第47回 テレビ局戦国時代

ソーシャルトレンドニュース / 2019年1月11日 18時47分

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第47回 テレビ局戦国時代

皆さん、あけましておめでとうございます。今年もよきテレビライフを!
さて――昨年10月、日本テレビが2013年12月から実に58カ月にわたわたって守り通した「月間視聴率三冠王」の記録が途切れたのは、まだ記憶に新しい。

日テレの前に立ち塞がったのは、テレビ朝日だった。三冠王の一角をなす「全日」(午前6時~翌午前0時)の部門で、テレ朝が日テレを0.1ポイント上回ったのだ。その原動力となったのが、同局の朝の情報ワイド『羽鳥慎一モーニングショー』だった。奇しくも、日テレの元局アナが司会を務める番組が、古巣を追い落とす構図になったのは、なんとも皮肉である。

そんな次第で、2019年最初のTVコンシェルジュは最新のテレビ局事情をお送りします。題して「テレビ局戦国時代」――。王者日テレに落日の影が見え始め、一方、躍進著しいテレ朝。そしてTBSはドラマに、フジは坂上忍に、テレ東は出川哲朗に、NHKはチコちゃんに命運を預ける今日この頃――明日のテレビ界はどうなるのか? その核心に迫りたいと思います、ハイ。

■日テレの落日?

そう、落日が囁かれる王者・日テレ――。一体、同局の番組で今、何が起きているのか?


元々、この1年くらい、日テレはずっと「全日」がピンチと言われていたんですね。それというのも、午前と午後の帯番組が絶望的に不振なんです。朝は『ZIP!』にひと頃の勢いはなく、今や『グッド!モーニング』(テレ朝系)や『めざましテレビ』(フジ系)の後塵を拝している状況。その後枠の『スッキリ』もすっきりしない(!)し、さらにその後ろの『バゲット』なんて、視聴率低迷で昨年10月に『PON!』から衣替えしたのに、局アナメインの地味さが響いてか、前番組よりさらに数字を落とす惨状に――。

午後もパッとしない。お昼の枠の『ヒルナンデス!』は、この時間帯の王者『ひるおび!』(TBS系)は言わずもがな、ここ半年は『バイキング』(フジ系)にも抜かれ、3位が定位置に。そして、長きにわたって午後のワイドショーの王者として君臨した『情報ライブ ミヤネ屋』も、もはや往年の勢いはない。最近は、『直撃LIVEグッディ!』(フジ系)に度々抜かれ、名古屋発の『ゴゴスマ~GOGO!Smile!~』(TBS系)にも肉薄される始末。そもそも午後帯は、2枠あるテレ朝のドラマの再放送が強く、真の絶対王者は『相棒』なのだ。

■日曜の黄金リレーも

いや、日テレのピンチはそれだけじゃない。
皆さん、ご存知の通り――いまだ尾を引く『世界の果てまでイッテQ!』のヤラセ騒動だ。まぁ、僕個人の意見としては、たかがバラエティにヤラセも何もないだろうとは思う。とはいえ、あの騒動以来、同番組は視聴率が全盛期に比べて2ポイントほど下落しており、多少なりとも影響が見られるのは事実である。

そして――忘れちゃいけない、その前枠の『ザ!鉄腕!DASH!!』にも騒動があった。そう、昨年5月の山口達也元メンバーのTOKIO脱退以来、こちらも微妙に数字を落としているのだ。何せ“DASH島”や“米作り”をはじめ、ガテン系の仕事は山口メンバーを中心に回っていたから、彼がいないとどうにも弱い。実際、昨年のコメの出来は、今ひとつだという(毎年コメの出来を心配するアイドルは、それはそれで面白いが)。

とはいえ、両番組とも依然、バラエティのジャンルでは1、2を争う高視聴率番組であり、そこまで心配する必要はないようにも思うが――日テレにとっては、コトはそう単純ではないらしい。なぜなら、これら2番組は、同局の強さの象徴である“日曜の黄金リレー”の一角を占めているから。
そう、日曜夕方の『笑点』に始まり、『真相報道バンキシャ!』、『鉄腕!DASH!!』、『イッテQ』、そして『行列のできる法律相談所』へと連なるゴールデンタイムの鉄板リレーだ。ここが痛手を被るのは、日テレにとって視聴率以上に心理的ダメージが大きいのだ。

