日欧の水星探査ミッション「ベピ・コロンボ」探査機が第3回水星スイングバイを実施
sorae.jp / 2023年6月21日 17時0分
日本時間2023年6月20日、欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水星探査ミッション「BepiColombo(ベピ・コロンボ)」の探査機による、水星でのスイングバイ(太陽を公転する天体の重力を利用して軌道を変更する手法)が実施されました。
BepiColomboは日本の水星磁気圏探査機「みお(Mercury Magnetospheric Orbiter)」と欧州の水星表面探査機「MPO(Mercury Planetary Orbiter)」の2機による水星探査ミッションです。ここに両探査機の水星周回軌道投入前までの飛行を担当する欧州の電気推進モジュール「MTM(Mercury Transfer Module)」が加わり、現在3機の機体は縦に積み重なった状態で飛行を続けています。
【▲ 打ち上げから9回のスイングバイを経て水星の周回軌道へ入るまでの軌道の変化を示した動画】
(Credit: ESA - European Space Agency)
BepiColomboのミッションでは2025年12月の水星周回軌道投入に向けて地球・金星・水星で合計9回のスイングバイが計画されていて、水星スイングバイは今回が3回目です。最接近時刻は日本時間2023年6月20日4時34分で、BepiColombo探査機は水星の夜側表面から約236km離れたところを通過しました。翌日の日本時間6月21日にはスイングバイ中に撮影された3点の画像がESAから公開されています。
1点目はMTMに搭載されているモニタリングカメラ(MCAM)で最接近の15分後に撮影された画像です。撮影時点での水星表面からの距離は約2536kmでした。細長い楕円形をしているスヴェインスドッティル・クレーター(Sveinsdóttir、長径約213km)は、水星表面に対して天体が斜めに衝突したことで形成されたと考えています。
スヴェインスドッティル・クレーターを引き裂くように走っているのは、長さ約600kmのビーグル断崖(Beagle Rupes)です。ESAによればこうした断崖は水星のあちこちで見つかっており、水星が冷えるにつれて収縮したために形成された可能性があるといいます。
2点目もMCAMで最接近の22分後に撮影された画像です。撮影時点での水星表面からの距離は約4000kmでした。ビーグル断崖の右下にはジャマイカの芸術家Edna Manley(エドナ・マンリー)にちなんだマンリー・クレーター(Manley、直径約218km)があります。マンリー・クレーターは国際天文学連合(IAU)の惑星系命名ワーキンググループによって2023年6月13日付で命名されたばかりです。
MCAMチームの一員であるオープン大学のDavid Rothery教授によると、マンリー・クレーターでは初期の水星における炭素に富んだ地殻の名残の可能性がある暗い(反射率が低い)物質が掘り起こされているといいます。同様の物質が存在する他の場所とともに、マンリー・クレーターはBepiColomboミッションで詳しく調査される予定です。
3点目はMCAMで最接近の55分後に撮影された画像です。撮影時点での水星表面からの距離は約1万1780kmでした。BepiColombo探査機の本体とアンテナの間に水星が見える様子を、ESAは「水星を抱きしめているようだ」と表現しています。
2025年12月に水星周回軌道へ入るために、BepiColombo探査機は水星スイングバイをあと3回行う必要があります。次の第4回水星スイングバイは2024年9月5日に実施される予定だということです。
ただいま、水星。また行ってきます。
すぐ戻ってくるからね#第3回水星スイングバイ#BepiColombo #みお #MercuryFlyby #水星の魔女 #Gwitch pic.twitter.com/XBZB7izSyK
Source
Image Credit: ESA/BepiColombo/MTM ESA - A trio of images highlight BepiColombo’s third Mercury flyby文/sorae編集部
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