ。唯物論なる、唯食論。もう世の中、すべて食なのだ。ビジネスから家庭内の問題まで、食がすべてを解決するというトンデモ作品なのだ。

それは、『ホットドッグ・プレス』で連載されていた北方謙三の人生相談「試みの地平線」で、迷える子羊たちが恋愛の悩みを相談すると「ソープへ行け」と言われるという、あの光景ともかぶる。ちなみに、極真空手の創始者・大山倍達も以前、人生相談コーナーを担当していたが、これもまた決め台詞は「君ぃ、極真空手をやりなさい」だった。

この唯ソープ論、唯空手論と一緒ではないか。レイプすることにより問題を解決する問題作『レイプマン』よりはマシだがな(これまた、トンデモ漫画だな… 幼い頃、床屋で読んだが、いい気分がしなかった)。

例の鼻血問題の後、物語は休載中だ。この問題に関係なく休載ということなのだが。そういえば最近、ベビーカー問題についてついホンネを書いてしまったライターが大炎上したという事件があったが、ベビーカー、参鶏湯を始めとする韓国・朝鮮礼賛ネタ、ヒップホップネタ(批判も、中途半端な礼賛、理解も)、そして放射能ネタというのは、いつも炎上するネタだと再確認した次第だ。

この鼻血問題、科学的根拠がない、風評被害につながるなどと大批判されたわけだが…。そもそも、『美味しんぼ』ってどうよという視点をもっとみんな持っておきたいなと思った次第だ。昔ほど人気があるわけではないし。ただ、これだけ騒がれたということは、まだまだ社会的影響力が強いということなのだろうが。

私は、絶大なる経済力を駆使し、美食にこだわる男として一部では知られているが、『美味しんぼ』で描かれる食生活を庶民が日々楽しむのは無理ではないかと愕然としてしまった次第だ。だからこそ、あくまでフィクションとして面白がる。しかも、図書館で、無料でゆるく楽しむ。これこそが庶民の楽しみ方だと思った次第だ。

暇つぶしには最高なので、皆さんもぜひ図書館でチェックだ。もちろん、買いたい人はぜひ新品で、あるいは古本で買ってくれ。いや、図書館や古本をすすめるのは、新刊を出している著者としてどうよという批判があるのだが、読まれることこそが大事なのだ。そして、いま一度、この『美味しんぼ』とは何か、あの鼻血騒動とは何だったのかを総括しようではないか。

(文/常見陽平 http://sirabee.com/author/yohei_tsunemi/ )

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