わし星雲の神秘的な“創造の柱” ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影
sorae.jp / 2022年11月6日 20時46分
【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線装置(MIRI)で撮影された「わし星雲」の“創造の柱”(Credit: Science: NASA, ESA, CSA, STScI; Image Processing: Joseph DePasquale (STScI), Alyssa Pagan (STScI))】
こちらは「へび座」の方向約6500光年先にある「わし星雲」(Messier 16、M16)の一部を捉えた画像です。暗黒星雲が柱のような形をしていることから、この領域は「創造の柱(Pillars of Creation)」と呼ばれています。
左下から右上へと枝分かれしながら伸びる鉛色をした柱は、ガスと塵が集まってできた冷たい分子雲です。分子雲では、物質が高密度に集まった部分が自身の重力で崩壊することで新しい星が形成されます。柱の先端にある赤い光点は、ここで形成された若い星がある場所を示しています。これらの若い星はまだガスや塵に包まれていますが、いずれ周囲の物質を吹き払い、その輝きを宇宙に放ち始めます。
いっぽう、柱の背後に広がる夕焼け雲のような赤い領域は、拡散した低温の塵があることを示しています。塵の雲は画像左下へ向かうほど晴れていくように思えますが、実際はその反対で、柱の根元へ向かうほど塵の密度は高くなっていきます。
この画像は「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡の「中間赤外線装置(MIRI)」を使って2022年8月14日に取得された画像をもとに作成されました。人の目が捉えることのできない赤外線の波長で観測が行われたため、画像取得時に使用された3種類のフィルターに応じて着色・合成されています(7.7μm:青、11μm:緑、15μm:赤で着色)。
創造の柱は「ハッブル」宇宙望遠鏡も1994年と2014年に撮影している他に、先日はウェッブ宇宙望遠鏡の「近赤外線カメラ(NIRCam)」を使って撮影されたバージョンが公開されています。塵を含む分子雲に遮られやすい可視光線に対して、ウェッブ宇宙望遠鏡が主に利用する赤外線は塵に遮られにくいため、柱の内部を見通すこともできます。
![【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で撮影された「わし星雲」の“創造の柱”(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; Image Processing: Joseph DePasquale (STScI), Anton M. Koekemoer (STScI), Alyssa Pagan (STScI))】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2022/10/Pillars-of-Creation-Eagle-nebula-M16-James-Webb-JWST-NASA-ESA-STScI-01GFNN3PWJMY4RQXKZ585BC4QH.jpg)
【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で撮影された「わし星雲」の“創造の柱”(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; Image Processing: Joseph DePasquale (STScI), Anton M. Koekemoer (STScI), Alyssa Pagan (STScI))】
次に掲載したこちらの画像が、NIRCamで撮影された創造の柱です。ガスと塵でできた柱の様子や背景の星々の有無など、MIRIで撮影された冒頭の画像とは印象が異なります。
近赤外線を捉えるNIRCamの観測では、柱の周囲で明るく輝く若い星が幾つも捉えられていました。いっぽう、中間赤外線の波長では星が十分に明るくないため、NIRCamの画像に写っていた星々の多くがMIRIの画像では暗くなったり見えなくなったりしています。その代わりに、中間赤外線は塵の分布を調べるのに適しているといいます。
天文学者はウェッブ宇宙望遠鏡による創造の柱の観測を通して、ガス、塵、星に関するより正確な情報を星形成モデルに反映させることができると期待しています。MIRIによって取得された高解像度の中間赤外線データは、この領域のより完全な立体像の作成に用いられるとのことです。
冒頭の画像は、アメリカ航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)、そしてウェッブ宇宙望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)から、2022年10月28日付で公開されています。
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡とウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した“創造の柱”を比較(動画)】
(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI; J. DePasquale (STScI), A. Pagan (STScI), A. Koekemoer (STScI), N. Bartmann (ESA/Webb); Music: Mylonite - Breath of my Soul)
関連:壁紙にいかが? わし星雲の“創造の柱”をウェッブ宇宙望遠鏡が撮影
Source
Image Credit: Science: NASA, ESA, CSA, STScI; Image Processing: Joseph DePasquale (STScI), Alyssa Pagan (STScI) NASA/JPL - Haunting Portrait: NASA’s Webb Reveals Dust, Structure in Pillars of Creation ESA/Webb - Haunting Portrait: Webb Reveals Dust and Structure in Pillars of Creation STScI - Haunting Portrait: NASA’s Webb Reveals Dust, Structure in Pillars of Creation文/松村武宏
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