恒星を切り裂く “相対論的刃” を発見 長時間輝くガンマ線バーストに関連か
sorae.jp / 2023年10月27日 21時0分
「ガンマ線バースト」は宇宙で最も高エネルギーな現象の1つですが、代表的な謎の1つは、長時間持続するガンマ線バーストの発生メカニズムです。
ニューヨーク大学のMarcus DuPont氏とAndrew MacFadyen氏の研究チームは、恒星の崩壊時に赤道方向から激しいプラズマの流れが生じる現象が発生することをシミュレーションにより突き止めました。この流れは光速に近い速度で運動し、恒星を切り裂くのに十分であると表現できることから、著者はこの現象を口語的に “相対論的刃(Relativistic Blades)” と名付けています。
■ガンマ線バーストは謎の多い現象「ガンマ線バースト」は、短時間に高エネルギーのガンマ線を放出する宇宙で最も高エネルギーな天文現象の1つで、太陽よりもずっと質量の大きな恒星で発生する超新星爆発に伴って発生する現象であると考えられています。しかし、発生メカニズムにはまだ多くの謎が残されています。
大きな謎の1つは、ガンマ線バーストがなぜ大量のエネルギーを限られた範囲に放出するのかについてです。ガンマ線バーストのエネルギーはあまりにも多く、ごく一部の範囲にのみ放出されたと考えなければ説明がつかないと考えられています。このため、エネルギーの放出方向を絞るメカニズムが必要となります。
現在支持されている説は、恒星の中心核で発生する「マグネター」の生成によるというものです。中心核で核融合が停止すると、中心核は重力で潰れる重力崩壊が発生し、非常に高密度で自転速度の速いマグネターが発生します。マグネターは非常に強力な磁場を持ち、電気を帯びた粒子であるプラズマを高速で運動させます。プラズマの流れと恒星を構成する粒子同士の衝突で発生するエネルギーの放出が、ガンマ線バーストの源になると考えられています。
現在の研究では、このメカニズムで自転軸方向のエネルギー放出を説明できており、これは短時間輝くガンマ線バーストについて良く説明しています。しかし数は少ないものの、より長時間輝くガンマ線バーストも観測されており、このメカニズムでは説明不足でした。
■恒星の中心から外に飛び出す “刃” を発見DuPont氏とMacFadyen氏の研究チームは、恒星内部での活動をモデル化し、物質やエネルギーの流れをシミュレーションしました。その結果、これまでに知られていないエネルギーの流れが生じることがあるのを突き止めました。
マグネターの自転速度が極めて早い場合、磁場の変化の激しさから、粒子の流れが赤道方向に集中します。激しいプラズマの流れはマグネターの赤道方向、つまり恒星そのものの赤道方向に発生します。流れるプラズマの速度はほぼ光速に達する一方で、その厚さは恒星の大きさに対して非常に薄いため、プラズマは恒星を飛び出して半径の数倍の距離まで到達し、その過程で大量のエネルギーが放出されることが分かりました。
このプラズマの流れは、線的な形状であるジェットとは異なり面的に拡がっていることから、研究チームは口語的に “薄板( Lamina)” または “刃(Blades)” と名付けました。そして速度の速さから、研究チームは “相対論的刃” と呼んでいます。プラズマの流れが赤道方向から外に飛び出す様は、恒星を2つに切り裂くのに十分であると表現できるためです。
■研究は初期段階相対論的刃が発生する状況では、典型的な超新星爆発の50倍(約5×10の45乗ジュール)に相当するエネルギーが放出されると考えられます。総エネルギーと放出時間は、長時間持続するガンマ線バーストに適合するため、研究チームはこれがガンマ線バーストのカギではないかと考えています。
今回の研究は、相対論的刃がガンマ線バーストと適合することを証明したに過ぎず、研究は初期段階の状態です。研究チームは次の段階として、刃が時間経過によってどのような変化をするのか、そして最終的な恒星の運命にどう関与するのかを調べる予定です。
Source
Marcus DuPont & Andrew MacFadyen. “Stars Bisected by Relativistic Blades”. (arXiv) Paul Sutter. “Ultra-powerful plasma 'blades' could slice entire stars in half, new paper suggests”. (Live Science)文/彩恵りり
この記事に関連するニュース
-
探査機「ボイジャー2」のデータが明かす天王星の謎、38年越しの科学的発見
マイナビニュース / 2024年11月19日 17時41分
-
現代社会で最も必要とされている装置の実証機製作者を募集します。
@Press / 2024年11月18日 13時30分
-
1秒間に716日が過ぎる! 自転が最速の中性子星の1つ「4U 1820-30」を発見
sorae.jp / 2024年11月17日 21時0分
-
アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな重力の謎
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月15日 14時0分
-
宇宙初期の超大質量ブラックホール、誕生の謎解明か NASAらの研究
財経新聞 / 2024年11月8日 9時47分
ランキング
-
1コンビニ大手3社の「肉まん」「高級豚まん」を実食。この冬に食べるべき“コスパ圧倒的”の肉まんは
日刊SPA! / 2024年11月24日 15時52分
-
2品川イオンスタイル「最強フードコート」の実態 太っ腹にも程がある?自由すぎる食のスポットだ
東洋経済オンライン / 2024年11月24日 12時0分
-
3とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
-
4小泉孝太郎がやっている「納豆の最高においしい食べ方」 タレ半分、“あるもの”をたっぷり
Sirabee / 2024年11月22日 16時15分
-
5【ワークマン】2900円の「あったか防水シューズ」を履いてみた 滑らない&水が入ってこない“おしゃれシューズ”
Fav-Log by ITmedia / 2024年11月21日 5時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください