なぜ僕たちは世界の映画を見るのか【第28回東京国際映画祭総括】

ソーシャルトレンドニュース / 2015年11月6日 12時13分

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なぜ僕たちは世界の映画を見るのか【第28回東京国際映画祭総括】

■日本映画を公開前に見られる場所という役割

その女は言った。
「もっとマシな映画見なよ……」

10年前の2005年、東京国際映画祭に行ったときのことだった。

僕は『仮面ライダー THE FIRST』が公開前に見られるチャンスということで、東京国際映画祭に足を運んだ。すると、シネフィルを自称していた高校時代の同級生の女子が、大学生ボランティアとして会場内にいて、僕の持つチケットを見てこう言い放ったのだった。

この年、僕は他に、大リスペクトする俳優・窪塚洋介復活の瞬間を目に焼き付けに『同じ月を見ている』を見に行った。そう、まだこの頃の僕の東京国際映画祭の認識は、“日本映画が公開前にいち早く見られる場”だった。そして、もちろん今も東京国際映画祭はその役割を継続している。

その女のことはそれっきり見かけていない。僕は『仮面ライダー THE FIRST』が「マシじゃない」とは今でも思わないが、“国際”映画祭であることを活かしていなかったことは確かだ。

■世界の何処かに、同じ悩みを抱えている人がいる

10年経った今年の東京国際映画祭は、200本を超える映画が上映され、その多くが海外の映画だった。
今年の映画祭で、浴びるように世界の映画を見た僕は、なぜ僕たちは世界の映画を見るのかを考えてみた。

映画を見たことであなたの抱えている問題が解決するのか、と言われたら、そうではないかもしれない。でも、僕は安心した。解決策なんて提示されなくてもいい。世界のどこかに、自分と同じような悩みを抱えている人がいる、と知れただけで安心することができた。

元カノの影が忘れられない人もいれば(If Only/インド)、結婚したら人生終わりだと思っている人もいたり(OK Darling/インド)、初恋の人をヤンキーに奪われるショックがあったり(ぼくの桃色の夢/中国)、医者こそ正義だと思っている父とわかりあえなかったり(神様の思し召し/イタリア)……。

アジアや先進国の映画には、日本人とも共通するような悩みが登場することが多い。その度に安心する。そうか、こういうことに悩んでいるのは、僕だけではないのだ、と。

■地雷、戦争、移民……という題材に感じる世界

一方で、地雷を撤去する苦しみや(地雷と少年兵/デンマーク=ドイツ)、突如として戦闘機の轟音が鳴り響く恐怖(ルクリ/エストニア)や、
弾圧的な政府に投獄され家族で亡命しながらも生き抜く強さ(スリー・オブ・アス/フランス)は、なかなか「うん、わかるよー!」とは言いづらい。

地雷、戦争、移民といったテーマが提示されたとき、僕たちはそこで共感ではなく「こんな世界もあるのか……」と、その多様な世界を実感する
そこに「地雷を撤去する苦しみ」「亡命しながらも生き抜く強さ」と文面で提示されるだけでは感じることができない、感情を得られるのである。

今はまだ立ち尽くすだけかもしれない。でも、その実感を持った人の中から、叫び、動く人が出てくるのかもしれない。

「俺、正直、オリンピックなんかどうでもいいっす。こんなクソみたいな国でそんなことやってどうすんすか?」と主人公が叫ぶ映画(恋人たち/日本)が上映されたこの映画祭のパンフレットの冒頭で、この国の首相は「クールジャパン」と言って笑っている。

(文:霜田明寛)

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