■ドラマも苦戦続き

日テレのピンチはまだ続く。ドラマである。
昨年1年間――なんと日テレはプライムタイムの連ドラで、1つも平均二桁の作品を輩出できなかったのだ。

特に痛いのが、水曜22時の「水曜ドラマ」の枠。以前なら働く女性の応援枠として、『ハケンの品格』とか『ホタルノヒカリ』とか『家政婦のミタ』とか『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』とか、視聴率も話題も取れる良枠だったのに――この1年はさっぱり。ちなみに、先の10月クールの野木亜紀子脚本・新垣結衣主演の『獣になれない私たち』も、前評判は『逃げ恥』(TBS系)の再来と期待値が高かったものの、フタを開けてみたら平均一桁と苦戦した。

ただ、日テレにとって唯一の救いは、先の日曜ドラマ『今日から俺は!!』が予想を上回る評判で、視聴率はともかく、10代の若者たちからの支持が半端ないこと。今や女子高生は、みんなTik Tokで同ドラマの主題歌『男の勲章』を口パクで踊っている。

――とはいえ、ここへ来て急にトーンダウンした感のある日テレの連ドラ。一体、同局で何が起きているのか。

■連ドラが好調のテレ朝

一旦、話を変えます。
そんな日テレの不振と対照的なのが、冒頭でも紹介したテレ朝の好調ぶりである。


例えば、連ドラ。先の10月クールは、『相棒』、『科捜研の女』の鉄板のシリーズものに加え、『ドクターX~外科医・大門未知子~』の後継と期待された米倉涼子主演の新作『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』も好調で、どれも平均二桁視聴率(それも15%前後)と安定した強さを見せてくれた。

いや、同局のドラマの強さは、それら『相棒』や米倉ドラマに限らない。以前なら、伏兵と見られていた東映制作の比較的地味な刑事ドラマ群――『警視庁捜査一課9係』と、その後継の『特捜9』をはじめ、『警視庁・捜査一課長』、『遺留捜査』、『刑事7人』等々も、安定して二桁を維持しているのだ。

そう、今やテレ朝のドラマは、1年を通じて民放トップの座に君臨しているんです。

■『イッテQ』に迫る『ポツンと~』

それだけじゃない。日テレとは対照的に、テレ朝の好調はバラエティにも及ぶ。例の『イッテQ』の裏では、テレ朝の新番組『ポツンと一軒家』が絶好調なのだ。同番組、昨年10月にレギュラー化されたばかりだが、初回スペシャルでいきなり14.0%の高視聴率。その後も安定して二桁で推移し、11月11日の2度目のSPではさらに上げて15.4%と、『イッテQ』を猛追している。12月9日にはとうとう0.5ポイント差まで肉薄した。

――と、ここで僕らは、ある1つの事実に気づく。
その『ポツンと~』の放送開始は、『イッテQ』にヤラセ騒動が持ち上がる前であり、既にその時点で高視聴率をあげていたのだ。つまり――『イッテQ』の数字の落ち込みは、ヤラセ騒動の影響云々というよりは、むしろ強力な裏番組の登場によるところが大きいかもしれないのだ。

一体、『ポツンと~』の何がそんなに面白いのか。

■『ポツンと~』が面白いワケ

実は『ポツンと一軒家』、いきなりレギュラー化されたワケじゃないんですね。一昨年の10月から8回も特番を重ねて、番組の知名度と視聴習慣をある程度お茶の間に浸透させてから、満を持してレギュラー化されたんです。

その番組内容を簡単におさらいしておくと、日本国内を撮影した衛星写真をもとに山奥の一軒家を探し出し、ノーアポでディレクターが訪問する――シンプルに言えば、これだけの番組である。途中で、地元の人々に訪問先の情報や行き方などを教わりながら、ひたすら目的地を目指す。そう、まるでテレ東が作りそうな番組なのだ。ロケにタレントが一切登場しないところも、テレ東感を彷彿とさせる。

それにしても――テレ朝ともあろう局が、なぜ日曜ゴールデンタイムの番組のロケに、タレントを使わないのか?

