H3ロケット試験機2号機のペイロードとは? ロケット性能確認用ペイロードと小型副衛星2機を搭載
sorae.jp / 2024年2月16日 17時7分
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「H3」ロケット試験機2号機が日本時間2024年2月17日9時22分に打ち上げられる予定です。試験機1号機によるH3の初飛行は2023年3月7日に実施されましたが、2段目の「LE-5B-3」エンジンに点火できず打ち上げは失敗し、搭載されていた先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」は軌道投入できませんでした。試験機1号機の打ち上げ失敗を受けて、試験機2号機では「ロケット性能確認用ペイロード(VEP-4)」が搭載されます。また小型副衛星としてキヤノン電子株式会社の「CE-SAT-IE」、セーレン株式会社が中心となって開発した「TIRSAT」が搭載されます。
【▲ 搭載が完了したロケット性能確認用ペイロード(VEP-4、中央)。衛星分離部(PAF)にはキヤノン電子の「CE-SAT-IE」(左)とセーレン株式会社が中心となって開発した「TIRSAT」(右)が搭載されている(Credit: JAXA)】 <ロケット性能確認用ペイロード(VEP-4)>三菱重工業が製造したロケット性能確認用ペイロード(VEP-4)は「だいち3号」と同じ約2.6トンの質量を持ち、全長は約3.5メートルあります。VEP-4は打ち上げから1時間48分後、第2段機体を軌道離脱させるための2回目のエンジン燃焼が停止(SECO2)した後に分離確認試験が行われます。
【▲ ロケット性能確認用ペイロード(VEP-4)の外観。全長は約3.5メートル、質量は約2.6トン(Credit: JAXA)】VEP-4は衛星分離部(PAF)にストッパボルトとクランプバンドを用いて結合されています。分離試験はクランプバンドが外されることにより実施されますが、VEP-4はストッパボルトでも衛星分離部と固定されているため、実際には完全に分離・放出されるのではなく第2段機体に保持されたままの状態になります。
【▲ VEP-4の分離に関する説明図(H3ロケット試験機2号機フェアリング及びペイロード プレス公開資料から引用)(Credit: JAXA)】 <CE-SAT-IE>キヤノン電子が開発した小型光学衛星「CE-SAT-IE」は50×50×80センチメートルの大きさで、質量は約70キログラムです。衛星は高度約675km・軌道傾斜角約98度の軌道に投入されます。衛星に搭載されているカメラは「主光学系」と「副光学系」に分かれています。主光学にはキヤノン電子が自社開発した口径40センチ反射望遠鏡とキヤノンの一眼カメラ「EOS R5」、副光学系にはキヤノンのコンパクトデジタルカメラ「PowerShot S110」が搭載されています。
【▲ キヤノン電子の小型光学衛星「CE-SAT-IE」(Credit: JAXA)】キヤノン電子によると、CE-SAT-IEのミッションは主光学系機器を利用し、地上分解能0.8メートルで地表撮影や天体撮影を行うことと同社の開発した衛星バス技術の実証にあるということです。また衛星にはJAXAが開発したレーザー反射体「Mt.FUJI」が取り付けられています。地上局から反射体へレーザーを照射することで正確な距離を測定し、衛星軌道を決定する実証実験を行います。
<TIRSAT>セーレン株式会社が中心となって開発した超小型衛星「TIRSAT」は12×12×38センチメートルの大きさで、質量は約5キログラムです。衛星は高度約675km・軌道傾斜角約98度の軌道に投入されます。セーレンによると、衛星には熱赤外カメラが搭載されており、軌道上から工場などの熱源を感知し、稼働状況を推定することが可能になるということです。
【▲ セーレン株式会社他が開発した超小型衛星「TIRSAT」(Credit: JAXA)】TIRSATは経済産業省からの委託事業として、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構が開発取りまとめ、株式会社ビジョンセンシングが熱赤外カメラの開発と実証、セーレン株式会社が超小型衛星の開発と実証、株式会社アークエッジ・スペースが地上局の運用をそれぞれ行います。
<衛星の放出機構の特色>2機の小型副衛星は放出機構を介して衛星分離部に取り付けられています。CE-SAT-IEは放出機構「Simple PAF15M」によって放出されます。この放出機構にある「ピンプラー」はJAXAと川崎重工業株式会社の共同開発による部品で、火工品を使用せずに低衝撃で衛星を分離できることが特徴です。
【▲ オービタルエンジニアリングが開発した3Uサイズのポッド(Credit: JAXA)】一方、TIRSATの放出機構はオービタルエンジニアリングにより開発された3Uサイズのポッド(Pod)です。衛星はこのポッドに収められ、前方にあるドアが開くことで放出されます。ポッドは素材に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使用されており、軽量である点が特徴です。また放出時には、こちらも火工品を使用せずバネを使って衛星を押し出すため、低衝撃で衛星分離ができます。
Source
JAXA - H3TF2プレスキット JAXA - ロケット打ち上げ計画書 JAXA - H3ロケット試験機2号機フェアリング及びペイロード プレス公開 JAXA - H3ロケット試験機2号機 フェアリング及びペイロードに関する説明(YouTube)文/出口隼詩 編集/sorae編集部
この記事に関連するニュース
-
宇宙寺院などを搭載したテラスペースの衛星「TATARA-1」カイロス2号機で打ち上げへ
sorae.jp / 2024年11月14日 11時0分
-
カイロスロケットによる50キロ超小型衛星「TATARA-1」打上げと軌道上サービス実証試験を実施
PR TIMES / 2024年11月12日 15時45分
-
欧州の新型ロケット「アリアン6」2号機は2025年2月中旬に打ち上げへ
sorae.jp / 2024年11月12日 11時6分
-
H3ロケット、3機連続打ち上げ成功 防衛通信衛星を搭載
マイナビニュース / 2024年11月5日 19時29分
-
JAXA、H3ロケット4号機打ち上げ成功 Xバンド防衛通信衛星「きらめき3号」を搭載
sorae.jp / 2024年11月4日 19時59分
ランキング
-
1「70歳代おひとりさま」の平均貯蓄額はいくら?
オールアバウト / 2024年11月23日 19時30分
-
2ワークマンさん最高…!「1280円ルームシューズ」で足首までぽっかぽか&気持ち良い〜
女子SPA! / 2024年11月23日 15時45分
-
3冒険をあきらめる“元少年”が続出…36年ぶり『ドラクエ3』にあらわれたモンスター以上の“難敵”
週刊女性PRIME / 2024年11月20日 6時30分
-
4小泉孝太郎がやっている「納豆の最高においしい食べ方」 タレ半分、“あるもの”をたっぷり
Sirabee / 2024年11月22日 16時15分
-
5とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください