マンハッタン規模の宇宙都市をコスパよく建設するアイディアとは?
sorae.jp / 2023年1月23日 11時0分
建設コストを抑えながら、宇宙空間に居住地を建設するアイディアが考案されたようです。アメリカ・ロチェスター大学のPeter Miklavčič氏らの研究グループは、小惑星を建設資材として活用する宇宙都市の新たなアイディアを発案し、理論的に検証しました。
既存のスペースコロニー構想が抱える欠点とは研究グループは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴いアメリカ国内でロックダウン(都市封鎖)が実施されていた時期に、「オニールのシリンダー(O’Neill cylinder)」と呼ばれるスペースコロニーを安く建設する方法を検討しました。オニールのシリンダーとはプリンストン大学のGerard O’Neill教授が発案したスペースコロニーで、円筒状の構造物を回転させることで人工的な重力を作り出し、その内部を居住空間にするという構想です。しかし、従来のスペースコロニーのアイディアでは、アルミニウムやチタンといった建設資材を月などから調達・運搬するために莫大な建設コストがかかるといった課題があったようです。
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研究グループが建設コスト削減のために注目したのは、小惑星です。小惑星は約46億年前に太陽系が形成される最中に生成された、いわば惑星形成時の「残り物」であり、太陽の周りを無数に公転しています。ロチェスター大学によると、1マイル(約1.6km)以上の幅をもつ小惑星は約1000個存在すると推定されていて、豊富な建設資材になり得ると考えられています。実際、オーストリア・ウィーン大学のThomas Maindl氏らの研究グループは、小惑星の”中”に居住空間を作るアイディアを考案・検討しており、今回のMiklavčič氏らの研究グループも、このMaindl氏らのアイディアの検証を議論の出発点としています。
ただし、ほとんどの小惑星は硬い岩ではなく、石や砂どうしが弱い力で集積した「ラブルパイル天体」であることが、「イトカワ」や「ベンヌ」、「リュウグウ」などの小惑星の探査によって明らかになっています。そのため、人工重力を生み出すために小惑星を回転させたとしても、遠心力に耐えられるほど十分な強度はないので、回転し始めると壊れてしまうようです。
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Miklavčič氏らの研究グループは、小惑星が壊れやすいラブルパイル天体であることに着目して、円筒状の宇宙都市を建設する方法を提案しました。同グループはまず、カーボンナノファイバーのような高強度の素材で作られたメッシュのバッグを用意し、小惑星を覆う状況を想定しました。太陽光発電で得たエネルギーを使って小惑星を回転させると、遠心力によって岩塊は外側へと拡散するものの、メッシュのバッグによって円筒状に捕捉されるといいます。岩塊から構成される側壁は居住空間となるだけでなく、太陽から放射される宇宙線から身を守る盾としての役割も果たすようです。
研究グループの試算によると、半径約300mの「ベンヌ」を構成する岩塊を拡散させることで、半径約3km・長さ約3km・厚さ約2mの円筒状の側壁を形成できます。居住空間となる側壁内側の面積は約56平方km(マンハッタンほどの広さ)になる模様です。
飛行機が実現したなら宇宙都市も実現?ただし、研究グループは考案した宇宙都市の構想について、あくまでも「理論」に過ぎないと注釈しており、宇宙都市を建設するのに必要な技術は目下のところ存在しないとしています。
しかし、論文の共著者のひとりであるロチェスター大学のAdam Frank教授は、次のように宇宙都市の実現に期待を寄せています。
「宇宙都市の実現は、はるか未来の出来事だと感じるかもしれない。1900年まで存在しなかった飛行機に、現在では数千人もの乗客が座りながら、上空数マイルを時速数百マイルもの速度で飛行していることに気づかないうちはね」
Source
Image Credit: University of Rochester illustration / Michael Osadciw SPACE.com - We could build space cities in asteroids like in sci-fi with this wild concept University of Rochester - Cities on asteroids? It could work—in theory doi:10.3389/fspas.2021.64536 - Habitat Bennu: Design Concepts for Spinning Habitats Constructed From Rubble Pile Near-Earth Asteroids doi: 10.3389/fspas.2019.00037 - Stability of a Rotating Asteroid Housing a Space Station doi.org: 10.1063/1.3128863 - The colonization of space文/Misato Kadono
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