■タレントが出ないバラエティが面白いワケ

『ポツンと~』にタレントが登場しない理由――考えられる可能性は1つ、恐ろしくロケの成功率が低いんですね。

普通、番組のロケというのは、あらかじめスタッフが下調べをした上で、ある程度“撮れ高”を計算してから、タレントを仕込んで本番に臨む。しかし、それではどうしても予定調和な画になってしまう。

対して、『ポツンと~』の場合、売りは“ノーアポ”である。だからこそ、地元の人たちの反応もリアルで面白いし、目的地の一軒家への期待値も上がる。そう、これはある種のドキュメンタリーなのだ。

だが――そうやってガチンコで撮影すれば、恐らくロケの大半は失敗する。散々苦労して訪ねた一軒家が空き家だったり、先方がテレビ出演NGだったりするケースは少なくない。以前、テレ東の『YOUは何しに日本へ?』のロケに対するオンエア率を聞いたことがあるが、確か1%もなかったと思う。つまり、100人に声を掛けて、放送できるのは、よくて1人。そんな過酷なロケでは、知名度のあるタレントは使えない。

しかし、である。
そうやって苦労して作った番組で、1つだけ確かなことがある。100人に声を掛けてオンエアできたVTRは、間違いなく面白いのだ。『ポツンと~』もおそらく同様の方法で作られている。だからオンエアされる“一軒家”のストーリーは、ハズレなく面白く、高視聴率が取れるのだ。

■日テレとテレ朝、なぜ明暗を分けた?

――と、ここまで読まれた方は、薄々感じているかもしれない。
ははーん、日テレの番組がマンネリ化する一方で、テレ朝は次々に新しいことにトライしているから強いのか、と。

確かに、そうした一面があるのは事実。
例えば、日テレの朝の看板『ZIP!』にひと頃の勢いがないのも、同番組が守りに入っているからとも言える。それを象徴するのが、例のTOKIO山口メンバーの脱退で、同番組のレギュラーが交代された時のことだ。本来なら、全く別のジャンルの人物をキャスティングしなければいけないところ、同じジャニーズ事務所から風間俊介サンを連れてきたのだ。そこには、視聴者目線ではなく、ひたすら対芸能プロダクションの行政しか見えなかった。

一事が万事、そういうことである。念のために、風間サンが悪いワケではないことは申し上げておく。彼はよくやっている。これは日テレ自身の問題なのだ。

だが――日テレとテレ朝の明暗を分けた真の正体は、実はそこじゃない。真の正体、それこそが、現在のテレビ界を揺るがす巨大な力(フォース)なのだ。

■テレビ界を牛耳る真のフォースとは?

そう、日テレの不振とテレ朝の好調。その明暗を分けたテレビ界を牛耳るフォースの正体――それは、高齢者である。

え? フォースだからって『スターウォーズ』のヨーダの話を始めたのかって?
いやいや、別にヨーダが800歳という超高齢の話をしているのではない。テレビ界を動かしているフォースの正体こそが、高齢者なのだ。
どういうことか。

鍵は視聴率である。現在、視聴率を測定するサンプル(関東なら900世帯)は日本の年齢別人口比に対応しており、50歳以上が約半数を占める。加えて、その世代はテレビ好きである。となると――必然的に視聴率を稼ぐ番組は50歳以上が好む番組ばかりになる。しかも少子高齢化で、年々その傾向は高まっている。

端的に言おう。ここへ来て、テレ朝の存在感が増している理由。それは、高齢者が見たい番組が、同局に揃っているからである。

■高齢者に強いテレ朝

戦いは、既に朝から始まっている。
早朝4時――他局がニュースワイド番組を放送する中、テレ朝は2015年3月から『おはよう!時代劇』と称して、『暴れん坊将軍』の再放送を流している。バカにしてはいけない。同番組は時間帯1位の視聴率を誇り、その流れで午前の番組に突入している。『グッド!モーニング』や『羽鳥慎一モーニングショー』が好調なのは、そんなアシスト効果もある。

