恐竜が生きていた時代の地球は見つけやすい? 過去の地球を観測した結果をシミュレーション
sorae.jp / 2023年11月24日 11時22分
現在の「地球」の酸素濃度は21%ですが、過去の地球の酸素濃度は様々な値に変化していました。仮に過去の地球と似た環境を持つ太陽系外惑星を観測した場合、どのような観測データが得られるのでしょうか?特に注目されるのは、酸素とオゾンまたはメタンの組み合わせで見つかる「バイオシグネチャー」(生命活動と関連していると考えられる指標)に関連した大気分子を見つけられるかどうかです。
コーネル大学のRebecca C. Payne氏とLisa Kaltenegger氏の研究チームは、地球に大型の生物が出現した「顕生代」の期間にほぼ等しい、5億年間の大気組成をシミュレーションし、望遠鏡で大気の観測を行った場合の観測データを推定しました。その結果、酸素濃度が大幅に高かった今から3億年前から1億年前までの期間は、バイオシグネチャーを観測しやすいことが分かりました。これは地球に恐竜が生息していた時代に相当します。
![【▲図1: 顕生代の期間中の地球の酸素濃度の変化。現在の地球は21%ですが、過去の地球は10%以下から最大35%まで変化したと考えられています。 (Image Credit: Rebecca Payne (Carl Sagan Institute) ) 】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2023/11/2023-11-20-1102_graphic_0.png)
【▲図1: 顕生代の期間中の地球の酸素濃度の変化。現在の地球は21%ですが、過去の地球は10%以下から最大35%まで変化したと考えられています(Credit: Rebecca Payne (Carl Sagan Institute))】
■地球の酸素濃度は歴史を通じて変化している「地球」は生命が見つかっている、今のところ唯一の天体です。生命の発生条件はよくわかっていないため、生命がいる可能性のある惑星を探す上で、今のところ参考となるのは地球の環境だけです。このため、太陽系から遠く離れた「太陽系外惑星」の観測では、地球と似たような環境であるかどうかに関心が持たれています。
特に関心がもたれているのは、生命活動に関連すると考えられる「バイオシグネチャー」という指標の観測です。大気中に「酸素」と共にオゾンまたはメタンが見つかると、それはバイオシグネチャーである可能性があります。
しかし、地球の環境は歴史を通じてずっと同じだったわけではありません。酸素濃度に限って見ても、その濃度は現在の21%に至るまでの間に大幅に変化してきました。目に見える大きさの生物が出現したのは、約5億4000万年前から現在までの「顕生代」の期間ですが、顕生代の期間中、大気中の酸素濃度は少ない時で10%以下、多い時は最大で35% (※) まで変化しました。では、酸素濃度の変化によって、他のバイオシグネチャーも変化するのでしょうか?
※…酸素濃度が35%を超えると、一度燃えだした火災は自然鎮火することがないと考えられています。そのような大火災の痕跡がないことや、その他の地質学的証拠から、地球の酸素濃度は35%を越えたことはないと考えられています。
■過去の地球はバイオシグネチャーが出やすいと判明![【▲図2: GEOCARBとCOPSEのそれぞれのモデルで推定されたバイオシグネチャーを示す大気分子の吸収スペクトル。3億年前から1億年前までのグラフ (より薄い色) は、現在の地球 (灰色) よりも吸収スペクトルが大きい。 (Image Credit: R. C. Payne & L. Kaltenegger) 】](https://sorae.info/wp-content/uploads/2023/11/2023-11-20-slad147fig4.jpeg)
【▲図2: GEOCARBとCOPSEのそれぞれのモデルで推定されたバイオシグネチャーを示す大気分子の吸収スペクトル。3億年前から1億年前までのグラフ (より薄い色) は、現在の地球 (灰色) よりも吸収スペクトルが大きい(Credit: R. C. Payne & L. Kaltenegger)】
Payne氏とKaltenegger氏の研究チームは、過去の地球環境をシミュレーションし、バイオシグネチャーがどのように変化するのかを調査しました。よく確立した気候モデルである「GEOCARB」と「COPSE」を使用し、5億年前から現在までを1億年ごとに時間を区切った上で、大気の高度ごとの酸素、オゾン、メタン、水、二酸化炭素の濃度をシミュレーションしました。そして、それぞれの大気を観測した場合に、赤外線領域での吸収スペクトル (大気分子によって吸収される光の波長) がどのように観測されるのかを想定しました。
その結果、酸素濃度が最も高い30%だった期間を含む、今から3億年前から1億年前までの期間は、現在の地球よりもバイオシグネチャーがはっきりしていることが分かりました。これは恐竜がいた中生代 (2億5200万年前から6600万年前) の期間を含んでおり、高い酸素濃度が大型動物の出現と関連していると考えられている期間です。今回の成果を簡単に言うならば、恐竜がいたころの地球は、現在の地球よりも観測しやすいことを意味しています。
■恐竜がいたころの地球はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で見つけられる?地球で巨大な生物が出現していた環境の方が、現在の地球よりも観測で見つけやすいというのは興味深い発見です。もし将来の観測で地球と似たような惑星を見つけた場合、そこには恐竜並に大きな生物がいるのかもしれません。
また、今回のシミュレーションで得られた吸収スペクトルは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」で観測可能な波長および感度を示しています。過去の地球と似たような環境の惑星が存在する場合、発見できる可能性があるという点はとても興味深いことです。
Source
R. C. Payne & L. Kaltenegger. “Oxygen bounty for Earth-like exoplanets: spectra of Earth through the Phanerozoic”. (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters) James Dean. “Jurassic worlds might be easier to spot than modern Earth”. (Cornell Chronicle)文/彩恵りり
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