小惑星「2001 CC21」は「イトカワ」に似ていることが判明 JAXA探査機「はやぶさ2」の接近探査予定天体
sorae.jp / 2023年8月3日 19時30分
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機「はやぶさ2」は、2019年に162173番小惑星「リュウグウ」の表面からサンプルを採集することに成功し、サンプルを搭載したカプセルは2020年に無事帰還しました。初代「はやぶさ」と異なり、はやぶさ2本体は地球に再突入をせず、現在でも宇宙空間を飛行中です。
はやぶさ2は拡張ミッション「はやぶさ2♯(ハヤブサ・ツー・シャープ)」が計画されており、まだ番号が付与されていない小惑星「1998 KY26」の接近探査が2031年に計画されています。その拡張ミッションの途中、2026年には98943番小惑星「2001 CC21」から100km以内をフライバイする予定であるため、同小惑星の詳細な観測が計画されています。
2001年の発見以降、2001 CC21は何度か観測されてきましたが、その性質はこれまでのところあまり詳細には判明していませんでした。しかし、2023年に入って観測に適したチャンスが訪れます。2001 CC21は2023年3月21日に地球から約1900万km (地球と月との平均距離の約50倍) まで接近しましたが、これほど接近するのは発見直後の2001年2月27日(約1700万km)と2004年9月14日(約1300万km)以来のことであり、次回ははやぶさ2が接近する直前の2025年8月28日 (約2000万km) しかありません。
そこで、ソウル大学校のJooyeon Geem氏、北海道大学大学院の髙木聖子氏、なよろ市立天文台の内藤博之氏などの国際研究チームは、2023年1月から3月にかけて2001 CC21の観測を行い、そのデータを分析することで2001 CC21表面の組成分析を行いました。
研究チームは、なよろ市立天文台にある北海道大学のピリカ望遠鏡、東広島天文台にある広島大学のかなた望遠鏡、そしてスペインにあるラ・パルマ天文台の北欧光学望遠鏡を使用して、2001 CC21からの光、特に偏光特性 (※1) を観測しました。その結果、偏光反転角は約20度であること、約0.9µmおよび約1.9µmの吸収スペクトル (※2) と0.23±0.04の幾何アルベドを持つことがわかりました。これらの測定値は、2002 CC21が表面に輝石という鉱物を持つS型小惑星に分類されることを意味しています。ハワイにあるNASA(アメリカ航空宇宙局)の赤外線望遠鏡施設で過去に実施された2001 CC21の観測でもS型小惑星である可能性が示されており、これらの結果は互いに矛盾しません。
※1…光 (可視光線) は電磁波の一種であり、一定の周期で振動する波である。反射した物体の化学組成や表面状態などの特性によって、特定の方向に振動する波に強弱が生まれる。これが偏光と呼ばれる性質であり、偏光特性を調べることによって表面を構成する物質を知ることができる。
※2…光を反射した物質は、特定の波長の光を吸収することがある。この吸収された波長を吸収スペクトルと呼び、そこから逆算することで物質の化学組成を推定することができる。
S型小惑星は岩石質の物質に富む “石っぽい” 小惑星であり、その代表例は初代はやぶさが探査を行った25143番小惑星「イトカワ」です。2001 CC21はこれまで限られた分析結果に基づきL型小惑星 (※3) であると推定されていたため、小惑星の分類が変更されることは重要です。S型小惑星の接近探査は初代はやぶさによるイトカワが唯一の例であるため、はやぶさ2が2001 CC21を探査することで、2つのS型小惑星の類似点と相違点を比較分析することが可能となります。2001 CC21は推定直径が440~530mであり、約330mのイトカワと類似している点も、比較分析研究で役に立つことでしょう。
※3…詳細がよくわかっていない、比較的珍しいタイプの小惑星。S型小惑星と異なり、輝石が見つかっていない。
Source
Jooyeon Geem, et.al. “Spectral type and geometric albedo of (98943) 2001 CC21, the Hayabusa2# mission target”. (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters) (arXiv) 北海道大学 & なよろ市立天文台. “はやぶさ2の次なる目標「小惑星2001 CC21」組成が判明~はやぶさ2拡張ミッションへの貢献に期待~(理学研究院 講師 髙木聖子)” (北海道大学)文/彩恵りり
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