そして午後は午後で、こちらは『相棒』はじめ、刑事ドラマの再放送で、他局がワイドショーを流す中、これも高齢者にジャストフィットしている。
さらに、夜は夜で、これもシリーズものの東映制作の刑事ドラマで高齢者の常連客をガッチリ掴み、そして『ドクターX』や『リーガルV』などの一連の米倉涼子のドラマでは、時代劇的な勧善懲悪のエンターテインメントを提供して、これは幅広い世代に見られている。

極めつけは、例の『ポツンと一軒家』である。高齢者にとって同番組は、山奥に住む同世代の主が登場して、その人生観に共感できる。何より、うるさいタレントが登場せずに静かに見られる――と、全てが高齢者シフトで番組編成が組まれているのだ。テレ朝の強さは、つまりはそういうことなのだ。

■日テレの不振の真の原因

――となると、逆に日テレの不振の原因も自ずと見えてくる。
同局が主にターゲットにしている層は、看板番組の『イッテQ』を見ても分かる通り、「家族」である。子供からお年寄りまで幅広く見てもらう番組を作らせたら、日テレの右に出る局はない。

だが、前述のように高齢者の比率が今後ますます高まると、相対的に家族の若年層の比率が下がる。そうなると、リビングで見るチャンネル権は家族の総意から、高齢者に移る。かくして、『ポツンと一軒家』が選ばれるのである。

そう、日テレの不振は、番組に飽きられたというよりは、視聴者の比率が高齢者偏重にシフトしたことが主たる原因と言えそうだ。
この1年、同局の連ドラがひとつも二桁視聴率を出せないのも、ドラマがつまらなくなったというよりは、全視聴者に占める高齢者の割合が増えたからだ。

つまり――日テレの敗因は、家族や女性や若者向けに番組を作った“攻めの姿勢”によるもので、それほど悲観しなくてもいいのだ。

■スポンサーの意識の変化も

なぜなら、ここへ来て、スポンサーの意識にも変化の兆しが見られるからだ。
CMには「タイム」と「スポット」の2種類がある。前者は番組の最中に、後者は番組と番組の間に流れる。問題は前者のタイムである。

以前なら、何はともあれ世帯視聴率を重視し、より視聴率の取れる番組にスポンサーは集まったものである。でも、最近は個人視聴率やタイムシフト視聴率も重視する傾向にあり、例え視聴率が今ひとつでも、比較的若い世代が見る番組なら提供したいとするスポンサーが増えているのだ。

ぶっちゃけ、視聴率の上では苦戦中のフジテレビも、実はスポンサーのウケは意外といい。それというのも、同局の番組の視聴者は、比較的若い世代が多いから。反対に、テレ朝は高視聴率の番組でも、スポンサーのウケは今ひとつ。高齢者ばかりが見る番組に、化粧品やゲームアプリのスポンサーは集まりにくいからである。

■視聴率から視聴質、視聴熱の時代へ

そう考えると、むしろ視聴率に一喜一憂するお茶の間の側が、時代遅れになりつつあるとも言える。現在、ドラマの放映翌日には、決まってヤフーニュースなどに視聴率の記事が掲載されるが、それを見て僕らが一喜一憂するのは果たして意味があるのだろうか。

それよりも、そのドラマがどんな世代に見られて(視聴質)、どれくらい熱く語られているか(視聴熱)を知る方が、よほど有意義な気がする。事実、昨年の東京ドラマアウォードのグランプリを受賞した『おっさんずラブ』(テレ朝系)は23時台の放送ということもあり、視聴率自体は平均4.0%と低調だったけど、最終回はTwitterのトレンドで世界1位に。しかも、あの『逃げ恥』の最終回をツイート数で上回ったという。視聴熱では間違いなく2018年ナンバー1だったのだ。

そして、先の10月クールでいえば、『今日から俺は!!』は、視聴率はともかく、若い世代に圧倒的に見られていて、“視聴質”的にはスポンサーにとってかなり美味しい状況だった。つまり広告を届けたいターゲット(F1層)にハマっていたのだ。

後年、振り返って2018年は、視聴率から視聴質、そして視聴熱の時代への過渡期だったと語られているかもしれない

■ドラマのTBSは安泰

ここから先の話はあまり長くない。

日テレとテレ朝の攻防にページを割きすぎてしまったが、テレビ局戦国時代を語る上で、もちろん他の局が蚊帳の外というワケではない。どの局もそれぞれの持ち味があり、やり方次第で日テレやテレ朝を抜く可能性だって十分ありうる。

