地球外文明の信号は星の光のように “またたく” ? 1回限りの信号でも見分ける方法を考案
sorae.jp / 2023年8月1日 20時55分
私たち人類はこの宇宙で唯一の文明を持つ知的生命体なのでしょうか、それとも他にも文明を持つに至った知的生命体はいるのでしょうか。
この疑問を解決するために行われている取り組みの1つが、宇宙から届く様々な電波を分析し、その中から地球外文明に由来すると思われる信号を見つけ出す「SETI(地球外知的生命体探査)」です。ただ、SETIは1960年代以降興味深い信号を何度も検出していますが、地球外文明に由来すると特定された信号は今のところ1つもありません。
![【▲ 参考画像:地球外文明に由来する信号の捜索に使用された施設の1つ、パークス天文台の64m電波望遠鏡(Credit: S.Amy, CSIRO)】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2019/06/parkesdusklge.jpg)
【▲ 参考画像:地球外文明に由来する信号の捜索に使用された施設の1つ、パークス天文台の64m電波望遠鏡(Credit: S.Amy, CSIRO)】
電波で発信された人工的な信号は、自然由来の信号と比べて周波数の幅が狭い (狭帯域) と予測されており、SETIではそのような特徴を持つ電波を探しています。ところが、人工衛星から電子レンジに至る人類が作り出した様々な発信源からも、地球外文明からの信号と誤認されやすい信号が発せられています。そのため、捉えた信号が地球外文明のものであると推定する一つの根拠として、時間を空けて同じ方向から複数回検出されることが求められます。
しかし、これまでにSETIで捉えられた興味深い信号は、全て1回だけの検出に留まっています。そしておそらく、将来的に本物の地球外文明の信号を受信したとしても、それは1回限りの検出に留まると予想されます。地球外文明が意図的に地球に向けて信号を送信するかどうかは不明なので、地球に届く地球外文明の信号は非意図的に漏れ出た電波であることが予想されます。このような信号を私たちが捉えるには、電波の送信された方向に偶然地球があるという、正確な位置条件を満たさないといけません。星々はそれぞれ固有の方向・速度で動いているので、そのような位置条件がたまたま満たされるのは、あったとしても1回限りである確率がとても高いと言えるのです。
![【▲ 図: 1977年に検出された、当時地球外文明のものであると疑われた信号。走り書きのメモから「Wow!シグナル」と呼ばれるこの信号はその後一度も再検出されておらず、現在では地球由来のものであると考えられている。 (Image Credit: Big Ear Radio Observatory & NAAPO (Public Domain) ) 】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2023/07/2023-07-28-SETI-Wow_signal.jpg)
【▲ 図: 1977年に検出された、当時地球外文明のものであると疑われた信号。走り書きのメモから「Wow!シグナル」と呼ばれるこの信号はその後一度も再検出されておらず、現在では地球由来のものであると考えられている(Credit: Big Ear Radio Observatory & NAAPO (Public Domain))】
では、1回限りの信号が何に由来するのか区別することはできるのでしょうか。カリフォルニア大学バークレー校のBryan Brzycki氏などの研究チームは、条件次第で可能であるとする研究結果を発表しました。
カギとなるのは、電波に対する「星間物質」の影響です。宇宙は真空の空間ですが、非常に希薄ながらも物質が存在しており、その中には電波に影響する自由電子も含まれています。長い距離を移動する電波は星間物質の影響を受けることが電波天文学で確認されており、現在ではその影響度を予測することができます。
Brzycki氏らは「地球外文明の信号は周波数の幅が狭い」という前提で、星間物質の影響を調査しました。その結果、星間物質によって電波の屈折と干渉が起こり、1分未満の時間で電波の強度が変化する「シンチレーション(scintillation)」が起こることが分かりました。
これはちょうど、夜空の星がまたたく現象と似ています(シンチレーションの元々の意味は「星のまたたき」)。地上から見る星は大気の揺らぎの影響を受けて光の進む向きが曲げられます。すると、光の波が重なり合った場所で光を強め合う・弱め合う現象が起こるため、星の明るさが明るくなったり暗くなったりするように見える現象が起こります。これと同じことが電波でも起こるだろうとBrzycki氏らは予測しています。
重要なのは、シンチレーションによって電波源のおおよその距離が推定できる点です。肉眼的な星のまたたきは、遠く離れた恒星では起こりますが、近くにある惑星では起こりません。これは、惑星がある程度の大きさを持って見える光源なのに対して、恒星はあまりにも遠く離れているために、点状の光源として見えるからです。
Brzycki氏らが予測した電波信号のシンチレーションも、遠く離れた1点の電波源から届くことで起こる現象です。この性質は、電波望遠鏡などのすぐ近くで発せられた地球由来の電波信号と区別する上で重要です。また、地球外文明の信号を受信できる機会が1回限りだったとしても、シンチレーションは検出可能であるため、その信号が地球外に由来するのかどうかを判断する上でやはり重要です。
ただし、非常に薄く存在する星間物質の影響を受けて電波信号がシンチレーションが起こるには、長い距離を伝達する必要があります。Brzycki氏らは、検出可能なシンチレーションが起こるのは、信号が1万光年以上の距離を伝搬した場合に限られると考えています。つまり、宇宙のスケールでは “ご近所” と言えるほど近くにある地球外文明の検出には、今回の方法は使えないことになります。
Source
Bryan Brzycki, et.al. “On Detecting Interstellar Scintillation in Narrowband Radio SETI”. (The Astrophysical Journal) Robert Sanders. “When ET calls, can we be sure we’re not being spoofed?”. (University of California, Berkeley)文/彩恵りり
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