なぜ獲れない? 村上春樹とノーベル文学賞【芥川奈於の「いまさら文学」】

しらべぇ / 2015年10月9日 17時0分

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なぜ獲れない? 村上春樹とノーベル文学賞【芥川奈於の「いまさら文学」】

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Photo by JJ Merelo on Flickr

毎年、秋になると何かと話題になるノーベル賞。日本は医学や物理の面での受賞者が多く、今年もすでに2名の研究者がメダルを手にしている。

そんななか、日本で2006年に「フランツ・カフカ賞」を受賞してから毎年必ず注目されている人物と賞――。それは、村上春樹氏と同氏のノーベル文学賞受賞についてだ。

1979年に『風の歌を聴け』で文壇デビューした村上氏はその後、『羊をめぐる冒険』(1982年)や『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985年)、近年の映画化で再度注目された『ノルウェイの森』(1987年)、3部作の『ねじまき鳥クロニクル』(1994~1995年)、『1Q84』(2009~2010年)など、読んだことはなくても誰もが知っているようなタイトルのベストセラーを次々と生み出す。日本のモンスター作家のひとりだ。

また、彼のワークエリアは小説だけにとどまらず、海外作品の和訳や自身のエッセイ、絵本なども書き、日本では「ハルキスト」と呼ばれる熱狂的なファンも多い。

長年にわたってノーベル文学賞受賞が期待される村上氏だが、今年2015年も受賞を逃すこととなった。受賞したのは、ベラルーシの作家、スベトラーナ・アレクシエービッチ氏だ。

チェルノブイリ原発事故の被災者を取材した『チェルノブイリの祈り』の著者で、2011年に福島の被災者たちにもブログでメッセージを発信している人物である。

村上氏はこれまでに多くのベストセラーを生み出し、何度もノミネートされ、最もノーベル文学賞に近い作家として注目されてきた人物だ。数多のジャンルを「賭け」に対象にしているイギリスのブックメーカーも、氏がカフカ賞を受賞してから常に予想1位としてきた。

しかし、今年のオッズでは、村上氏は2位。1位はアレクシエービッチ氏だった。そしてその予想は奇しくも的中。「ハルキスト」たちは、今年も落胆の声を上げることとなった。

ここで改めて確認しておきたいのは、芥川賞が「ただ面白い小説」に与えられる賞ではないように、ノーベル文学賞も「ただ優れた小説家」に授与される賞ではない、ということだ。

今回、アレクシエービッチ氏が受賞したことでも、それは証明されている。

世界中から絶賛されている村上氏。氏より名の知れていない小説家でも、そのとき「ノーベル」の名に最も相応しいとされた人物が各賞を受賞することができるというわけだ。

とはいえ、村上氏がつまらない小説を書いているという短絡的な結論に達しているわけでは、勿論ない。いつかは受賞をしてほしいとも考える。

だが、本人が「期待されることは迷惑」と発言されているので、どちらに転んでも今ひとつ複雑な気分を払拭できないのは私だけであろうか。

(文/芥川 奈於)

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