例えば、TBSだ。
同局の強みと言えば、やはりドラマである。


昨年1年間を振り返っても、連ドラで爪痕を残せたのは、TBSである。

まず、NHKの朝ドラを除いて、1クール連ドラで昨年最も平均視聴率が高かったのは、1月クールのTBS日曜劇場『99.9-刑事専門弁護士-』(シーズン2)の17.6%だ。昨今流行りの弁護士ドラマ(リーガル・ドラマ)の火付け役でもあり、主人公・深山大翔を演じる松本潤のハマり具合が半端ない。飄々とした性格ながら、頭脳明晰で事件をあっと驚く奇策で解決に導くその姿は痛快だった。

ちなみに、2018年の各クールの平均最高視聴率は、4月クールもTBSで、『ブラックペアン』、7月クールも同局の『義母と娘のブルース』(以下、ギボムス)と、なんとTBSが4クール中3クールを制した(10月クールのみテレ朝の『リーガルV』)。

ドラマの視聴率というと、テレ朝が高齢者向けの刑事ドラマで安定して稼いでいるイメージだけど、クール毎にハネた作品となると、やはりTBSなのだ。つまり、多様なテーマで全世代向けに広くエンターテインメントを届けているのが、TBSなんです。

■話題作もTBS

いや、視聴率だけじゃない。アグレッシブなジャンルに挑み、一定の評価を残したドラマも2018年――TBSは事欠かなかった。

1月クールは、野木亜紀子脚本・石原さとみ主演の『アンナチュラル』だ。野木サンがプライムタイムで初めて書いたオリジナル作品であり、死者を救う“法医学”という難しいジャンルに挑み、見事に年間ギャラクシー賞を受賞した。石原さとみの自然体な演技も高評価を受け、ともすれば暗くなりがちなジャンルを、ライトコメディ的手法で明るく見せた塚原あゆ子サンの演出も光った。

そして7月クールは、例の『ギボムス』である。血のつながらない親子愛をテーマに森下佳子サンが珠玉の脚本に仕上げ、綾瀬はるかのコメディエンヌの幅を広げ、竹野内豊の自然体の演技を引き出した。そして、そんな役者たちの芝居を煽りすぎない平川雄一朗サンの神演出――ほぼ右肩上がりの視聴率は、あの『逃げ恥』の再来とも言われた。

さらに10月クールでは、果敢にも『中学聖日記』と『大恋愛~僕を忘れる君と』という2つの恋愛ドラマに挑んだ同局の攻めの姿勢を評価したい。『中学生~』は序盤、視聴率の低迷に苦しんだが、中盤から徐々に数字を上げたのは、名演出家・塚原あゆ子の作り出す世界観にお茶の間が引き込まれた結果だろう。
一方、『大恋愛』は、戸田恵梨香の演技力を深化させ、コメディ俳優ムロツヨシの新しい一面を引き出した。何より、名脚本家・大石静の完全復活を印象付けたのが大きい。最終回は13%を超え、見事に平均視聴率を二桁に乗せて有終の美を飾った。

■現場至上主義のTBS

なぜ、TBSのドラマは多様性に富んで、面白いのか。
1つの要因として、同局のモノづくりの姿勢が挙げられる。いわゆる現場至上主義とでも言おうか。プロデューサー・演出家・脚本家をはじめ、各現場で緩やかな1つのチームが形成され、それらが互いに切磋琢磨することで、局全体として優れた作品が生み出されるのだ。

例えば、日曜劇場1つとっても、『下町ロケット』や『陸王』などの池井戸潤作品を数多く手掛ける伊與田英徳P・福澤克雄Dのチームがある一方、『JIN-仁-』や『天皇の料理番』など森下佳子脚本を多く手掛ける石丸彰彦P・平川雄一朗Dチームといった強力なライバルが存在する。
金曜ドラマに目を向ければ、『夜行観覧車』や『リバース』などの湊かなえ作品を手掛ける新井順子P・塚原あゆ子Dチームが独特の存在感を放っている。そうかと思えば、『木更津キャッツアイ』や『監獄のお姫さま』など宮藤官九郎脚本を多く手掛ける磯山晶P・金子文紀Dチームといった飛び道具(?)も存在する――。

