ハッブル宇宙望遠鏡＆ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した銀河のペア「VV 191」

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡とウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した銀河のペア「VV 191」（Credit: NASA, ESA, CSA, Rogier Windhorst (ASU), William Keel (University of Alabama), Stuart Wyithe (University of Melbourne), JWST PEARLS Team, Alyssa Pagan (STScI)）】

こちらは「うしかい座」の方向にある銀河のペア「VV 191」です。正面を向けて並んだ2つの銀河は生き物の目を連想させます。VV 191は市民参加型の天文学プロジェクト「Galaxy Zoo（ギャラクシー・ズー）」で合計約2000組が特定された“重なり合って見える銀河のペア”の1つです。

地球から見たVV 191は、左側の大きな白い楕円銀河と右側の渦巻銀河が半ば重なっていて、渦巻銀河から伸びた渦巻腕（渦状腕）の一部は楕円銀河の中央部分にかかっているように見えます。米国宇宙望遠鏡科学研究所（STScI）によると、2つの銀河は宇宙のスケールからすれば比較的近くにあるものの、活発な相互作用はしていないといいます。

楕円銀河を拡大してみると、中央から見て10時の方向に弧状の天体が写っています。これはVV 191よりも遠くにある銀河の像で、VV 191の楕円銀河による重力レンズ効果（※）を受けています。この銀河の像は重力レンズによって弧状に歪むだけでなく分裂もしていて、楕円銀河の中央から見て4時の方向には同じ銀河の点状の像が写っているといいます。

※…手前にある天体（レンズ天体）の質量によって時空間が歪むことで、その向こう側にある天体（光源）から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像が歪んだり拡大して見えたりする現象のこと。

【▲ 銀河のペア「VV 191」（背景）と、楕円銀河の中央付近を拡大した画像（左下）。重力レンズ効果を受けて歪み分裂した遠方の銀河の像が写っている（Credit: NASA, ESA, CSA, Rogier Windhorst (ASU), William Keel (University of Alabama), Stuart Wyithe (University of Melbourne), JWST PEARLS Team, Alyssa Pagan (STScI)）】

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡」の「広視野カメラ3（WFC3）」と「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の「近赤外線カメラ（NIRCam）」を用いて取得された画像をもとに作成されています。ハッブル宇宙望遠鏡は可視光線と紫外線、ウェッブ宇宙望遠鏡は近赤外線の波長でVV 191を観測しました。紫外線や赤外線は人の目で捉えることができないので、色は画像の取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています（WFC3…336nmと606nm：青に割り当て。NIRCam…900nm：緑、1.5μm：黄、3.56μm：赤に割り当て）。

STScIによると、ハッブル宇宙望遠鏡とウェッブ宇宙望遠鏡によるVV 191の観測データを組み合わせることで、研究者は渦巻銀河を通過してきた楕円銀河の光を分析し、渦巻銀河に含まれる星間塵の影響を特定することができたといいます。冒頭の画像はアメリカ航空宇宙局（NASA）、欧州宇宙機関（ESA）、ハッブル宇宙望遠鏡やウェッブ宇宙望遠鏡を運用するSTScIから、2022年10月5日付で公開されています。

 

Source

Image Credit: NASA, ESA, CSA, Rogier Windhorst (ASU), William Keel (University of Alabama), Stuart Wyithe (University of Melbourne), JWST PEARLS Team, Alyssa Pagan (STScI) STScI - Webb, Hubble Team Up to Trace Interstellar Dust Within a Galactic Pair NASA - Webb, Hubble Team Up to Trace Interstellar Dust Within a Galactic Pair ESA/Webb - Galaxy Pair VV 191 (Webb and Hubble Composite Image)

文／松村武宏