遠い宇宙から東京やニューヨークを観測? 都市の反射光の観測可能性を検証
sorae.jp / 2023年7月16日 21時0分
私たちは文明を持つ宇宙でただ1つの知的生命体なのでしょうか?それとも他にも文明があるのでしょうか?
科学の発展により、生命を宿すであろう天体が次々と見つかっており、恐らく私たちはひとりぼっちではないと考えられています。ただ、仮に地球外文明が存在するとしても、地球の文明しか知らない私たちにとって、それがどのような文明なのかを知る術はありません。
しかし、なかには人類と同じように天体の表面に建造物を構築する文明があるかもしれません。その建造物は人類の建造物と同じように金属やガラスに覆われていて、恒星から降り注ぐ光を反射して輝いていることでしょう。
ここまで想像すると、一つの可能性を考えずにはいられません。私たちは、その輝きを検出することができるのではないでしょうか?
もしも天体表面に光を反射する物体が存在するとしても、物体からの反射光は限られた面積からのものになるはずです。反射光が地球に届く角度は極めて狭い範囲であるため、球体である天体表面からの反射光のうち、地球に届くものはほんの少しであるはずです。SF映画では、天体表面が全て都市に覆われた高度な文明が描かれることもありますが、仮にそのような天体があったとしても、地球に届く反射光はごくわずかな量となります。
インド理科大学院のBhavesh Jaiswal氏は、どの程度の大きさの都市ならば地球でも観測可能なのかを計算しました。まず、地球と同じサイズの惑星を仮定した場合、反射光が届く都市の限界サイズは、惑星表面の総面積の5.4ppm(0.00054%、5400万分の1)、約2800平方キロメートルであると計算されました。これは東京都市圏やニューヨーク都市圏の数分の1程度であり、より小規模の都市でも十分であることを意味します。
では、実際に都市からの反射光は検出可能なのでしょうか?あるいは逆に、遠い宇宙から東京やニューヨークの存在を知ることはできるのでしょうか?条件次第ではあるものの、それは不可能ではないと考えられます。
地球に届く反射光の持続時間は、天体の自転速度が遅ければ遅いほど長くなります。都市が存在する緯度や惑星の軌道傾斜角によっては、1回の自転ごとに都市の反射光が繰り返し届く場合もあるでしょう。高層ビルは側面でも光を反射するので、理想的な角度からずれていても反射光が届く場合もあります。また、建造物がガラスで覆われている場合の反射光はそこまで多くありませんが、仮にアルミニウムで覆われている場合、都市の反射光は惑星そのものが反射する光の数倍にもなる可能性があります。
Jaiswal氏は、最も検出しやすいのはスペクトル分類がM型の恒星(赤色矮星)の周りを公転する惑星の都市の反射光だと述べています。都市の有無を問わず、惑星からの反射光は恒星から直接届く光と比べて非常に弱いものです。太陽と同じG型の恒星の場合、地球サイズの惑星からの光は100億分の1程度にしかなりません。一方、太陽よりもずっと暗いM型の恒星の場合、惑星からの光は1億分の1程度になります。そして重要なのは、都市からの反射光も同程度の明るさになると考えられる点です。つまり、赤色矮星を公転する惑星に都市が存在する場合、惑星からの反射光が瞬間的に何倍も明るくなる様子が捉えられる可能性があるということになります。スペクトル分析などを行えば、それが人工物による現象なのか、それとも水面のような自然物によるものなのかを区別することもできるでしょう。
もちろん、私たちは今のところ地球外文明が存在する証拠を見つけておらず、そのような反射光も見つかっていません。しかし、太陽系外惑星からの光を直接検出する技術は進歩し続けており、光を反射したものが自然物なのか人工物なのかを区別できる可能性は十分にあります。また、現時点では構想段階ではあるものの、惑星表面の様子を画像化する宇宙望遠鏡も提案されています。すぐには実現しなくとも、近い将来に、地球外文明が築いた都市からの反射光を検出する可能性もゼロではないと考えられます。
Source
Bhavesh Jaiswal. “Specular reflections from artificial surfaces as Technosignature”. (arXiv) Scott Alan Johnston. “We Could See the Glint off Giant Cities on Alien Worlds”. (Universe Today)文/彩恵りり
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