いや、現場至上主義は何もドラマに限らない。例えば『水曜日のダウンタウン』の藤井健太郎サンは独自のワールドを構築し、TBSの他のバラエティ番組とは一線を画している。

それぞれの現場が、最高のスタッフィングで、最高の番組を作る――その構図は、あの80年代から90年代にかけてのフジテレビを彷彿とさせる。今後のTBSから目が離せないのは、そういうことである。

■復活のフジテレビ

続いてはフジテレビだ。


もう、フジが三冠王から脱落して8年が経つ。その間、同局は「振り向けばテレビ東京」と囁かれるまで視聴率を落とし、近年はそのテレ東にもしばしば抜かれる状況に――。

しかし、一昨年の6月に石原隆サンが新設の「編成統括局長」に就任すると、『みなおか』や『めちゃイケ』といった金属疲労に苦しむ長寿バラエティを勇退させる一方、月9をはじめとした連ドラをテコ入れ――結果、看板枠の月9は、昨年4月クールの『コンフィデンスマンJP』で息を吹き返し、続く『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(シーズン3)と『SUITS』で平均2桁と復調した。木10枠も4月クールの『モンテ・クリスト伯-華麗なる復習-』がSNSでバズり、続く7月クールの『グッド・ドクター』は韓国ドラマのリメイクで、実に3年半ぶりに同枠に平均視聴率二桁をもたらした。

一方、バラエティは、お昼の『バイキング』が昨年一気に数字を上げて、日テレの『ヒルナンデス!』を上回るようになり、時間帯2位へ躍進。夜は夜で、新番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』が先の10月にスタート。MCの佐藤二朗サンのトボけた進行と、シンプルで独創的なルールが評判を呼び、まずまずの人気を誇っている。

いずれも、フジテレビのDNA――開局以来、連綿と受け継がれてきた“フリートーク芸”の強みと、80年代末の深夜黄金時代に培われた“アイデア力”の片鱗が垣間見える。今、フジはかつての勢いを取り戻しつつある。

■世界に目を向けるフジ

ここからは、2019年以降のフジの展望の話である。

昨年6月、フジの大多亮常務は、ドイツのテレビ局「第2ドイツテレビ」の子会社ZDFエンタープライズ社と組んで、全10話の連続ドラマ『The Window』を製作すると発表した。製作費は20億円。これは通常の連ドラ予算の5倍にあたる。

同ドラマは、イングランド・プレミアリーグの終幕と共に始まる10週間の選手の移籍市場 “トランスファー・ウィンドウ”が舞台になるという。将来を有望視される17歳のサッカー選手を主人公に、家族や恋人、エージェント、クラブオーナー、ジャーナリスト、そして世界の投資家たちがうごめく権謀術数の世界が描かれるとか。大多常務曰く「サッカー版『ハウス・オブ・カード』」であると。今年中の完成を目指し、来年以降の放送を予定しているという。

それにしても――なぜフジは突如、こんなビッグプランを立ち上げたのか。

■バスに乗り遅れるな

背景に、現在の世界にまたがる“空前の連ドラ市場”がある。今や世界のドラマ市場は、Netflixら動画配信企業によって、世界の視聴者を対象にグローバル市場が形成されており、1シリーズあたり100億円規模の制作費も珍しくない。それだけ投資しても、回収できる巨大なマーケットなのだ。まさに、連ドラ黄金期。アメリカだけでなく、欧州や韓国もその大きな流れの中にある。

一方、日本のテレビ界は、制作費の9割を広告費で賄い、しかも国内の市場で完結するビジネスモデルである。それはそれで、これまでテレビ界を発展させてきた優れたモデルではあったが、今や広告費の頭打ちと少子高齢化で、これ以上の発展は望めそうにない。世界の潮流から取り残されつつある。

そう、フジの目的はその脱却にある。いわゆる“バスに乗り遅れるな――”。
欧米のテレビ局と組み、世界規模のネット配信をベースとした制作体制を確立することで、制作費の増加や、ハリウッド級の俳優のキャスティングを目論んでいるのだ。そう、フジの視線は世界を向いている――。

