ハビタブルゾーンを公転する2つの太陽系外惑星を発見 約16光年先
sorae.jp / 2022年12月19日 21時0分
カナリア天体物理学研究所(IAC)のAlejandro Suárez Mascareñoさんを筆頭とする研究チームは、地球から約15.8光年先という比較的近くの恒星を公転する太陽系外惑星を2つ発見したとする研究成果を発表しました。2つの惑星はどちらも主星のハビタブルゾーン内を公転しているとみられています。
研究チームが発見を報告したのは、「くじら座」の方向にある赤色矮星「GJ 1002」を公転する系外惑星「GJ 1002 b」と「GJ 1002 c」です。各惑星の公転周期、最小質量、主星(GJ 1002)からの距離は以下の通りです。
●GJ 1002 b
・公転周期…約10.3465日
・最小質量…地球の約1.08倍
・主星からの距離…約0.0457天文単位
●GJ 1002 c
・公転周期…約20.202日
・最小質量…地球の約1.36倍
・主星からの距離…約0.0738天文単位
ハビタブルゾーンの範囲は恒星によって異なります。GJ 1002 bとGJ 1002 cは主星であるGJ 1002のすぐ近く(地球から太陽までの距離の10分の1未満)を公転しているものの、GJ 1002は太陽と比べて質量は約0.12倍・半径は約0.14倍と小さな赤色矮星(スペクトル型はM5.5 V)であり、表面温度は約3024ケルビン(摂氏約2751度)と低く、2つの惑星の公転軌道はハビタブルゾーンの中にあるとみられています。
今回見つかった系外惑星は地球から約15.8光年先と比較的近くにあることから、惑星の反射光や熱放射を捉えることで、特にGJ 1002 cの大気の特性を分析できる可能性があるといいます。研究に参加したIACのJonay I. González Hernándeさんは、GJ 1002 cの大気に酸素が存在するかどうかを調べるために、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が建設中の「欧州超大型望遠鏡(ELT)」による将来の観測に期待を寄せています。
■系外惑星の観測に用いられるトランジット法&視線速度法研究チームは今回、カラー・アルト天文台の3.5m望遠鏡に設置されている「CARMENES」と、ESOの「超大型望遠鏡(VLT)」に設置されている「ESPRESSO」の2台の分光装置を使用してGJ 1002の観測を行い、「視線速度法(ドップラーシフト法)」と呼ばれる手法で2つの系外惑星を発見しました。
「視線速度法」とは、系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、周期的に変化します。こうした主星の色の変化は、天体のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を得る分光観測を行うことで検出されます。視線速度法の観測データからは系外惑星の公転周期に加えて、系外惑星の最小質量を求めることができます。
【▲ 系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)
もう一つの「トランジット法」とは、系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット(transit)」が起こった時に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、系外惑星を間接的に検出する手法です。繰り返し起こるトランジットを観測することで、その周期から系外惑星の公転周期を知ることができます。また、トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、系外惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。
【▲ 系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)
Source
Image Credit: Alejandro Suárez Mascareño and Inés Bonet (IAC), NASA IAC - ESPRESSO and CARMENES discover two potentially habitable exo-Earths around a star near the Sun Media INAF - Due “Terre” potenzialmente abitabili a 16 anni luce A. Suárez Mascareño et al. - Two temperate Earth-mass planets orbiting the nearby star GJ 1002 (Astronomy & Astrophysics)文/松村武宏
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