実は二重星だった ウェッブ宇宙望遠鏡で捉えた若き天体「HH 797」
sorae.jp / 2023年12月5日 10時50分
こちらの画像、左右にたなびく赤い煙のような天体は「ペルセウス座」の方向約1000光年先のハービッグ・ハロー天体「Herbig-Haro 797(HH 797)」です。
ハービッグ・ハロー天体は若い星の周囲に見られる明るい星雲状の天体です。若い星は周囲の物質を取り込んで成長していますが、恒星風やジェットとしてガスを流出させてもいます。若い星から流れ出たガスは星の周囲に広がるガスや塵に衝突して衝撃波を形成し、衝突された物質は励起して光を放出します。その様子がハービッグ・ハロー天体として観測されていると考えられています。
この画像は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」で取得したデータをもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています。
欧州宇宙機関(ESA)によると、HH 797として観測されているジェットは、画像中央右下の暗い結び目のような部分にある若い星から双方向(この画像では左右の方向)に噴出しています。過去に行われた地上からの観測の結果、星から一定の距離以上離れたジェットの視線方向の速度は、東側(画像の下方向)の端と西側(画像の上方向)の端で異なることが知られていました。
HH 797のジェットに生じた速度の差は、ジェット自体の回転が理由だとこれまでは考えられていました。ところが、ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測の結果、一対だと思われていたジェットが実はほぼ平行に流れる二対のジェットであり、HH 797は単一の星ではなく二重星だったことが明らかになったといいます。発生源の異なる二対の平行なジェットが地球からは重なるように見えていたため、東西の端に速度差が生じた一対のジェットだと解釈されていたというわけです。
若い星はその材料となったガスや塵の雲に埋もれていますが、赤外線は塵に遮られにくいため、ウェッブ宇宙望遠鏡の高感度な赤外線観測装置はハービッグ・ハロー天体を観測するのに最適だということです。冒頭の画像は“ウェッブ宇宙望遠鏡の今月の画像”として、ESAから2023年11月28日付で公開されています。
Source
ESA/Webb - A prominent protostar in Perseus文/sorae編集部
この記事に関連するニュース
-
限界の40倍以上で成長? 初期宇宙の巨大なブラックホールをウェッブ宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年11月8日 21時53分
-
一等星「ベガ」のデブリ円盤は驚くほど滑らか。ウェッブとハッブルが観測
sorae.jp / 2024年11月7日 20時59分
-
幻の銀河とも呼ばれる渦巻銀河「M74」 ウェッブ宇宙望遠鏡が再び撮影
sorae.jp / 2024年11月5日 21時23分
-
じーっと見つめる目のような相互作用銀河 ハロウィンにあわせNASAやESAが紹介
sorae.jp / 2024年11月1日 16時58分
-
ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した小マゼラン雲の散開星団「NGC 602」
sorae.jp / 2024年10月28日 20時57分
ランキング
-
1煙草を「のむ」ってわかりますか?古い注意書から気付かされた日本語の変化
よろず~ニュース / 2024年11月24日 12時10分
-
2小泉孝太郎がやっている「納豆の最高においしい食べ方」 タレ半分、“あるもの”をたっぷり
Sirabee / 2024年11月22日 16時15分
-
3ナッツを食べると認知症予防になるのか…理想は1日30g
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月24日 9時26分
-
4品川イオンスタイル「最強フードコート」の実態 太っ腹にも程がある?自由すぎる食のスポットだ
東洋経済オンライン / 2024年11月24日 12時0分
-
5「既婚者よりも経済的に余裕がある」だけじゃない…末期がんの医療ジャーナリスト(59歳)だから気づけた「独身がん患者」のメリット・デメリット
文春オンライン / 2024年11月24日 6時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください