ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で超新星爆発後に生成された大量の塵を発見
sorae.jp / 2023年7月12日 20時28分
こちらは「はくちょう座」の方向約2200万光年先の渦巻銀河「NGC 6946」の姿。過去100年ほどの間に10件もの超新星が見つかっていることから、NGC 6946は「花火銀河(Fireworks Galaxy)」とも呼ばれています。画像にはそのうちの2つ、2004年9月に発見された「SN 2004et」と、2017年5月に発見された「SN 2017eaw」の位置が書き込まれています。
ジョンズ・ホプキンス大学/宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)のMelissa Shahbandehさんを筆頭とする研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ(James Webb)宇宙望遠鏡」による観測の結果、これら2つの超新星にともなって新たに生成された大量の塵を検出したとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文はMonthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報、MNRAS)に掲載されています。
最初期の宇宙には水素・ヘリウム・ごくわずかなリチウムといった軽い元素しか存在しておらず、特に惑星の材料として欠かせない塵(星間塵、星間ダスト)のもととなる重元素(ここでは水素やヘリウムよりも重い元素全般)は、初代星(ファーストスター)とも呼ばれる宇宙最初の世代の星々が誕生した後に生成されたと考えられています。ウェッブ宇宙望遠鏡を運用するSTScIによると、太陽よりも8倍以上重い大質量星が超新星爆発を起こした後、残されたガスが膨張して温度が下がると炭素などが集まって塵が形成されることから、超新星爆発は塵の主な供給源の1つではないかと考えられてきました。
しかし、Shahbandehさんによると、これまでに得られていた“超新星爆発が塵の供給源であることを示す直接的な証拠”は乏しく、従来の観測能力で研究できたのは1987年2月に約17万光年先の大マゼラン雲(大マゼラン銀河)で発見された超新星「SN 1987A」のみだったといいます。SN 1987Aでは発見から25年後の2012年に実施されたチリの「アルマ望遠鏡(ALMA)」による観測の結果、爆発後に新たに形成されたとみられる塵(質量は太陽の約4分の1)が残骸の中心部で検出されています。
今回、研究チームはウェッブ宇宙望遠鏡の「中間赤外線観測装置(MIRI)」を使用して、SN 2004etとSN 2017eawが検出された位置を2022年9月に観測。その結果、SN 2004etでは地球約4600個分(太陽の質量の1.4パーセント)以上、SN 2017eawでは地球約130個分(太陽の質量の0.04パーセント)以上の塵が、超新星爆発の噴出物内に存在することが判明したといいます。
超新星爆発の後に形成された塵は周囲の物質から跳ね返ってきた衝撃波によって破壊される可能性があるものの、爆発から18年および5年という段階で検出された塵の存在は塵が衝撃波に耐えられることを示唆しているといい、超新星が重要な“塵の工場”であることを示す証拠だとして受け止められています。また、今回検出された塵は氷山の一角に過ぎず、もっと低温の検出されていない塵が隠されている可能性もあるといいます。
今回の成果について研究チームは、ウェッブ宇宙望遠鏡の登場で新たに得られた超新星および超新星にともなう塵の生成についての研究能力や、ウェッブ宇宙望遠鏡の観測によって超新星爆発を起こした星に関してどのような情報が得られるのかを示唆するものにすぎないと強調しており、研究を進めるにはより多くの観測が必要だと指摘しています。地球に住む私たちとも無縁ではない宇宙の塵がどのようにして形成されてきたのかについて、ウェッブ宇宙望遠鏡は新たな知見をもたらすことになりそうです。
Source
Image Credit: KPNO, NSF's NOIRLab, AURA / NASA, ESA, CSA, Ori Fox (STScI), Melissa Shahbandeh (STScI) Image Processing: Alyssa Pagan (STScI) STScI - Webb Locates Dust Reservoirs in Two Supernovae Shahbandeh et al. - JWST observations of dust reservoirs in type IIP supernovae 2004et and 2017eaw (MNRAS)文/sorae編集部
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