■既に動いていたフジ

実際、今の日本のテレビ局で、世界に最も近い位置にいるのはフジテレビだ。
同局は既に、あのNetflixと組んで、「テラスハウス」をリニューアルして、製作・配信している実績がある。ちなみに、最新作の軽井沢編の『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』は、米・TIME誌が発表した「2018年のベストテレビ番組」の6位に選出されたという。世界の6位だ。

思えば昨年、フジは『グッド・ドクター』と『SUITS』と、海外のヒットドラマを2つもリメイクしており、既にその視点は海外市場へ向いているとも言える。海外ドラマをリメイクする利点は、その脚本のレベルの高さに、視聴者が気づくことにある。フジは既に、お茶の間の“地ならし”も図っていたのだ。

■フジの影が見えるテレ東とNHK

さて、最後はテレ東とNHKの話である。
え? どうしてこの2つを一緒くたに語るのかって?
それは――両局ともその好評と言われる番組の裏に、往年のフジの影が見え隠れするからである。

まず、テレ東である。


昨年、同局の最も大きなニュースと言えば、4月から新しいドラマ枠「ドラマBiz」を新設したことだろう。テレ東らしい“ビジネス”に特化したドラマ枠でありながら、キャスト陣は江口洋介をはじめ、仲村トオルや唐沢寿明と、失礼ながらこれまでのテレ東らしからぬ大物の配役。それだけ力を入れているということだろう。

中でも珠玉は、先の10月クールの『ハラスメントゲーム』だった。主演・唐沢寿明、脚本・井上由美子の座組は、あのフジの『白い巨塔』と同じである。加えて、演出チーフは同じくフジの『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』シリーズを手掛けた西浦正記D。そう――フジテレビのノウハウで作られていたのだ。

実際、同ドラマは視聴率はともかく、内容的にはクールNo.1とも言われ、お茶の間や識者から大絶賛された。ある意味、フジのドラマ作りのノウハウが認められたようなものだった。

■チコちゃんを作ったのは、あの座組

続いて、NHKである。


こちらも2018年の同局の最大のヒット番組と言えば、『チコちゃんに叱られる!』で異論はないだろう。
5歳児ながら、歯に衣着せぬチコちゃんの発言と、その多様に変化する表情が話題となる一方、ナレーションを務める森田美由紀アナの淡々としたトーンとの対比もおかしく、お笑いのレベルとしてはかなり高度なテクニックだった。

さもありなん、同番組を作ったのは、フジテレビから共同テレビに出向中の小松純也サンであり、彼はあの『笑う犬の生活』を演出したことでも知られる、フジのバラエティ班のDNAみたいな人。
加えて、メインキャストは昨年3月で終了した『めちゃイケ』からの流れのようにナイナイの岡村隆史サンが務め、しかもチコちゃんの声は、あの木村祐一サンである――。

そう、その3人の座組は、どう見ても往年のフジのバラエティ番組だ。

■2019年のテレビ界はどう動く?

テレ東とNHKのヒット番組の裏に見える、往年のフジの影――ある意味、2018年の裏MVPは、フジテレビとも言える。
フジが、かつての栄光の遺産を他局に譲り、自らは世界へ向けて新たなる挑戦に踏み出すのは、企業としては正しい姿だろう。

TBSは、民放一の人材と評されるドラマ作りを今年、さらに深化させていくだろう。世界に誇る日本のドラマ遺産を変わらずに築き上げてほしい。そしてもう一つ、2019年の『水曜日のダウンタウン』からも目が離せない。

日テレとテレ朝の視聴率争いは今年、さらに熾烈を極めるだろう。現状、高齢化に対応したテレ朝が有利に見えるが、家族向けの王道バラエティの需要はまだまだ高い。日テレの底力に期待したい。

何より――テレビ界でいよいよ真価が問われるのは、僕ら視聴者かもしれない。視聴率に惑わされず、本当に面白い番組を見抜く力。そしてSNS等でそれを拡散する熱量――視聴率に代わり、それら「視聴質」や「視聴熱」がテレビ界の新たな指標になると、テレビは今よりもっと面白くなる。実際、既にスポンサーの一部には、それに対応する動きも出始めている。

今年――2019年も、テレビから目が離せない。

(文:指南役 イラスト:高田真弓)

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