3つの宇宙望遠鏡の合作。多波長で捉えた棒渦巻銀河「NGC 1672」
sorae.jp / 2023年5月31日 21時0分
こちらは「かじき座」の方向約6000万光年先の棒渦巻銀河「NGC 1672」です。若く高温の青い星々に彩られた渦巻腕(渦状腕)の周囲を紫色の天体が飛び交っているような幻想的な姿をしています。棒渦巻銀河とは、中心部分に棒状の構造が存在する渦巻銀河のこと。棒状構造は私たちが住む天の川銀河をはじめ、渦巻銀河の半分程度が持つと考えられています。
実はこの画像、単一の望遠鏡で撮影されたものではありません。画像の作成には「ハッブル」宇宙望遠鏡、「チャンドラ」X線観測衛星、そして「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡で取得されたデータが使用されています。
NGC 1672の外観はハッブル宇宙望遠鏡で取得された光学観測データ(使用されたフィルターに応じて赤・緑・青で着色)によって示されています。ウェッブ宇宙望遠鏡で取得された赤外線の観測データ(同様に赤・緑・青で着色)は、銀河の内部に存在する塵やガスの分布を描き出しています。チャンドラX線観測衛星で取得されたX線の観測データ(紫で着色)は、伴星から流れ出たガスを取り込む中性子星やブラックホールに加えて、超新星残骸の存在を明らかにしているといいます。
このように、同じ天体を可視光線だけでなく赤外線、紫外線、電波、X線といった様々な波長の電磁波で観測することは「多波長観測」と呼ばれています。多波長観測を行うと、ある特定の波長だけで観測した時にはわからなかった性質や構造が見えてくるのです。
本記事に掲載したNGC 1672の画像は、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)やスミソニアン天体物理観測所のチャンドラX線センターから2023年5月23日付で公開されています。
Source
Image Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO; Optical: NASA/ESA/STScI; IR: NASA/ESA/CSA/STScI; Image Processing: L. Frattare, J. Major, and K. Arcand NASA/JPL - NASA’s Chandra, Webb Telescopes Combine for Arresting Views Chandra X-ray Center - NASA's Chandra, Webb Combine for Arresting Views文/sorae編集部
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