期待の新素材”カーボンナノチューブ”が気候変動の解明に役立つかもしれない
sorae.jp / 2022年12月23日 16時0分
地球の周回軌道に位置する人工衛星は、地上や宇宙などから様々なデータをセンサーで収集しています。気候変動に大きく影響を及ぼす太陽光もまた、人工衛星が測定するデータのひとつです。アメリカ国立標準技術研究所(NIST)は、太陽光によって与えられるエネルギー量を測定するためのチップ(集積回路)ベースの装置を新たに開発しました。
地球の気候システムを特徴づける太陽定数気候システムに与えられるエネルギーの多くは太陽光に由来しています。太陽から地球に届くエネルギー量と地球から放出されるエネルギー量を計測することができれば、太陽光が地球に与えるエネルギー量を計測できます。このエネルギー量は太陽定数(全太陽放射照度あるいはTSI)と呼ばれています。
太陽定数は、1978年以降約40年間に渡り、アメリカの人工衛星「ニンバス」7号や「ACRIMSAT」、国際宇宙ステーションに設置された「TSIS-1」などによって監視されてきました。太陽から放射されたエネルギー量を計測する役割を担っているのは「ボロメーター」という放射計です。ボロメーターは、照射によって発生した熱で光のエネルギー量を測定する装置です。
TSIS-1のような従来の太陽放射照度モニター(Total Irradiance Monitor、以下TIM)は測定の不確かさが約0.01%未満と信頼性が高いものの、縦1.2メートル、横1.2メートル、高さ2.4メートル、質量363キログラムと大きく、比較的高価だという難点があったようです。
今回NISTが開発したのは、「コンパクト型太陽放射照度モニター(Compact Total Irradiance Monitor、以下CTIM)」と呼ばれる監視装置です。CTIMはTSIS-1の縮小版とも呼ぶべき装置で、6UサイズのCubeSat(※)に組み込まれています。
※…1Uサイズは約10×10×10センチメートルに相当する。
太陽から放射されるエネルギーを吸収するのは、シリコン基板上に配置されたカーボンナノチューブです。カーボンナノチューブは紫外線から赤外線まで幅広い波長の光を吸収するため、ボロメーターの設計に都合のよい素材だといいます。NISTは、カーボンナノチューブを使用することで約10分の1までコストを削減できるとしています。
NISTはすでにCTIMの試作機を作成し、ヴァージン・オービット社の空中発射ロケット「ランチャー・ワン(Launcher One)」を使って2022年7月2日に打ち上げました。CTIMには8個の放射計が設置されていて、そのうち2個は実際に太陽から放射されるエネルギー量の変化を監視。残る6個は太陽を定期的に観測するのみで、宇宙空間に晒されることでどのくらい劣化するのかを理解するのに役立てられるのだといいます。同装置は2年間データを収集する見込みです。
関連:ヴァージン・オービット、米国宇宙軍のミッションで衛星7機の打ち上げに成功(2022年7月5日)
【▲ CTIMのデモ動画(Credit: NASA)】
関連: ヴァージン・オービット、米国宇宙軍のミッションで衛星7機の打ち上げに成功
NISTのJohn Lehman氏は「CTIMはPoC(概念検証)の段階ではあるが、進展するにつれ、2年間のデータを収集し、科学者が(太陽定数に関する計量)標準を再定義できるだけの十分な量のデータとなるだろう」と期待を寄せています。
Source
・Image Credit: Tim Hellickson, LASP ・NIST - Measuring Sunlight from Space, on a Chip ・doi: 10.1117/12.2531308 - Compact total irradiance monitor: Flight demonstration ・University of Colorado Boulder - Total Solar Irradiance Data文/Misato Kadono
この記事に関連するニュース
-
環境配慮型原料、CNF活用に関する応用事例の技術資料を公開
PR TIMES / 2024年7月18日 12時15分
-
NASAとNOAAの静止気象衛星「GOES-U」打ち上げ成功 太陽の活動も観測
sorae.jp / 2024年7月13日 11時16分
-
優れた導電性や熱伝導性を有し、多様な分野への応用が進むカーボンナノチューブの最新動向を特集!月刊機能材料2024年7月号を7月7日に発売!
PR TIMES / 2024年7月8日 21時40分
-
リコーの宇宙用ペロブスカイト太陽電池が超小型衛星「DENDEN-01」に搭載
マイナビニュース / 2024年6月26日 18時3分
-
高強度レーヨンに迫る強度と伸度を両立した低環境負荷カーボンナノチューブ複合セルロース繊維を開発
共同通信PRワイヤー / 2024年6月25日 14時0分
ランキング
-
1大谷翔平&真美子さんのレッドカーペット中継に… 人気アイドルが「思いっきり映ってる」と話題
Sirabee / 2024年7月18日 15時40分
-
2「縁起の良い数字」のナンバープレートとは? “13種類”の人気番号ってなに? 「358」の気になる意味は?
くるまのニュース / 2024年7月19日 21時10分
-
3もうメンタルが崩壊しそう…最高月収60万円だった「65歳・元大手金融のサラリーマン」、定年後のハローワークで受けた屈辱
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月15日 7時15分
-
4「ダメ、ぜったい!」 暑い日の車内に「置きっぱなし」は超危険! 「爆発」の可能性も…! 放置したらいけないものとは?
くるまのニュース / 2024年7月20日 7時10分
-
5パスポート保有率17%の日本人に「海外旅行」は高嶺の花なのか? 空港関係者らに聞いてみた
オールアバウト / 2024年7月19日 21時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください